【指導参考事項】
林産廃棄物(バーク)の堆肥化指標と畑地への施用法
Ⅰ パーク堆肥の品質と、畑作物の生育との関係(昭和54〜57年)

道立北見農試・土壌肥料科
道立十勝農試・土壌肥料科
道立中央農試化学部土壌改良第二科

目  的
 農業生産における安全かつ有効なパーク堆肥の品質を検討し、良質パーク堆肥生産の指針を得ようとする。

試験方法
1.樹皮別パーク堆肥の分解特性と品質    化学性の分折、幼積物法による発芽、初期
   生育調査、ポット試験による乾物生産、N供
   給量など検討
2.針葉樹パーク堆肥の腐熟方法と品質
3.現地生産パーク堆肥の生産実態と品質
 (北見、十勝、中央農試分担)
4.腐熟度に関する検討

試験結果の概要
1.樹皮別パーク堆肥の分解特性
(1)広葉樹皮は針葉樹皮に比べC/N比、可溶性炭水化物、セルローズ含量の差異は小さいが、分解速度が速く、N添加によるCO2放出は顕著に高まった。鶏糞尿素を添加して堆積した場合の分解速度は広葉樹皮≫針葉樹皮>カラ松樹皮の順であった。
(2)各樹皮とも堆積分解によって発芽率への影響はなかったが、広葉樹は未熟段階でNの有機化が多く、作物生育を悪化した。針葉樹皮のN有機化量は小さかった。しかし両パーク堆肥とも1年間堆積によって、N吸収量の低下はほとんど認められなくなった。
2.針葉樹パーク堆肥の腐熟方法と品質
(1)添加N源に尿素単用した場合、高温醗酵が認められず、C/N比の低下が悪かった。
(2)鶏糞+尿素(N5+5㎏/t)は高温→中温醗酵が長く、1年間でC/N30の製品が得られた。全量鶏糞(N10㎏/t)はさらに分解を促進した。鶏糞(N5kg)+尿素増量(N5→11㎏/t)によってC/N比を低下させて堆積したものは鶏糞+尿素(N5+5kg/t)と対比して、あまり分解の促進は認められなかった。
(3)ポット試験による乾物生産では、全量尿素、鶏糞半量+尿素(N2.5+7.5㎏/t)は鶏糞+尿素(N5+5kg/t)より劣った。
(4)培養実験によるCa2放出量では、N10㎏/tが最も多く、また鶏糞の添加割合の高いものほど多かった。
(5)以上のことから、パーク原料1t当N10㎏(C/N40)を、家畜糞尿あるいは化学肥料(1/2以内)で添加することが望ましいと考えられた。
3.現地生産パーク堆肥の生産実態と品質
(1)各地区とも広葉樹皮を主体として生産している例が多く、添加N源は多岐にわたっている。
(2)パーク堆肥の化学的性質は変異が大きく、現在ある基準(日本パーク堆肥協会等)に照合して、その最低基準に達しないものも多い。
(3)ポット試験による作物生産への影響をみると、無施用のものより劣る場合が多いが、広葉樹パーク堆肥ではC/N比30以下では施用効果がみられた。
4.腐熟度に関する検討
(1)発芽、根の障害度を、水溶性フェノール(W-ph)、ECでみると、Wphは2mM EC3m、mho以下では影響が小さく、W-ph 5mM、EC10m、mho以上では顕著な障害がみられた。またW-phはpH7.8以上で顕著に高濃度となった。
(2)N有機化はC/N1と正の相関があり、とくに広葉樹パーク堆肥は有意であった。さらに活性なC形態である可溶性炭水化物とは関係が深い。広葉樹はC/N25以上、針葉樹は35以上で添加Nの有機化が進むことが認められた。
(3)腐熟度の簡易判定法の確立は困難であったが、製品のEC、pH測定をすることが必要と考えられた。

