【指導参考事項】
1.課題の分類  E-II-8 農業施設 畜産
2.研究課題名  自然換気牛舎の換気量の推定方法
3.期間  昭和56年〜59年度
4.担当  北農試・機械3研
5.予算区分  別枠・経常
6.協力・分担  北大環境科学研究科

7.研究目的
 牛舎内を生産に好適な空気環境に維持するために必要不可欠な換気について、その量を定量的に把握することが困難である自然換気牛舎における簡便な換気量の推定方法について検討した。

8.試験研究方法
 換気量の測定が比較的正確に実施できる強制換気牛舎において、水分収支を基にした換気量の推定方法について、換気量の実測値と推定値の比較をおこなった。本推定方法は、牛舎内外の温度と湿度を実測し、その測定値から求めた、舎内外の空気の状態量(絶対湿度、比容積)と牛の水蒸気発生量(文献よりの値)から求める方法であり、乾湿計と数表(または図)と電卓により換気量が推定できる。そのため高価な風速計や複雑な測定作業を行なわなくても良いという利点がある。

9.結果の概要
 換気量の計算は、牛舎内外の空気中の水分状態が平衡しているという仮定にたった、水分収支法による。牛舎内外の水分が平衡しているとすれば1)式が得られる。
      Qi・Xi/Vi-Q0・X0/V0=Wg………1)
 Qi:舎内から出てゆく空気量(m3/h)   Q0:舎外からは入ってくる空気量(m3/H)
 Xi:舎内の絶対湿度(kg/kg)       X0:舎外の絶対湿度(kg/kg)
 Vi:舎内の比容積(m3/kg)        V0:舎外の比容積(m3/kg)
 Wg:舎内の水蒸気発生量(㎏/h)

1Qi=Q0として換気量Qであろうとする方法
     Q=Wg/(Xi/Vi−X0/V0) ………2)
2空気の交換量から換気量をQiとQ0の平均値として求める方法
   Q=Wg/(Xi-X0)………3)      :ViとV0の平均値の二種類がある。両者で求めた換気量はほぼ近似した値となる。図1.図2に2)、3)式で求めた換気量と実測値の比較した例を示す。牛の水蒸気の発生量は図3より求めた値と牛舎内の牛の総体重から求めた。絶対湿度と比較積は、湿り空気線図(図4)から求められる。
 この方法により舎内外の乾湿球温度と牛の体重を入力すると換気量が求められるプログラムがあるのでポケットコンピュータと乾湿計があれば、現場での換気量の推定が可能であろう。

10.主要成果の具体的データ

図1 2)式による換気量推定値と実測値の比較


図2 3)式による換気量推定値と実測値の比較


図3 牛の水蒸気発生率


図4 湿り空気線図の例

11.今後の問題点
 敷科やふん尿処理の違いによる水蒸気発生量の検討

12.次年度の計画