【指導参考事項】
1.課題の分類  牛 家畜衛生
2.研究課題名  窒素・カリ質肥料多用牧草利用時における家畜の生理障害に関する試験
3.期   間  昭和52〜54年
4.担   当  滝川畜試・衛生科、飼養科、草地飼料作物科
5.予   算  道 費
6.協力分担  な し

7.目 的
 草地への窒素・力リ質肥料の多用が牧草中の無機成分含有率および家畜の無機物利用、血清無機成分に与える影響について検討する。

8.試験方法
1)放牧地への窒素・カリ質肥料多用が牧草および放牧羊血清中の無機成分におよぼす影響
 (1)舎飼期を慣行法により飼養しためん羊を用いての検討
 (2)舎飼期に乾草の給与量を制限しためん羊を用いての検討
 (3)仔付母羊を用いての検討
2)窒素・カリ質肥料多用牧草利用時のめん羊の無機成分の出納
3)入牧時のめん羊血清中無機成分の変動要因の検討
 (1)乾草から生草給与への切替による採食量および血清成分の変化
 (2)乾草給与量の差異がマグネシウムの出納および血清濃度におよぼす影響
 (3)寒冷感作による血清成分の変化

9.結果の概要
 1)牧草中の無機成分をみると、N多用はT-N含有率を高め、P含有率を低くする。K2O多用はK含有率を高くする。Ca.Mg含有率はNのみの多用では高いが、K2Oも多用すると低くなる。これらの成分は生育季節によっても変化し、春にはT-N、K含有率が高く、Ca.Mg含有率は低い。夏にはCa.Mg含有率は高く推移し、PもNを多用しなければ高く推移する。
 放牧羊の血清中無機成分は尿素態窒素がN多用区で高くなったほかは施肥による変化はみられなかった。しかし、舎飼から放牧へ移行する際、入牧1〜3日後にMg.Ca.IPの低下がみられ、とくに舎飼期に乾草の給与量を制限しためん羊や、行付母羊でそれらの低下は著しく、多くのめん羊に低Mg血症がみられた。
 2)N.K20を多用した草地から収獲した乾草をめん羊に給与し、T-N.P.K.Ca.Mgの出納をみたが、蓄積量に施肥による差はみられなかった。
 3)乾草から生草給与へ切替えると、N.K20を標準施肥した生草ではしだいに採食量が多くなるが、N.K20を多用した生草では一時採食量が少なくなる。しかし、その期間は5日間程度で、その後差はなくなる。血清成分の変化は生草に切替えると、Mgは一時低下するが後に回復する。IPは低くなり、Caはしだいに高くなる。Kは変化しない。各成分とも施肥による差はみられない。
 乾草の給与量を少なくすると、Mgの吸収率、利用率が低くなる傾向がみられ、血清Mgも低くなる。寒冷感作直後、血清Mgは低下し、IP.血糖は高くなる。

10.主要成果の具体的数字


11.今後の問題点
 草種、土壌条件が異った場合や、乳牛、肉用牛についても検討を要する。

12.普及指導上の注意事項
 窒素・カリ肥料多用によってめん羊に生理障害はみられなかったが、実際の施肥にあたっては施肥基準にそって石灰・苦土・りん酸等を施用すべきである。入牧前後の家畜の管理状態によっては入牧時の血清成分が大きく変化し、また、早春には牧草中のCa.Mg含量も少ないので、準備放牧等に心がける必要がある。