【指導参考事項】

1.課題の分類　　D-14　とうもろこし 2.研究課題名 　　とうもろこしサイレージの切断長並びに各種飼料との組合せ給与に関する試験 3.期　　間　　(昭52〜56年) 4.担　　当　　新得畜試　研究部　飼養科 5.予算区分　　道　　単 6.協力分担　　新得畜試　研究部　草地飼料作物科

7.目　　的
　　とうもろこしサイレージの切断長が,品質,消化率,反芻行動,乳量・乳組成などに及ぼす影響並びにとうもろこしサイレージと各種飼料の併給が,消化率と栄養価に及ぼす影響について究明し,畑地型乳牛飼養技術の確立に資する。

8.試験研究方法
　1.とうもろこしサイレージの切断長に関する試験
　　-1.切断長がサイレージの品質と回収率に及ぼす影響
　　-2.切断長が開封後のサイレージの温度に及ぼす影響
　　-3.切断長と子実の破砕程度がサイレージの消化率と栄養価に及ぼす影響
　　-4.切断長が乳牛の反芻行動に及ぼす影響
　　-5.切断長が乳牛の分娩前後の飼養成績に及ぼす影響
　2.とうもろこしサイレージと各種飼料の併給効果査定に関する試験
　　-1.乾草,濃厚飼料の併給が消化率と栄養価に及ぼす影響
　　-2.高蛋白濃厚飼料の併給が消化率と栄養価に及ぼす影響
　　-3.刈取時期別・窒素施肥量別牧草サイレージの併給が消化率と栄養価に及ぼす影響
　　-4.草種別牧草サイレージの併給が消化率と栄養価に及ぼす影響
　　-5.併給した高・低水分牧草サイレージと乾草の消化率と栄養価

9.主要成果の概要
　1.とうもろこしサイレージの切断長に関する試験(表1,2,3)
　　切断長5mmのサイレージは10mmに比較して,品質,回収率,消化率,栄養価,分娩前後の飼養成績において同程度であり,乳牛の反芻行動は低下した。また,切断長25mmのサイレージは10㎜に比較して,品質,採食率,乾物摂取量,DCP含量がやや低く,TDN含量は同程度であり,乳牛の反芻行動も高まらなかった。子実の破砕程度を良好にすると未消化子実の排泄量が減少する傾向があった。
　　以上の結果,及び通年給与における二次発酵防止の見地から,黄熟期あるいはそれ以前の収穫では切断長を10mm程度,枯熟期あるいは強霜を被った原料では切断長を5㎜程度とし,子実の破砕程度を良好とし均一に切断することが望ましいと考えられた。
　2.とうもろこしサイレージと各種飼料の併給効果査定に関する試験(表4,5,6,7)
　　とうもろこしサイレージと乾草,刈取時期別・窒素施肥量別・草種別調製牧草サイレージ,及び濃厚飼料の併給による消化率や栄養価の低下はほとんど認められず,むしろ単用給与時から算出した期待値に比較して同程度ないしは高まる傾向があり,これらを高める要因のひとつは給与全飼料の粗蛋白質含量の向上であることが示唆された。

10.主要成果の具体的数字
　1.とうもろこしサイレージの切断長に関する試験
表1.切断長別サイレージの消化率と栄養価(牛)

試験	切断長	乾物	有機物	粗蛋白質	粗脂肪	NFE	粗せんい	DCP	TDN
Ⅱ	(mm)	(消化率%)						(乾物中%)
	5-良1)	66.9	69.2	55.4	82.6	74.3	54.8a	4.8ab	70.0
	10-良	66.6	68.8	56.4	81.7	73.2	57.9b	5.0a	69.5
	10-不良	66.0	68.5	53.6	81.9	72.1	60.8c	4.4b	68.8
Ⅲ	5	64.2		58.6	78.3	68.6	61.3	5.7	66.2
	10	67.0		62.0	80.2	71.4	64.2	6.0	68.8
	25	66.8		56.5	80.9	71.4	67.1	5.4	68.9

1)子実の破砕程度を示す。
異文字間に有意差あり(p＜0.05)

表2.切断長と反芻行動(牛)

試験	切断長	反すう 時間	反すう食塊 吐出回数	反すう 期数	反すう期当り 反すう時間	同　　　左 食塊吐出回数	乾物 摂取量
Ⅰ	(mm)	(分)			(分)		(kg/日)
	5	459a	427a	14	32.1	29.9	7.63
	10	509ab	488ab	16	32.2	30.9	7.34
	15	576b	546b	18	32.4	30.7	7.63
Ⅱ	5	438A	411A	14	32.4	29.4	6.80
	10	560B	522B	14	41.0	37.3	7.30
	25	514AB	549B	16	32.8	34.3	6.60

異文字間に有意差あり(大文字P＜0.01,小文字P＜0.05)

