【指導参考事項】
1.課題の分類  飼料用根菜類 放牧
2.試験課題名
   飼料用根菜類の放牧利用に関する試験
    (草地酪農における放牧利用効率向上に関する試験)
3.期  間  昭和53〜57年
4.担  当  天北農試草地科
5.予算区分  総合助成
6.協力分担  根釧農試

7.目  的
 根菜類の活用を省力かつ簡素化するために、播種は散播、利用にあたっては直接、家畜を導入し、放牧に適した根菜類の栽培条件について検討を加える。

8.試験研究方法
 (1)放牧利用法に関する試験
 (2)省力栽培法に関する試験
  (i)播種時期に関する試験
  (ii)播種量に関する試験

9.結果の概要・要約
 (1)飼料カブ、飼料用ビート、ルタバガの3種の根菜類を用いて、放牧適性をみたところ、平均根部重が300g(100〜600gの根重が約50%)を越えると、利用率はどの根菜類も低回した。(具体的データ1)
 (2)播種時期ならびに播種量の試験の結果から、株数は播種量が多くなるにつれて、明らかに多くなる傾向を示し、また、一方で個体あたりの葉重、根重がともに小さくなることを示した。そのため、播種量増による収量増は見込めなかったため、播種量を80gに固定して、5月から7月まで播種した結果、5月、6月の播種ではは種後90日以内。(9月放牧)
7月上・中旬以後の播種では、は種後90日以降(10月以降の放牧)に放牧時期がくるものと推定された。また、放牧試験の結果から、家畜が利用率を高める平均根部重は150〜250g程度と推定され、この時の適正は種量は飼料カブで80〜150g程度、飼料用ビートで250〜300g程度と推定された。(具体的データ 表−2、表−3)

10.主要成果の具体的数字
表−1 平均根部重量と利用率の関係
作物名 播種月日
(月・日)
播種量
(g)
根部重量
(g)
根部利用率
(%)
葉部+根部
利用率(%)
飼料カブ 6.12 50 1090.0 13.7 34.8
6.20 80 575.8 26.0 42.6
6.11 80 212.4 90.2 93.5
5.21 100 206.5 96.8 97.6
6.14 100 194.4 99.4 99.6
7.7 100 112.7 98.7 99.1
6.21 160 70.0 50.0 72.0
飼料用
ビート
5.12 230 618.0 15.6 45.8
5.16 250 307.5 38.7 62.9
5.18 250 120.0 100.0 100.0
ルタバガ 5.12 200 547.8 14.8 40.8
6.14 100 285.9 96.9 98.3

表−2 平均根部重量と根重分布の関係
作物名 平均根
重(g)
〜100
g
100〜
600g
600g
以上
飼料カブ 381.3 3.1 29.4 67.4
224.1 8.4 64.5 27.1
197.9 9.5 71.7 18.8
129.0 11.1 75.5 13.2
81.0 26.2 73.8 -
飼料用
ビート
410.9 1.2 43.2 55.7
286.7 5.7 41.9 52.4
239.1 5.9 50.8 43.3
230.4 6.3 63.0 30.7
197.1 8.8 73.4 17.9
148.6 13.0 87.0 -
ルタバガ 288.9 2.6 66.7 30.8
227.8 11.1 37.8 51.0

表−3 播種期、根重と収量成績の関係(飼料カブ)

播種
月日
播種

(g/10a)
90日目
平均
根重(g)
90日目の収量(1kg/10a)
葉重 根重 全重
55 6.20 80 359.3 3541 7545 11086
120 213.7 2737 5236 7973
160 168.1 2288 5463 7751
200 131.6 2884 5330 8214
7.5 80 211.7 2630 5652 8282
7.20 80 229.1 2226 5888 8114

11.今後の問題点
 (1)搾乳牛に対する産乳効果
 (2)放牧条件(放牧強度、滞牧時間)と摂取量の関係
 (3)雑草対策(特に春先の雑草生長期)

12.成果の取扱い
 (1)根部の平均重量が150〜250g程度になるように播種量、播種時期を調節することにより利用率を80%以上にすることが可能である。
 (2)播種後90日前後の利用開始が適当であるが、放牧利用では1日給与量を制限(成牛1頭当り25kg以内)するとか、窒素の過剰施肥を避け、硝酸塩中毒などの障害回避に留意する。