【指導参考事項】
1.研究課題名  貯蔵用ダイコンの栽培技術に関する試験
           (1)は種時期ならびに収穫時期に関する試験
2.期  間  昭和54〜56年
3.担  当  中央農試園芸部加工料
4.予算区分  道  単
5.協力分担  な  し

6.目  的
 長期貯蔵に適したダイコンを生産するため、は種ならびに収穫の適期を明らかにする。

7.試験研究方法
(1)処  理
 ①昭和54年:は種時期(7月25日、8月4、14、24日)×収穫時期(10月24、30日、11月6日)
 ②昭和55年:は種時期(8月1、11、22日)×収穫時期(10月23、29日、11月4日)
  ×N施用量(10、20、30Kg/10a、基肥10Kgとし追肥)
(2)貯蔵条件
  1℃に設定した簡易貯蔵庫。PE袋開封包装。
(3)調査項目
  生育、重量減少・萌芽・発根・腐敗・茎葉切口の状態・ス入り・肉質部の褐変・黒変・表皮の着色・黒斑発生の程度、還元糖含量・屈折計示度・PH

8.結果 概要・要約
 (1)根重・根長・根径は、発芽から収穫までの積算撮度によって決まる。積算温度1℃につき根重は1.14〜1.34g増加した(6858本/10a、標準施肥、8月中旬発芽)。
 (2)貯蔵中のス入り・腐敗を防止するためには、は種時期はおそいほうがよい。まず、収穫時期を決め、目標とする規格品を収穫するに必要な積算温度から逆算して、は種時期を決める。目標根重1300〜1500gの場合、道央では8月15〜17日に発芽するようには種すればよい。
 (3)皮目部の黒斑発生は、は種時期が早いほうが少なかった。したがって、黒斑が多発するほ場では、栽培密度は密にし、は種時期を早めるとよい。
 (4)収穫時期は、ス入り・腐敗・黒斑発生を抑制するためには、凍霜害を回避しうる範囲でおそくする必要がある。道央では10月23〜25日以降は凍霜害の危険性がある。
 (5)還元糖含有率は、収穫時期がおそいほど高かった。
 (6)3月中旬でも80%以上はス入り、腐敗のない優良品であった。

9.主要成果の具体的数字
表1 根の肥大と積算温度(昭和55年度:8月18日発芽揃)
調査月日 10.8 10.15 10.22 10.29 回帰式
発芽後日数 51 58 65 72
積算温度x(℃) 815.8 883.4 952.6 997.2
根重Yw(g) 440 700 730 1140 Yw=3.78X-2645
根長YL(cm) 72 32 34 35 YL=0.046X-9.8
根径YD(mm) 51 59 67 72 YD=0.118X-45.6

表2 品質評点と還元糖含有率の変化(昭和54年度)
調査 項目 ス入り 腐敗 還元糖含有率(%)
は種
/収穫
7.25 8.4 8.14 8.24 7.25 8.4 8.14 8.24 7.25 8.4 8.14 8.24
12.20 10.24 3.7 3.9 4.6 4.8 4.9 4.9 5.0 5.0 4.06 4.27 3.66 3.57
10.30 4.4 3.9 4.6 4.7 4.9 4.9 5.0 4.9 4.46 4.09 4.15 4.25
11.6 4.7 4.6 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 4.9 4.49 4.35 4.42 4.53
1.29 10.24 3.5 3.3 4.7 4.4 4.7 4.6 4.9 5.0 3.91 4.26 3.33 3.57
10.30 3.9 4.5 4.7 4.4 4.9 4.9 4.9 5.0 4.21 3.76 3.61 4.08
11.6 4.5 4.5 4.9 5.0 5.0 4.9 5.0 5.0 4.04 4.33 4.O1 4.08
2.28 10.24 3.5 3.2 5.0 4.8 4.7 4.6 4.8 4.7 3.42 3.49 3.19 3.29
10.30 4.0 3.3 4.4 4.6 5.0 4.6 4.5 4.4 3.80 3.62 3.29 3.84
11.6 4.2 4.8 5.0 5.0 5.0 4.9 4.9 4.8 3.91 3.79 4.14 3.85
3.24 10.24 4.2 3.7 4.6 5.0 4.8 4.6 4.3 4.4 3.04 3.22 - -
10.30 4.0 4.2 4.5 4.6 4.5 4.6 4.9 3.2 3.03 3.94 3.27 3.39
11.6 4.6 4.3 4.9 5.0 5.6 4.8 4.5 4.8 3.68 3.86 3.55 3.77
注:評点は無5、着1の5段階

表3 品質評点と還元糖含有率(昭和55年度標準施肥)
調査 項目 ス入り 腐敗 茎葉切口の状態 黒変
は種
/収穫
8.1 8.11 8.22 8.1 8.11 8.22 8.1 8.11 8.22 8.1 8.11 8.22
1.22 10.23 4.4 4.7 5.0 5.0 5.0 4.9 4.7 5.0 4.8 5.0 5.0 5.0
10.29 4.4 4.6 4.9 4.8 5.0 5.0 5.0 4.9 4.9 5.0 5.0 5.0
11.4 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 4.9 5.0
3.18 10.23 4.9 4.9 4.9 4.4 5.0 4.7 4.8 4.3 4.5 3.9 4.6 4.8
10.29 4.4 4.6 5.0 4.9 4.6 4.7 4.8 4.5 4.6 3.2 4.4 4.7
11.4 4.6 5.0 5.0 5.0 4.8 5.0 4.9 4.5 4.6 4.1 4.3 4.8
    皮目部の黒斑 あざ状の斑点 表皮の着色 還元糖含有率(%)
1.22 10.23 3.3 4.7 4.3 - - - 1.3 1.3 1.0 2.73 3.14 2.92
10.29 5.0 5.0 4.3 - - - 1.3 2.0 2.3 3.14 3.16 3.36
11.4 4.7 4.7 5.0 - - - 1.0 2.0 2.0 3.03 3.11 3.24
3.18 10.23 3.1 2.8 2.6 3.4 3.5 4.5 1.3 1.2 1.3 2.69 2.98 2.89
10.29 3.4 2.8 2.7 3.1 3.5 5.0 1.5 2.1 3.2 2.89 3.05 3.17
11.4 3.2 2.9 2.6 4.1 4.1 4.9 1.7 1.9 2.6 3.08 3.32 3.27

10.今後の問題点

11.成果の取扱い(普及指導上の注意事項)
(1)発芽が不揃いになると、規格が揃わず貯蔵性に差違が生じるので、砕土・覆土に注意し土壌水分を適正に保つ。
(2)凍霜害を受けないように注意する。凍結した場合には、ほ場で自然解凍させて収穫する。
(3)貯蔵用品種としては「耐病総太り」が最適である。
(4)貯蔵にあたっては選別を徹底し不良品を取除く。