【指導参考事項】
1.課題の分類  経営方式  経営計算  畑作
2.研究課題名  便益による農業機械・施設共同利用組織の経営診断
3.期   間  昭和53〜55年
4.担   当  北海道農試・畑作部機械科経営研究室
5.予算区分  経 常
6.協   力  な し

7.目 的
 畑作における農業機械・施設共同利用組織の機能を、便益により経営的に診断する方法を定式化し、組織の合理的な運営に資する。

8.試験研究方法
 対象となる組織の構成農家の経営状態をそれ以前と比較することにより、作付変動に伴う便益・作業経費節減額・作業労働節減評価額を把握し、それらの総和を組織化の便益とみなして診断する。

9.結果の概要
 1)経営診断の方法と手順
(1)便益維持の仕方
 ①作付変動に伴う便益     (d)=(△π+△h×W)×△/×χ
 ②作業経費節減額       (△C)=(γu’χ+γf’−m’)−(γuχ+γf−m)
 ③作業労働時間節減評価額 (△L×W)={(Su’χ+Sf’)−(Suχ+Sf)}×W
 ④組織化の便益        (b)=d+△C+△L×W
  △π:作付拡大のha当り比例利益増額
  △h:作付拡大のha当り投下労働節減時間
  γu:面積割り利用料金
  γf:均等負担額
  Su:面積割り出役時間
  Sf:均等出役時間
  W:労働評価額
  :平均作付面積
  △:作付拡大可能面積
  m:出没手当
  ’:組織化前
     
(2)診断の基準となる指標
 ①すべての農家に便益が発生していること→図では、農家便益の位置がすべてχ軸より上にあること。
 ②農家間で便益享受が平等であること→図では、便益直線が原点を通ること。
(3)診断結果の考察
 ①作付規模別に便益を構成するうちわけが把握でき、構成農家間の矛盾が明らかとなる。
 ②経理方式(機械経費・出没負担方法)が便益に与える影響が明らかとなり、その改善の可能性が検討できる。
 ③組織規模の技術的上限と経済的下限が明らかにされ、規模拡大の方向が意義づけられる。
 ④導入資金に対する補助率が便益の大きさを左右する程度が確認できる。
(4)組織運営の改善策
 診断基準をみたす組織運営のあり方は一定の組織規模の確保を前提に経理方式の改善が中心となる。

 2)診断事例−十勝・芽室町報国・てん菜収穫共同利用組織・B班−
 (1)便益の推計(図参照)
 (2)診断結果
 ①農家6戸の便益の大きさは、それぞれ13万円、13.4万円、18.2万円、20万円。22.6万円、30.2万円となる。
 ②ha当り便益の大きさは、てん菜面積の小さな農家の方が若干大きい。

(3)考察
 ①てん菜面積の小さな農家では作業経費が増加するが、ha当り出役労働の節減評価額が著しく大きい。
 ②経理方式は、集団全体の便益に影響を与えないが、構成農家の便益の相対的な大きさを左右する。
 ③組織規模の範囲は42ha〜68haである。
 ④対象事例では導入資金に対する補助を受けなくても組織のメリットは若干ある。
 (4)改善策
 組織経費の農家均等割りの割合を現行よりも多少多くする。

10.主要成果の具体的数字

11.今後の問題点
 重層的な農業機械・施設別共同利用組織の相互関連性に焦点を当て、営業集団活動の診断を試みる必要がある。

12.普及指導上の注意事項
 組織化の波及効果・構成農家間の心理面の問題は扱っていないので、特に欠かせない場合は場合はそれらの点を加味して診断する必要がある。