【普及奨励事項】
1.課題の分類  乳牛 管理
2.研究課題名
  カーフハッチによる乳用子牛の育成技術
  (補遺) アンケート調査によるカーフハッチの利用状況
3.期  間  昭和57年
4.担  当  新得畜試 種畜部乳牛科
5.予算区分  道  単
6.協力分担

7.目  的
 カーフハッチは道内各地に普及しつつあるが,誤った使われ方の場合カーフハッチの特性が生かされないばかりか,むしろ,子牛に対して悪影響が懸念される。そこで,現在のカーフハッチ利用状況を把握して,今後の指導・普及上の参考に資する。

8.試験方法
 道内60地区の農業改良普及所を対象として,昭和57年4月にアンケート用紙を配布し同年9月に回収した。回答があった31地区のうち,カーフハッチを利用している21地区,36市町付の990戸について利用状況をまとめた。

9.主要成果の概要
1)カーフハッチの導入年次と導入の理由及び動機(麦1,表2)
 (1)カーフハッチは昭和52年から導入されているが,現時点では十勝,網走,根室,後志で比較的多く利用している。
 (2)乳用雄子牛の集団哺育に大規模に利用されている事例は,釧路,後志,網走,上川に多い。
 (3)カーフハッチは,子牛の疾病発生の軽減と損耗防止を主な導入理由とし,その動機は「指導機関の奨め」「講演や雑誌または実例に接して」とするものが多い。
2)カーフハッチで育成された頭数(表3)
 (1)雌子牛専用の事例33戸では667頭(1戸平均20頭)が育成された。
 (2)雄子牛専用の事例33戸では9,052頭(1戸平均271頭)が育成された。
 (3)雌・雄共用の事例19戸では440頭(1戸平均23頭)が育成された。
3)カーフハッチの評価(表4)
 (1)風邪・下痢の発生防止に対しての評価が高い。
 (2)雄子牛専用の事例では発育に対する評価も高い。
4)カーフハッチの設置方向と,その決定要因
 (1)出人口を南向に設置している事例が多く,季節によって方向を変えている事例は極めて少ない
 (2)カーフハッチの設置方向を定める場合,風向と日射が主に配慮されてい㍍
5)カーフハッチのサイズ及び構造
 (1)180cm×90㎝のベニヤ合板を,そのままのサイズで組み立てたカーフハッチが多い。
 (2)出人口が閉鎖型でスノコのないカーフハッチが多い。
6)子牛のカーフハッチ収容期間
 (1)雄子牛専用の事例を除き,子牛は生後1日以内にカーフハッチに入れられている事例が多い。
 (2)子牛がカーフハッチから出る時期は,雌子牛では2〜3ヵ月令,雄子牛では1〜1.5ヵ月令が多い。
7)子牛の離乳時期(表5)
 (1)子牛はカーフハッチ滞在中にほとんどが離乳されているが,カーフハッチ以後も3%が哺乳されている。
 (2)カーフハッチ滞在中の離乳時期は50日令以内が多いが,カーフハッチ終了と同時期の離乳も41%占る。
8)カーフハッチ使用上の問題点と改善策
 (1)サイスが小さ過ぎたとする事例が多く,奥行240cm,巾120cm,高さ120cm以上が望ましいとしている。
 (2)夏季及び雨季に地盤や床の汚染が著るしくなるので,地盤の整備,スノコの利用が必要としている。
 (3)冬季は除雪及び哺乳などの日常管理作業に従来より労力を要するとしている。

10.主要成果の具体的数字
表1.カーフハッチの導入年次別事例数
年次 昭52 昭53 昭54 昭55 昭56 昭57
事例数(戸) 1
(1)
1 6 19
(8)
33
(8)
30
(16)
90
(33)

表2.カーフハッチの支庁別事例数
支庁 石狩 空知 上川 後志 渡島 胆振 十勝 釧路 根室 網走
事例数(戸) 6 3 9
(5)
8
(7)
3
(2)
1 25 8
(8)
12
(4)
15
(7)
90
(33)
注:( )は,うち雄子牛専用事例

