【普及奨励事項】
ダイコン品種「天春」に関する試験

期  間 昭和54〜57年
予算区分 道単
協力分担 なし

1.担  当 中央農試園芸部花きそ菜科
2.目  的 ダイコン品種「天春」の特性について検討する。

3.育成経過 坂田種苗株式会社において、晩抽性、低温肥大性を目標に育成、晩抽性の「時無」と耐病性、低温肥大性で品質のよい「黒葉系春みの早生」との組み合わせを行ない、その後代系統の選抜および組合わせ検定を経る。昭和54年発表。

4.試験方法
実施場所
は種期 栽植密度 収穫期 備考
中央農試 54 426 50×30cm 76(マ),17(露) 4月は種マルチ区


  N.P.K
  各1.5kg/a
55 4.30,5.30 7.3,7.22
56 4.28,6.1 7.7,7.27
57 4.27,6.7 7.8,8.4
広島町 55 512 (667本/a) 79 マルチ使用
56 6.22 50×30cm 8.20
幕別町 54 428612 45×72cm(2条) 626・28,82・4 ホーリーシート使用
56 4.25,5.10 66×24cm 630,713
札幌市 55 411 35×30cm 626 トンネル・マルチ使用
深川市 56 6.1 60×25cm      7.  

5.結果および考察(特性概要)
(1)草姿はやや立性で、「四月早生」より葉長く、葉数も多い。葉色は濃く白味をおび、葉緑には欠刻がみられる。
(2)抽台は「四月早生」よりやや早く、中央農試での4月下旬は種では年によって抽台が問題となるが、マルチ利用によって軽減できる。5月下旬以後では抽台は問題とならない。生育日数では「四月早生」と同等である。
(3)抽根部ではやや青味をおび、青首種に近い。抽出根長は「四月早生」より短く、根形は中央部より先細りとなるが、根長が30cm前後から40cm、根径が6〜8cmで「四月早生」より短く、太めである。側根は太く、多い方である。
(4)平均一根重は年度、場所、作型によって異なるが、600g〜1200gとなり、「四月早生」とほぼ同等である。初夏どりでは夏どりに比べると根重が軽くなるが、マルチ利用によって増加する。
(5)収量は、中央農試の初夏どりで「四月早生」に優り、夏どりでほぼ同等、広島町ではやや少なく、幕別町では優った。
(6)規格外の割合では、「四月早生」に比べ、屑根、岐根が少なく、裂根、病害根が年によって発生した。
(7)す入の程度は「四月早生」とほぼ同等である。
(8)生食味は「四月早生」並であるが、ややカラミがある。

6.主要成果の具体的数字
第1表 生育、収量、す入程度(各平均値)
実施場所
(年度)
品種名 葉長 葉数 抽出
稈長
根長 根径 平均
一根重
kg/a 本/a
上物
株数
す入
総根重 上物収量
中央・初・露
(54〜57)
天春 42.9cm 34.4 10.3cm 29.4cm 7.0cm 718g 460 356 420 41(4)
四月早生 40.2 27.8 14.1 35.0 6.9 670 457 297 379 34(8)
中央・初・マル
(54〜56)
天春 40.7 32.1 15.3 40.1 7.5 1069 665 596 509 53(8)
四月早生 36.1 27.1 17.6 45.2 6.7 1035 678 563 519 48(12)
中央・夏
(55〜56)
天春 38.2 35.5 13.8 33.1 7.5 983 594 513 450 47(18)
四月早生 34.8 31.2 18.3 36.6 6.3 821 539 470 509 54(17)
広島
(55〜56)
天春 45.3 38.5 13.8 35.8 7.0 730 449 397 437 10(2)
四月早生 37.4 31.1 20.2 39.0 5.9 763 484 418 474 12
幕別
(54、56)
天春 40.9 32.1   37.9 7.1 950   543 565  
四月早生 40.8 29.0   39.1 6.2 825   371 499  
札幌
(55)
天春 48.6 29.7   34.1 6.6 995       ナシ
四月早生 43.8 23.2   38.1 6.4 1040       ナシ
深川
(56)
天春 56.5 37.4   32.8 7.3 830       少〜中
四月早生 51.2 35.2   44.7 7.0 1160      
平均 天春 44.7 34.2 13.3 34.7 7.1 896 543 481 476 38(8)
四月早生 4.06 29.2 17.6 39.7 6.5 902 540 424 476 37(9)
※す入の( )は実用上問題となるす入割合

第2表 企画別数割合と食味 (各平均値)
実施場所 品種名 規格外別数割合(%) 上物数
割合
%
食味調査
屑根 裂根 岐根 病害根 抽台根 肉質 からみ あまさ やわらかさ
中央・初・露 天春 27 2 2 1 7(99) 61 43 2.7 3.0 3.7
四月早生 32 0 10 0 13(13) 45 4.3 3.0 3.3 3.3
中央・初・マル 天春 3 3 4 1 8 81 4 2 3 3
四月早生 8 1 10 0 2 79 4 3 3 4
中央・夏 天春 16 4 4 7 0 69 3.6 1.7 3.0 3.0
四月早生 17 0 7 1 0 75 3.8 3.0 3.1 3.4
広島 天春 14 1 3 12 0 70 3 2 3 3
四月早生 13 0 8 5 0 74 3 3 3 4
平均 天春 15 3 3 5 4(25) 70 3.7 2.1 3.0 3.2
四月早生 18 0 9 2 4(3) 67 3.8 3.0 3.1 3.7
※抽台根の( )は、程度軽く抽台根としなかった割合
※食味評点は5(肉質良、あまい、やわらか)〜3(からみナシ、あまさナシ)〜1(悪、からい、かたい)

7.適応地帯
全道一円に適応するが、地帯別の栽培法は道栽培基準による。

8.普及指導上の注意事項
(1)作型は初夏、夏どり栽培とし、5月以前のは種では抽台、収量面からトンネル、マルチ等の資材利用を考慮する。
(2)す入は遅いほうだが、時期的に入りやすいので適期収穫を心がける。