【指導参考事項】

1.課題の分類　　分類番号　整理番号 2.研究課題名　　てん菜の糖分向上と収量安定化技術確立に関する試験 　　　　　　　　　　　1.狭畦幅による糖収量向上試験 3.期　　間　　昭和55〜57年　完了 4.予算区分　　総合助成 5.担　　当　　中央,十勝,北見農試 6.協力分担関係

7.目　　的
　　狭畦幅栽培がてん菜の根重,根中糖分,糖量におよぼす影響を明らかにする。

9.結果の要約
　(1)栽植密度を変えずに畦幅を60〜66㎝から50㎝に狭くしても,根中糖分向上の効果はわずかであった。土壌肥沃度が高くはなく,かつ排水が良好な場所や収量レベルの低い直播栽培では,根重は3〜4%,糖量は3〜5%増加した。
　(2)直播栽培では畦幅を狭くすることによって,初期生育が旺盛になることが十勝,および北見農試で認められた。これは作条施肥の場合には,単位面積当り施肥量が同じでも,実際に根が接する施肥濃度は畦幅が狭い方が低く,発芽直後の幼植物にとっては肥料濃度が低い方が,その生育にとって好ましいためであると考えられた。
　(3)十勝農試では狭畦幅によってT/R比が明らかに低下した。また中央および北見農試でも狭畦幅による多収とT/R比の低下が結びついている場合が多かった。これは同一栽植密度で畦幅を狭くすると,株間が広くなり,隣接株間の競合が緩和されるためであり,T/R比が低下し,根部の生産効率が高まることが,狭畦幅によって多収が得られる要因の一つであると考えられた。
　(4)狭畦幅による根重,糖量の増加程度は「モノヒル」では小さかった。
　(5)狭畦幅によって根重の個体変異は小さくなった。有害性非糖分の増減については年次により傾向が異なり,狭畦幅の効果ははっきりしなかった。

10.主要成果の具体的数字
第1表　中央農試(移植)

形質	年/ 畦幅(cm)	55	57	平均
根 重 (t/10a)	70	6.23(100)	6.80(100)	6.52(100)
	60	6.32(101)	7.15(105)	6.74(104)
	50	6.32(101)	7.25(107)	6.79(105)
	40	6.15(99)	6.96(102)	6.56(101)
根 中 糖 分 (%)	70	14.23(100)	16.92(100)	15.58(100)
	60	14.84(104)	17.04(101)	15.94(102)
	50	14.77(104)	17.24(102)	16.01(103)
	40	14.96(105)	17.14(101)	16.05(103)
糖 量 (kg/10a)	70	885(100)	1143(100)	1014(100)
	60	937(106)	1215(106)	1076(106)
	50	932(105)	1247(109)	1090(107)
	40	916(104)	1191(104)	1054(104)

第2表　十勝農試(直播,移植の平均)

形質	根重(t/10a)		根中糖分(%)		糖量(㎏/10a)
畦幅(cm) 　　/年	66	50	66	50	66	50
55	5.40	5.82(108)	18.39	18.54(101)	992	1078(109)
56	4.70	4.88(104)	18.25	18.41(101)	856	896(105)
57	5.64	5.74(102)	17.27	17.34(100)	971	991(102)
平均	5.25	5.48(104)	17.97	18.10(101)	940	998(105)

第3表　直播の初期生育(十勝農試)

形質	直播の全乾物重(6月4〜6日)(g/50本)
畦幅(cm) 　　/年	66	50
55	23.0	24.2(105)
56	6.1	6.7(110)
57	21.6	25.0(116)
平均	16.9	18.6(110)

第4表　北見農試(直播)

形質	根重(t/10a)		根中糖分(%)		糖量(kg/10a)		不純物価
畦幅(cm) 　　/年	60	50	60	50	60	50	60	50
55	3.11	3.19(103)	18.10	18.00(99)	562	574(102)	4.28	4.42(103)
56	3.98	4.12(104)	17.66	17.64(100)	703	726(103)	5.48	6.10(111)
57	4.81	4.89(102)	18.05	18.20(101)	868	889(102)	4.32	4.08(94)
平均	3.97	4.07(103)	17.92	17.94(100)	711	730(103)	4.69	4.87(104)