表3.現在までカーフハッチで育成した頭数(昭和57年9月現在)
雌子牛に専用 雄子牛に専用
戸数 頭数 戸数 頭数
33 100
(14)
246
(37)
187
(28)
134
(20)
667
(100)
33 1,796
(20)
3,490
(39)
2,256
(25)
1,510
(17)
9,052
(100)

雌子牛・雄子牛に共用
戸数 合計
19 67
(31)
69
(31)
136
(31)
71
(32)
70
(32)
141
(32)
45
(21)
57
(25)
102
(23)
34
(16)
27
(12)
61
(14)
214
(100)
226
(100)
440
(100)
注)( )は,各々の計に対する割合

表4.カーフハッチ導入による効果
区分 下痢(%) 風邪(%) 発育(%) 管理性(%)
× × × ×
冬生れ
(12月〜2月)
A 78 14 8 86 11 3 63 31 6 30 40 30
B 81 13 6 88 6 6 71 12 17 29 12 59
79 13 8 86 10 4 65 25 10 30 30 40
春生れ
(3月〜5月)
A 83 13 4 85 13 2 73 25 2 33 43 24
B 88 9 3 97 3 0 74 16 10 31 31 38
84 12 4 89 10 1 73 22 5 32 38 30
夏生れ
(6月〜8月)
A 85 11 4 71 27 2 61 39 0 45 32 23
B 93 7 0 93 7 0 76 17 7 37 37 26
88 9 3 80 19 1 67 30 3 42 34 24
秋生れ
(9月〜11月)
A 90 7 3 90 10 0 54 43 3 29 42 29
B 92 8 0 84 8 8 77 0 23 57 14 29
91 7 2 89 9 2 61 30 9 38 33 29
注:1)Aは,雌子牛専用及び雄子牛も共用の事例
   Bは,雄子牛専用の事例
  2)○は,従来の舎内育成に比べて「よい」。
   △は,従来の舎内育成に比べて「変らない」。
   ×は,従来の舎内育成に比べて「わるい」。

表5.子牛の離乳日令
離乳日令 カーフハッチから
出す日令と同日令
カーフハッチから出
す日令より早い日令
カーフハッチから出
す日令より遅い日令
戸数 (%) 戸数 (%) 戸数 (%) 戸数 (%)
30日令以内 3 (14) 18 (86)     21 (100)
31〜50日令 8 (38) 12 (57) 1 (5) 21 (100)
51〜70 〃 9 (43) 11 (52) 1 (5) 21 (100)
71〜90 〃 14 (93)     1 (7) 15 (100)
91〜120〃 1 (14) 6 (86)     7 (100)
121〜150〃     1 (100)     1 (100)
35 (41) 48 (56) 3 (3) 86 (100)

11.今後の問題点
 1)冬季における管理性の向上
 2)夏季及び雨季の環境改善対策
 3)カーフハッチ以後の育成施設

12.成果の取扱い(普及指導上の注意事項)
  カーフハッチの使用上の留意点及び基本構造は,「昭和57年度,普及奨励並びに指導参考事項」に示すとおりであるが,本調査の結果から,今後の普及指導にあたって,特に留意すべき点を示す。
 1)カーフハッチの排水の良い場所を選び,季節の気象条件を生かした方向に設置する。
 2)床には木製スノコの敷設が望ましい。
 3)子牛は出生後,被毛が乾き次第カーフハッチに入れ,2〜3ヵ月令滞在させる。
 4)離乳は生後49日(6週令)を目安とするが,人工乳を1日1.5kg以上摂取するようになった時点で離乳する。
 5)カーフハッチの出入口は開放式とし,特に,空気の交流を妨げるような遮へい板はとりつけない。
 6)カーフハッチのサイズは,奥行240㎝,巾120cm,高さ120cm以上を基本とし,外囲いは移動組み立て式とする。
 7)飼料給与など日常作業を,カーフハッチの外から行える構造とする。