【指導参考事項】
ハウストマトの空洞果発生防止試験
Ⅲ 振動授粉の効果に関する試験
トマト 生理障害
北溝道道南農試
期 間 昭和53〜57年 予算区分 道単 協力分担 なし
1.担 当 園芸科(作物科) 塩沢 耕二
2.目 的
ハウストマトに多発し商品化率低下を招く空洞集め発生防止対策をたてる。
3.試験方法
(1)試験区別
①振動授粉時期
開花前日・開花当日・開花後1日・同2日・同3日・同4日・同5日にバイブレータによる振動授粉1回処理
②振動授粉方法
毎日(バイブレータによる葯筒振動、以下同じ)、3日毎、5日毎
上段(第3、4)花房のみ振動授粉、送風トマト・トーン処理+振動授粉
(2)栽培法 試験Ⅰに準ずる
4.結果および考察
①56年に、8月17日〜9月22日の期間、第1〜4花房の花粉の、稔実率及び発芽率を調査した。その結果、稔実率は全期間を通じて80%以上あり、発芽率も20〜30%以上あった。したがって花粉の稔実性、発芽性ともに全期間を通して十分あるものと考えられた。
②振動授粉時期の適期を知るために、花のステージで開花前日(-1)から開花5日後(+5)までの7区で比較した。花の生育状態は、-1区は花弁展開始期、0〜+2区は鮮黄色で展開中、+3〜+4区は花弁白変期、+5区では40〜50%が花弁萎凋期であった。着果率は0〜+4区が80%台で、+7区が最も良かった。粗収量では0〜+2区が良く3Kg/株以上あった。切断面上種子数は0区が最も多く、開花後日数が進むほど減少し、また-1区でも少なくなった。切断面上種子数と平均一果重は平行的な関係になり、屑果(90g以下)率は逆の関係にになった。正常果収量は、0,+1,+2区が多かった。以上のことから、振動授粉の適期は、開花当日とそれから3日以内(花弁が鮮黄色に展開中)であると考えられた。
③振動授粉方法を、処理間隔、トマト・トーン処理の有無処理果房などで比較した。振動授粉により、着果率はトマト・トーン単用区より高まったcしかし、粗収量・平均一果重はトマト・トーン単用区に比べ減少した。特に、処理間隔を延ばした振動授粉5日毎区および送風区(花器の振動が不十分な処理しかできなかった)では粗収量は大きく減少した。空洞果の発生は、毎日区・3日毎区でトマト・トーン単用区に比べ極めて少なくなり、正常果収量はトマト・トーン単用区に比べ40〜60%増加した。
しかし、このような振動授粉方法は多大な労力がかかる(約30分/a)ので、空洞果の出やすい上段果房に対して3日毎程度の処理間隔で行うことが適当と考えられたo
5.主要な試験データ
図1 トマト花粉の稔実率・発芽率(56年)
図2 振動授粉方法と空洞果発生率
表1 振動授粉時期と収量・着果率
区名 | 粗収量 | 正常果 収量 |
平均一 果重 |
着果率 |
-1 | 2.2kg/株 | 1.1kg/株 | 163g | 65.8% |
0 | 3.6 | 1.8 | 203 | 81.7 |
+1 | 3.6 | 2.0 | 186 | 78.2 |
+2 | 3.4 | 1.9 | 178 | 88.6 |
+3 | 2.8 | 1.2 | 164 | 85.5 |
+4 | 3.1 | 1.6 | 163 | 77.2 |
+5 | 2.2 | 0.6 | 157 | 57.5 |
図3 振動授粉方法と収量
6.今後の問題点 振動授粉方法の省力法
7.普及指導上の注意事項