表3.とうもろこしサイレージ・乾草の切断長と乳牛の分娩前後の飼養成績

切断長		分娩前				分娩後
		乾物摂取量				乾物摂取量				乳量		乳組成
とうもろこし サイレージ	乾草	乾草	とうもろこし サイレージ	濃厚 飼料	計	乾草	ともろこし サイレージ	濃厚 飼料	計	実量	FCM 量	脂肪 率	SNF
(mm)		(kg/日)				(kg/日)				(kg/日)		(%)
5	13または 無細切	3.3	7.5a	0.3	11.1	2.6	9.6	6.5	18.7	33.4	33.9	4.11	8.99
10		3.5	7.0b	0.3	10.8	2.8	8.9	6.4	18.1	32.1	32.3	4.05	8.94
5または 10	13	3.3	7.2	0.3	10.8	2.8	8.9	6.5	18.2	32.1	33.5	4.27a	8.99
	無細切	3.4	7.4	0.3	11.1	2.6	9.6	6.4	18.6	33.4	32.7	3.88b	8.96

異文字間に有意差あり(P＜0.05)

2.とうもろこしサイレージと各種飼料の併給効果査定に関する試験
表4.乾草の併給と給与全飼料の消化率,栄養価

採食比率		乾物	有機物	粗蛋白質	粗脂肪	NFE	粗せんい	DCP	TDN
とうもろこし サイレージ:乾草		(消化率%)						(乾物中%)
68　:　32	期待値	67.4	69.3	53.5	75.4	74.4	60.9	4.8	68.7
	実測値	69.8	71.5	56.6	73.8	76.4	64.1	5.1	70.8
34　:　66	期待値	63.9	65.5	55.8	65.7	68.2a	63.6	5.2	63.2
	実測値	66.5	68.0	59.7	63.6	71.2b	65.2	5.6	65.4

異文字間に有意差あり(P＜0.05)

表5.併給粗飼料の違いと濃厚飼料の消化率・栄養価

採食比率	乾物	有機物	粗蛋白質	粗脂肪	NFE	粗せんい	DCP	TDN
とうもろこし サイレージ:乾草:配合	(消化率%)						(乾物中%)
61　:　0　:　39	84.9	87.3	80.5	83.0	90.3	89.4	14.9	83.2
41　:　20　:　39	82.3	84.6	80.0	80.0	88.7	61.7	14.8	80.2
21　:　39　:　40	81.2	83.9	79.4	85.1	87.1	66.4	14.7	79.7
0　:　60　:　40	76.8	79.1	77.3	85.7	84.1	32.6	14.3	75.4

表6.高蛋白濃厚飼料の併給と給与全飼料の消化率,栄養価(実測値-期待値)

採食比率2)	粗蛋白質	乾物	有機物	粗蛋白質	粗脂肪	NFE	粗せんい	DCP	TDN
CS:SBM	(乾物中%)	(消化率%)						(乾物中%)
100　:　0	8.6	0a	0a	0	0	0	0a	0a	0a
90　:　10	12.9	2.5b	2.0ab	4.0	-2.1	0	7.6b	0.6ab	1.7ab
80　:　20	17.3	4.5bc	4.5b	1.7	-1.5	4.3	10.3b	0.3ab	4.5b
70　:　30	21.6	5.0c	4.5b	4.0	-4.8	3.0	14.1b	0.9b	4.3b

1)異文字間に有意差あり(P＜0.05)
2)CS:とうもろこしサイレージ,SBM:大豆粕

表7.併給した高・低水分牧草サイレージと乾草の消化率,栄養価

	粗蛋白質	粗脂肪	NFE	粗せんい	DCP	TDN
	(消化率%)				(乾物中%)
1番草高水分サイレージ	65.8a	74.0a	66.2	83.5	7.8a	72.6a
1番草低水分サイレージ	63.7ab	72.8a	70.3	80.2	7.3b	71.5a
2番草低水分サイレージ	61.4bc	70.1a	62.8	76.6	7.6ab	65.5b
2番草乾草	57.6c	56.9b	66.7	76.9	6.5c	64.7b

異文字間に有意差あり(P＜0.05)

11.今後の問題点
　1)ハーベスタの切断性能,各種機械処理がとうもろこしサイレージの形状,消化率,反芻行動に及ぼす影響の究明。
　2)微細切サイレージ主体飼養時における併給粗飼料と濃厚飼料の形状と給与割合の設定。
　3)とうもろこしサイレージに併給する濃厚飼料の種類,給与量が全飼料の消化率に及ぼす影響の究明。
　4)とうもろこしサイレージの切断長及び子実の破砕程度の測定方法の統一。

12.成果の取扱い(指導上の注意事項)
　1)ハーベスターの管理を適正におこない,均一な切断長がえられるように配慮すること。
　2)微細切したとうもろこしサイレージ給与時には乳牛の反芻行動を活発にさせる粗飼料を併給し採食させる必要がある。