1.課題の分類  草地 牧草
2.研究課題名  転換畑における牧草生産及ぴ
           牧乾草の調製利用技術
3.期    間  昭和54〜56年
4.担    当  滝川畜試 草地飼料作物科 めん羊科
5.総合助成   総 合 助 成
6.協力分担   な   し

7.目    的
  転換畑から生産された牧草・飼料作物が流通ルートに乗って利用される場面では、一般の普通畑
 から生産されたそれらと異なり、家畜の嗜好が悪いことを理由に低価格で取引される例があると聞く。
 そこで、転換畑と普通畑に同一条件で牧草を栽培し、そこから生産された牧草の栄養価や採食量に
 違いがあるかを調べた。

8.試験研究方法
  水田転換畑における牧草生産実証             草地飼料作物科
  水田転換畑より生産された牧乾草の飼料価値の検討  め ん 羊 科

9.主要成果の概要
 1. 水田転換畑における飼料生産実証
   転換畑(当場隣接の水田農家圃場)および普通畑(場内圃場)にオーチャードグラス+アカクローバと
  チモシー+アカクローバの混播草地を造成し、3か年間、各草地から乾草を調製し、生産量および品
  質を調べた。
   牧草の乾物生産量で、チモシー混播草地では転換畑と普通畑との間に違いはあまりなかったが、
  オーチャードグラス混播草地では普通畑が3か年とも多収であった。両圃場とも2年目以降アカクロー
  バがほとんど消失した。
   水稲用のバインダーを用いて、刈取り、結束を行い、針金架法での乾草調製が可能であった。しか
  し、畦間にまたがって複雑に倒伏した牧草では、刈取りができず、また、畦からはずれた牧草は刈り
  残されることや、作業速度が遅い等の欠点があった。

 2. 水田転換畑より生産された牧乾草の飼料価値の検討
   上記の圃場から調製された総数26点の乾草を去勢めん羊各6頭に飽食させて消化試験を行い、消
  化率および採食量を調べた。転換畑と普通畑の比較を11回実施した。オーチャードグラスの乾物消化
  率で3回、このうち2回は普通畑の消化率が高く、チモシーで1回、転換畑が高い消化率を示し、都合
  4回の有意差が認められた。しかし、乾物摂取量では有意な違いは一度も認められなかった。マメ科
  牧草の消失した2年目以降の草地で、本試験で行った刈取りスケジュールでは、めん羊の可消化エ
  ネルギー摂取量が維持量程度で、品質がよくなかった。

10.主要成果の具体的数字

オーチャードグラス乾草の飼料価値
乾草試料番号 DCP
  %
TDN
  %
D E
Kcal
自 由
採食量
D E
摂取量
Og-54-1-転 11.7 53.5 2.33 81.2 189
       普 9.8 54.8 2.49 82.2 205
Og-55-1-転 8.4 47.9 2.13 49.1 105
       普 8.6 48.3 2.08 53.2 111
Og-55-2-転 10.8 55.2 2.55 72.7 185
       普 11.9 57.7 2.67 70.7 189
Og-55-3-転 9.7 55.8 2.54 64.3 163
       普 12.1 56.9 2.59 62.8 163
Og-56-1-転 5.2 55.8 2.45 43.7 107
       普 6.4 52.3 2.20 38.1 84
Og-56-2-転 7.2 54.2 2.43 51.2 124
       普 9.1 52.9 2.27 48.3 110
Og-56-1-早-転 8.9 60.3 2.76 61.5 170
2-早-転 5.4 46.8 2.05 45.8 94
     3-普 7.7 51.3 .2.28 46.4 106

チモシー乾草の飼料価値
乾草試料番号 DCP
  %
TDN
  %
D E
Kcal
自 由
採食量
D E
摂取量
Ti-54-1-転 10.1 52.4 2.37 84.6 201
      普 10.9 53.0 2.29 80.2 184
Ti-55-1-転 7.0 48.0 2.09 57.1 119
      普 5.5 47.3 2.17 52.1 113
Ti-55-2-転 9.7 52.8 2.35 69.6 164
      普 9.0 51.8 2.31 63.5 147
Ti-56-1-早-転 5.3 60.2 2.71 48.1 130
      普 5.5 60.3 2.64 46.4 122
Ti-56-1-遅-転 4.1 52.9 2.34 37.0 87
      普 4.1 50.4 2.11 34.8 73
Ti-56-2-普 4.1 50.8 2.22 49.7 110

DCP.TDNは乾物中パーセント
DE:可消化エネルギー
自由採食量;飽食時の乾物摂取量(g/W0.75)

11.今後の問題点
   アカクロバーの混入率の維持(マメ科率の維持)
   高品質な乾草収穫のための刈取スケジュール

12.普及指導上の注意事項
   転換畑と普通畑から生産された牧乾草の栄養価には大差がなく、既往の栽培・調製技術をもとに
  栄養価の高い牧乾草を調製する必要がある。