主要成果の具体的数字
①樹種別バーク堆肥の経時的化学性の変化
項目
/期間
粗灰分% 有機物中% 1:5水抽出(乾物換算) N有機化
(mg/C・g)
T-C C/N 炭水化物 リグニン ECm・mho水溶性フェノール
原料 2.9 7.3 53.2 53.1 172 133 50.7 47.7 32.4 30.1 0.5 0.5 0.8 3.1 3.5 11.1
30日 5.9 15.0 52.0 51.1 41.8 34.2 48.0 41.0 33.8 33.1 5.3 8.9 7.3 8.6 0.2 5.9
70日 6.8 16.2 51.3 51.7 43.1 35.5 48.8 40.9 33.7 36.4 2.4 2.3 6.6 2.2 0.7 6.2
140日 14.7 20.3 53.3 50.2 38.2 22.3 43.6 32.5 38.8 44.0 1.5 1.8 0.6 0.2 -0.5 0.4
350日 21.6 29.4 51.5 53.1 30.8 18.9 39.3 24.6 42.1 50.6 1.7 2.0 - - -0.8 -0.4
420日 25.1 35.0 52.1 53.9 30.5 17.1 36.0 18.5 44.2 51.4 - - - - - -
500日 32.3 35.1 51.9 52.3 25.3 16 29.3 16.8 46.1 52.9 - - - - - -
3年 44.3 - 51.7 - 20.7 - 27.5 - 53.0 - - - - - - -
炭水化物:可溶性炭水化物+セルローズ 水溶性フェノール:mM

②針葉樹パーク堆聖の堆積条件と化学性

堆積
C/N
添加物 Nkg/t C/N T-N 発芽歩合(%) 乾物重比
(ム施用100)
鶏糞 尿素 150日 1年 2年 150日 1年 2年 50日 150日 150日 2年
54 40 鶏糞+尿素 5 5 - 40.3 - - 1.15 - 80     100
40 全量鶏糞 10 0 - 31.3 - - 1.28 - 81     111
40 全量尿素 0 10 - 50.1 - - 0.95 - 88 (ム施用85)   87
55 40 鶏糞+尿素 5 5 29.9 - 20.4 1.15 - 1.13 (ム施用68) 93 101  
40 鶏糞半量 2.5 7.5 45.9 - 30.4 0.79 - 0.95   87 87  
27 尿素増量 5 11 29.9 - 21.7 1.06 - 1.22   85 101  

③ 現地生産パーク堆紅の品質(十勝農試)
  平均
n=65
CV
%
  平均
n=65
CV
%
粗灰分(%) 40.96 39.7 CaO(%) 3.34 40.5
pH(H2O) 7.30 6.3 MgO(%) 0.61 37.4
EC(m.mho) 1.714 65.0 K2O(%) 0.95 37.2
T-N(%) 0.98 28.5 トルオーグP2O5(mg) 520 50.9
T-C(%) 31.41 24.0 P抽出
-
Nmg
/100g
有キーN 31.6 47.5
C/N 33.2 28.6 無キーN 39.6 76.6
CEC(me) 66.2 22.5 71.2 49.2

④広葉樹パーク堆肥のC/N比と作物生育(中央農試)
サンプル
(C/N)
/処理
1
(22.8)
2
(23.3)
3
(23.4)
4
(32.9)
5
(34.9)
6
(36.1)
7
(44.4)
無施用
バーグ
堆肥
2%
-N 121 125 112 77 61 80 35 100(3.13g)
+N 171 171 145 122 139 128 130 100(5.32g)
バーグ
堆肥
4%
-N 141 131 125 58 22 38 19 -
+N 182 182 141 130 120 117 124 -

⑤C/N比とNの有機化量

⑥EC、水溶性フェノール濃度と発芽、根の障害

指導上の留意事項
 1.分解促進のN源として、パーク原料1t当N10㎏を、家畜ふん尿で添加することが望ましいが、N1/2以内を化学肥料で置替えてもよい(C/N40程度)。
 2.切返し(年間3回程度)を行い、1年以上の堆積、腐熟を行うこと。
 3.製品については新鮮物を用いてECおよびpH(乾物1:水5)の測定を行い、EC10m、mho、pH7.5以上では腐熟期間を長くすることが安全である。
 4.なお、安全性を高めるため幼植物テストを実施すること。
 5.原料の粒径は細かいものが望ましい。