【指導参考事項】
放牧を主体としたホルスタイン去勢牛の一貫飼養
(昭和49〜54年)  北農試・草地開発第一部草地1研

目 的
 草地を利用したホル雄による肉生産を行うため、24ヵ令、600㎏を目標とし、夏期は放牧、冬期は屋外飼育で乾草主体とした一貫飼養法を検討すした。

試験方法
1.試験項目
 1)出生月別の一貫飼育法:①12月生まれ ②2月生まれ ③5月生まれ ④導入牛
 2)補完試験:①放牧草地に対する施肥法 ②屋外飼育が春の発育に及ぼす影響
         ③飼養未期のデントコーンサイレージ給与効果 ④発育停滞牛の飼育
2.試養育管理の概要
 1)草地管理:オーチャードグラス優占草地供試、燐酸重点施肥(10a当りN6㎏ P2O5 10〜15㎏と2〜3回施用)、低草丈(15〜20㎝)で放牧、適宣掃除刈り(年回1〜2度)4〜6牧区輪換し、春の余剰牧区では乾草生産し、越冬飼料とした。
 2)放牧管理:放牧期間 5月上旬〜11月下旬、牧区の滞牧は2〜4日、休牧は10〜20日、冬期は乾草を自由採食させ屋外飼育。
3.補完試験
 1)施肥法は窒素2〜8㎏ 10a、燐酸5〜20㎏の用量別に嗜好性調査。
 2)屋内飼育牛群と屋外飼育牛群について放牧効果の比較
 3)飼料末期飼育:2月生まれの牛について、末期の90日間、デントコーンサイレージ(25㎏/日)を供給。
 4)発育の停滞した導入牛と体重別に2分して比較。

試験成果の概要
 1)放牧利用では、栄養価の高い草を十分に採食させるため、燐酸を十分に施用し、かつ低草丈で利用し、嗜好性を高めた。利用草地は使用草地とし、一部は越冬用乾草を生産したが、利用した草地は1頭当り初年目25a、2年目40〜50であった。
 2)供試牛の平均日増体重は、出生月によって若干異なるが、初年目放牧期には、0.85〜0.93㎏、初年目越冬には、0.3〜0.4㎏、2年目放牧期には再び約1.00㎏であった。その結果、12月生まれでは、24ヵ月令で608㎏、2月生まれでは520㎏、5月生まれでは3年目まで放牧し、28ヵ月令で608㎏に達した。また、初期の発育が悪かった導入牛では、520㎏で終わった。しかし、18〜20ヵ月令で2回目の越冬に入る場合は、若干のデントコーンサイレージなどの自給飼料を供給することによって目標体重に達し、産肉性も良好であった。
 3)この飼養法は、①燐酸重点施肥、低草丈利用で嗜好性の高い牧草を採食させ ②牧草単味で、飼料切替による発育停滞を少なくし、 ③屋外越冬で、寒冷寒作などによる放牧ショワクを少なくしたなどによって、放牧期の増体効果を最大限に発揮させたことが特徴である。

主要成果の具体的データ
出生月別 項 目 初年目放牧 1年目越冬 2年目放牧 2年目越冬 3年目放牧 全期間
12



期間(月/日) 5/2〜12/2 12/2〜4/26 4/26〜11/25      
飼育日数(日) 214 145 213     572
開始時体重(㎏) 139 333 392     139
終了時体重(㎏) 333 392 608     608
期間中増体(㎏) 194 59 216     569
平均日増体(㎏) 0.93 0.41 1.01     0.82
2



期間(月/日) 5/11〜11/25 11/25〜4/29 4/29〜10/28 10/28〜1/24    
飼育日数(日) 198 155 182 88   623
開始時体重(㎏) 119 299 322 506   119
終了時体重(㎏) 299 322 506 520   520
期間中増体(㎏) 180 23 184 14   401
平均日増体(㎏) 0.91 0.15 1.01 0.16   0.64
5



期間(月/日) 7/16〜12/3 12/3〜4/27 4/27〜12/6 12/6〜5/9 5/9〜9/25  
飼育日数(日) 140 145 193 154 139 771
開始時体重(㎏) 80 199 253 447 458 80
終了時体重(㎏) 199 253 441 458 608 608
期間中増体(㎏) 119 54 194 11 150 528
平均日増体(㎏) 0.85 0.37 1.00 0.07 1.08 0.68



11



期間(月/日) 6/26〜11/20 11/20〜4/26 4/26〜9/26      
飼育日数(日) 148 157 152     457
開始時体重(㎏) 194 292 385     194
終了時体重(㎏) 292 385 520     520
期間中増体(㎏) 98 93 135     326
平均日増体(㎏) 0.67 0.59 0.88     0.71

普及指導上の注意事項
 1)夏生まれの牛については実証しなかったが、秋までに哺育し、順次乾草に馴致して、冬期は乾いた休息場所(簡易避難舎程度)を準備し、5〜6ヵ月以下の低月令牛の屋外越冬には十分に留意する必要がある。
 2)放牧期間中の増体は、ピロプラズマによる影響がもっとも大きく、とくに夏以降の増体を低減させる。したがって、草地環境を十分に整備し、5〜6月には健康で高増体(0.8㎏以上)を維持するよう管理し、かつ早期発見と治療が必要である。