【指導参考事項】
ハウストマトの空洞果発生防止試験
Ⅰ 栽培環境改善に関する試験
トマト 生理障害
北海道道南農試
期 間 昭和53〜57年 予算区分 道単 協力分担 なし
1.担 当 園芸科(作物科) 塩沢 耕二
2.目 的
ハウストマトに多発し商品化率低下を招く空洞果の発生防止対策をたてる。
3.試験方法
(1)試験区 下表の要因を組合せ処理
要因 | 53年 | 54年 | 55年 | 56年 | 57年 |
土壌水分 | 多水分(pF2.0かん水)・中水分(pF2.3かん水) | ||||
苗質 | 若苗(抑制40日、促成50日) 標準苗( 〃 50日、 〃 65日) |
標準苗(育苗後期20㎝角) 不艮苗( 〃 15㎝角) 良苗( 〃 56年は40㎝角57は30㎝角) |
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栽植密度 | 密植(5.4株/㎡)・標準(3.5株/㎡) | 標準(抑制3.0、促成3.5株/㎡) 疎植( 〃 2.3、 〃 2.6 〃) |
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摘心時期 | 標準(定植後30日) 遅 ( 〃 60日) |
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ホルモン濃度 | トマト・トーン濃度 高(50〜100倍)・中(100〜200倍) |
ジベレリン 施用の有無 |
4.結果および考察
(1)土壌水分を多水分、中水分で比較すると、多水分区で空洞果の発生がやや多くなった。
(2)栽植密度を密植、標準、疎植で比較すると、密植区で標準区より空洞果発生が多くなった。しかし、標準区と疎植区では大差はなかった。
(3)苗質を育苗日数により若苗、標準苗で比較すると、若苗区で空洞果の発生が多くなった、また育苗後期の栽植密度を変えた苗で比較すると、抑制栽培(55・56年)では不良苗区(育苗後期密植)が標準苗区および良苗区に比べて、空洞程度の大きい空洞果の発生が多かった。
(4)摘心時期を遅らせると空洞果発生はやや少なくなった。
(5)生育との関係では、空洞果発生率と定植後30日目の茎径との間に正の相関があり、収穫終了時の葉重との間に負の相関があった。
(6)以上のことから空洞果発生防止のためには、育苗中は密植を避け、定植期には第1花が開花を始めた程度の苗を用い、本圃でも密植を避け、350株/a以下とし、土壌水分管理は中位(pF2.3かん水)に保ち、初期生育はやや抑え、かつ葉を生育後期まで十分に保つことが必要と考えられた。
しかし、このような栽培管理を行っても、空洞果は多い年で30%ほど発生しており、栽培環境改善のみによる空洞果発生防止は不十分であった。
5.主要な試験データ
図1 土壌水分と空洞果発生率
図2 栽植密度と空洞果発生率
図3 苗質と空洞か発生率
図4 摘心時期と空洞果発生率
表1 生育・収量と空洞果発生率の相関係数
53 年 |
30日茎径 | 0.6776** | 57 年 |
収 穫 終 了 時 |
地上部重 | -0.492 |
茎葉重 | -0.137 | 葉重 | -0.518* | |||
粗収量 | 0.243 | 茎重 | -0.289 | |||
54 年 |
葉重 | -0.380 | 葉面積 | -0.404 | ||
茎重 | -0.182 | 茎径 | -0.236 | |||
粗収量 | -0.436 | 粗収量 | 0.020 | |||
正常果収量 | -0.853** | 正常果収量 | -0.336 |
6.今後の問題点 体内栄養生理と空洞果発生の関連
7.普友指導上の注意事項
栽培管理改善のみでは、空洞果発生防止は不十分なので、他の防止対策を併用する。