【指導参考事項】
ハウストマトの空洞果発生防止試験
Ⅱ 生育調節剤処理法改善に関する試験

トマト 生理障害
北海道道南農試

期  間  昭和53〜57年  予算区分  道単  協力分担  なし

1.担  当 園芸科(作物科) 塩沢 耕二

2.目  的
 ハウストマトに多発し商品化率低下を招く空洞果の発生防止対策をたてる。

3.試験方法
 試験区別
  ①生育調節剤(トマト・トーン)処理方法
   濃度・処理法・処理回数・処理時刻・処理時の温度
  ②ジベレリンの施用
   施用方法・施用濃度
 (2)栽培法  試験Ⅰに準ずる。生育調節はトマト・トーン

4.結果および考察
 ①トマトトーン処理濃度では、中濃度を(53年200〜100倍、54年50〜100倍)が高濃度区(53年100〜50倍、54年30〜50倍)に比べ空洞果の発生が少なかった。
 ②トマトトーン処理法・処理回数では、スプレー・1花房1回(3〜4花開花時)処理が、浸漬処理、スプレー・2回(2花+次の2花)処理に比べ空洞果の発生が少なかった。
 ③トマトトーンの処理時刻を、夕(午後4時〜)と朝(午前9時〜)を比較したが、空洞果発生に大差がなかった。
 ④トマトトーン処理時に2時間程度の短時間でも高温に会うと、空洞果の発生が多くなった。
 ⑤ジベレリンの施用により空洞果の発生は少なくなった。特に、空洞程度3〜5の商品果とならない果実が減少した。しかし、平均一果重は小さく、粗収量はやや劣る傾向にあった。ジベレリンの施用法では、促成栽培では大差なかったが抑制栽培では複用法(ジベレリン単剤を2〜3花開花時に処理し、その2〜3日後にトマト・トーン単剤を処理)が混用法(トマト・トーンと混合、同時処理)に比べ空洞果の発生は少なかった。
 ⑥ジベレリンの混用濃度では1,5,10,20ppmで比較すると濃度が高いほど空洞果の発生は少なくなった。しかし、それに従って平均一果重、粗収量も少なくなる傾向であった。
 ⑦ジベレリンの空洞果発生防止効果は、生育調節剤の濃度・処理方法・栽培条件・品種によらず安定していた。
 ⑧以上のことから、生育調節剤処理は適正濃度を守り、処理法はスプレーで1花房1回処理とし、処理後の温度は高温(30℃以上)にしないように管理することが空洞果を少なくすると考えられた。また、ジベレリンを施用する場合は、抑制栽培では複用(10ppm)か混用10〜20ppm、促成栽培では混用5〜10ppmが適当と考えられた。このようなジベレリン施用法により空洞程度の大きい果実が10%以下となり、正常果収量はトマト・トーン単用区に比べ20〜30%増加した。

5.主要な試験データ

図1 生育調節剤処理濃度と空洞果発生率


図2 生育調節剤処理法・及び回数と空洞果発生率


図3 生育調節剤処理時刻と空洞果発生率

表1.ジベレリン施用と収量・空洞果発生率
区名 項目/作型 各年次のトマト・トーン単用区を100とした指数
粗収量比 正常果
収量比
商品果
収量比
平均一
果重比
程度別空洞果率比 空洞果
度比
1〜2 3〜5
複用
   10ppm
抑制 86 151 108 87 40 48 28 35
促成 99 115 103 98 36 44 16 23

1ppm 抑制 98 104 95 93 89 88 91 91
5〃 抑制 94 112 94 90 70 66 89 74
促成 100 151 111 100 21 26 0 12
10〃 抑制 84 114 104 91 62 63 59 62
促成 100 127 103 95 29 35 14 27
20〃 抑制 89 149 107 90 47 54 40 48
促成 91 104 90 91 20 30 11 23
トマト・
トーン単用
(実数)
抑制 886kg/a 320kg/a 559kg/a 234g 45.0% 26.2% 18.9% 20.5%
促成 1,239 560 988 241 34.1 23.9 10.3 13.8

6.今後の問題点  ジベレリン施用条件下の多収技術確立

7.普及指導上の注意事項