【指導参考事項】
1.課題の分類  鶏
2.研究課題名  発酵生成物を利用した鶏糞の処理法
3.期  間  昭和55〜56年
4.担  当  滝川畜試種畜部家きん科
5.予  算  受 託
6.協力分担  な し

7.目 的
 鶏ふんの発酵処理にあたり、発酵基材(オカクズ、モミガラ等)の節減並びに畜舎環境の改善について発酵成生物の効果を検討するとともに、採卵鶏、ひなの発育におよはす影響についても検討する。

8.試験研究方法
 (1)55年:1群50羽4処理(0、3、6、10%添加)200羽を供試し、排泄量、水分発酵基材の添加量について検討した。
 (2)56年:1群70羽3処理(0、3、5%)について前年同様に調査した。さらに現地において、鶏舎内アンモニアを測定した。
 (3)処理間の産卵成績、育すう期に給与した場合の飼料摂取量、体重について併せて調査した。

9.試験結果の概要、要約
 (1)鶏ふんの排泄量は添加割合の増加によって増加したが、3%程度の添加では無処理に比べて差はなかった。
 (2)採卵鶏の糞中水分は、3〜6%添加で2〜3%低下した。
 (3)発酵処理する場合、41年度の報告では鶏糞と発酵基材の混合割合を80:20、もしくは85:15としたが、発酵成生物を添加した場合90:10以下に減少し得ることが示唆された。
 (4)鶏舎内のアンモニアについて、午前7時から8時までの1時間舎内の空気をとって(1L/毎分)測定した結果、無添加区に比べて添加区の発生量が低かった。
 (5)採卵鶏に3〜6%添加した場合卵重、日卵重はやや低くなる傾向を示し(有意差なし)体重の増加率は低かった。
 (6)育すう期に3〜6%添加しても、増体量、要求率えの影響はなく、3%添加区の増体量、要求率はよい傾向を示した。
  以上の結果から鶏ふん処理および鶏舎内環境の保全が必要な場合、飼料に3%程度の添加が効果的で、54年1月提出の鶏ふん処理試験成績を補完できる。

10.主要成果の具体的数字
 (1)鶏糞の排泄量 (1羽平均、比)
延羽数 0% 3% 5% 6% 10%
1羽当 1羽当 1羽当 1羽当 1羽当
55 2400 113.5 100 114.1 101 - - 119.3 105 123.3 109
56 3990 99.3 100 95.9 97 104.6 105 - - - -

 (2)鶏糞中の水分 (%)
期  間 0% 3% 5%
55.4.17〜6.9 76.5 73.4 -
56.4.10〜5.28 73.9 71.7 71.2
56.6.12〜7.31 72.4 69.8 -

 (3)発酵処理
年 月 日 添加量 発酵前
発酵後
回収率
%
水分 PH 発 酵 温 度
5日目 10日目 15日目
55年5月20日 0 25.0 19.8 79 60 8.7 66 35 30
3 25.0 20.1 80 57 8.5 67 37 25
6 25.0 21.0 84 56 8.6 69 27 23
10 22.5 18.3 81 53 8.5 69 36 27
56年5月7日 0 30.0 23.8 79 63 8.8      
3 27.5 92 62 8.4      
5 26.0 87 59 8.0      

 (4)鶏舎内アンモニア (56年1〜3月)  (PPM)
区 分 1月
15

17

23

26
2月
24

26

27
3月
3

4

5

10
試験群         14.8   13.3 24.3 12.9    19.3
対照群         23.6   20.5 39.7 39.5   40.0
場 内 7.4 5.5 6.7 6.5   4.5        8.9  

 (5)気象表 (上段平均気温、下段湿度)
55年 4月 5月 56年 4月 5月 6月 7月
0.3 0.8 5.1 6.3 11.3 15.2 2.5 2.4 8.3 10.7 8.5 9.4 13.3 15.7 16.3 17.8 22.6 21.8
      73 75 72 - - 65 73 78 77 74 86 80 81 85 -

 (6)発酵成生物中の微生物相 (三重大学農学部) 総菌数4.2×109/原物g
グラム陽性桿菌 25.9%  陰性桿菌 35.6%  酵母カピ 2.4%  その他 1.1%
球菌 20.7%  球菌10.9%
球桿菌 2.3%  球桿菌 1.1%

11.指導普及上の注意事項
 発酵成生物を添加しても、撹拌切返し等好気条件の保持は43年度の成績に準ずる。