【指導参考事項】
道央地域における混播草地の秋季造成に関する試験成績
                                                 道立中央農業試験場畜産部

1.試験目的
 草地の秋季造成法を作付体系的に位置づけるために、牧草幼植物が安全に越冬するための播種時期の限界、幼植物の越冬強化法、草種構成におよぼす播種時期の影響、等を検討する。

2.試験方法
試験1 秋季播種による幼植物の越冬性および越冬後生育の草種間差異(その1)(昭和51
年〜52年)
試験2 同上(その2)(昭和53年〜54年)
試験3 イネ科草種・アルファルファ混播草地の秋季造成試験(その1)(昭和52年〜55
年)
試験4 同上(その2)(昭和54年〜55年)
試験5 有珠山噴火に伴う降灰による農作物被害および対策に関する試験調査−降灰草地の
更新対策試験−(昭和52年〜53年)
試験6 イネ科草種・アルファルファ混播草地造成現地試験(その1)−浦河町、静内町、
平取町−(昭和53年〜54年)
試験7 同上(その2)−長沼町、静内町、京極町−(昭和54年〜55年)

3.試験結果の要約
1)越冬立毛割合は草種によって大きな差異がみられ、イネ科草種間ではペレニアルライグラス,チモシー>メドーフェスク>トールフェスク>オーチャードグラスであり、マメ科草種ではアルファルファ、アカクローバ>ラジノクローバ、シロクローバの関係が認められた。
2)混播草地では構成車種間に相互作用が働き、生育が抑制された草種は越冬性が劣る場合もみられた。
3)幼植物の越冬性に関与する気象要因としては、気温と降雪があげられる。土壌条件としては重粘質の灰色低地性土における越冬性がすぐれ、火山性土では劣っていた。火山性土では霜柱によって幼植物が浮上、転倒し、根部が露出するために越冬性が劣る傾向がみられる。
4)越冬性に関与する耕種条件としては、燐酸施用は有効であり、基肥用量として20㎏/10a程度が適量であろう。
 播種量の増量、播種後の覆土も越冬性に有効であった。
イタリアンライグラスの混播は、主体草種に対する保護効果が認められる場合や抑制的に働く場合もあってその効果の発現は複雑であった。
5)春季にイネ科草種・アルファルファ混播草地を造成する時はアルファルファが優勢となり勝ちなのに対して、秋季造成ではチモシーが優勢となり、次第にアルファルファ優勢へと変った。オーチャードグラスは越冬後は弱勢であったが、次第にその軍勢が増大した。
6)道央地域では9月上旬播種によって幼植物の越冬が成功する例が多いが、土壌の凍結しない、積雪地帯では9月下旬ないし10月上旬でも可能性が高いと考えられる。
 土壌が凍結する寡雪地帯であっても、チモシーは9月下旬播種による幼植物の越冬割合が高いので、翌早春にアルファルファの追播によってチモシー・アルファルファ混播草地の確立が可能である。

4.成果の具体的データ
表1 越冬立毛数/㎡(53〜54年)
場所 場内(灰色低地性土) 早来(火山性土)
は種期
/草種区
9月9日 9月19日 9月29日 10月9日 11月8日 9月8日 9月18日 9月28日
オーチャードグラス 52 280 337 2 55 147 43 0
チモシー 62 313 698 135 240 282 259 17
メドーフェスク 86 389 500 51 150 291 35 0
ペレニアルライグラス 101 550 626 615 310 314 84 0
アカクローバ 72 51 6 11 13 277 0 0
アルファルファ 32 68 55 4 2 222 0 0
ラジノクローバ 29 27 2 1 2 409 0 0

表2 乾物草収量(㎏/10a、場内圃場、54〜55年)
は種期 9月19日 10月1日 10月11日 5月1日
番草/
草種区
イネ科 アルファ
ルファ
イネ科 アルファ
ルファ
イネ科 アルファ
ルファ
イネ科 アルファ
ルファ
チモシー区 1番草 283 67 170 112 306 74 65 287
2番草 204 169 134 197 175 102 3 295
3番草 97 122 56 132 151 62 - -
584 358 360 441 632 238 68 582
オーチャード
グラス区
1番草 90 57 12 271 11 215 10 329
2番草 270 74 44 232 53 186 10 304
3番草 289 27 110 52 138 50 - -
649 158 166 555 202 451 20 633

5.奨励態度およぴ普及上の注意事項
 秋季における混播牧草の播種限界は気象および土壌条件によって異なるが、道央地域8月下旬〜9月上旬とすることが望ましい。