【指導参考事項】
1.課題の分類  E-II-7 農業施設 畜産
2.研究課題名  ベクトル放射温度計の開発
3.期 間  昭和57年
4.担 当  北農試・機械3研
5.予算区分  経 常
6.協力・分担  なし

7.研究目的
 畜舎内の家畜の体感温度に影響をもつ放射熱を定量的かつかつ簡易に測定し、畜舎内の熱的な環境の評価と、畜舎の環境改善の指標とするための方法について検討する。

8.試験研究方法
 畜舎内の放射熱の強度と方向を簡易に測定するために開発した、ペクトル放射温度計(図1)について、各面への放射受熱量を計算に用いる式中の対流熱伝達の項の熱伝達係数を風洞(図2)により実測し、風速と熱伝達係数の関係を求めた。

9.結果の概要
(1)ベクトル放射温度計の各面への放射受熱量(Qx)と放射温度(Trx)は次式により求められる。
   Qx=ε・σ・(273+Tx)4-h(Tx=Ta)………①
   Trx=(Qx/εσ)−273……………②
 σ:ステフアンボルツマン定数(4 88×10-8kcaI/k4・㎡・h)
 ε:放射温度計受熱面の放射率(ε=1)
 tx:放射温度計受熱面の温度(℃)
 Ta:気温)(℃)
 h:熱伝達係数(kcaI/・㎡・h・℃)

(2)風洞による熱伝達係数の測定の結果、図−3のような風速と熱伝達係数の関係が得られた。その結果、各面熱伝達係数はほぼ近似した値となり、また、風速0.3m/sを境界に熱伝達の状態が自然対流から強制対流に変化することが明らかとなった。熱伝達係数(h)は③、④式となった。
   h=8.8 (Uく0.3m/s)………③
   h=15.23U 0.643 (U≧0.3m/s)………④
 冬期の畜舎では、舎内風速が0.3m/s以下となることが多くh=8.3一定として①、②式を用いて、放射受熱量と放射温度を求めることができる。

10.主要成果の具体的データ
 測定部の温度と気温、周囲の風速を測定することにより各方向からの放射受熱量を計算する。

図1 ベクトル放射温度計


図2 風胴装置 (寒地農業施設実験室内に設置)


図3 ベクトル放射温度計の熱伝達係数と風速の関係

11.今後の問題点

12次年度の計画