【指導参考事項】
1. 課題の分類  経営方式 経営設計 畑作
2. 研究課題名  複合型野菜作経営の安定化に関する調査研究
           −道東地域における野菜作複合経営の安定化に関する調査研究−
3. 期 間  昭和55〜57年
4. 担 当  十勝農業試験場農業機械科
5. 予算区分  総合助成
6. 協 力  中央農業試験場農業経営部

7. 目 的
 十勝地域の畑作経営において、所得の拡大を図るため、各種の野菜の導入が進められている。しかし、野菜作が畑作経営に定着するためには、経営内の条件に適した作物であることと、更に販売組織等の産地の組織を確立することが必要であると考えられる。このため、①現在、十勝管内で作付されている野菜のうちで畑作経営に導入し得る作物を検討し、②産地の諸組織の機能が如何に個別経営の野菜導入に関与するかを検討する。

8. 試験方法
 前項①については、主に線型計画法を利用する。②については、帯広市A農協管内の長いも作地帯における組織活動の事例分析によった。

9. 結果の概要
 1)十勝管内で作付されている野菜の中で土地当りの収益性(10a当り所得)の高い作物は、長いも>生食アスパラガス>たまねぎ>ごぼう>ほうれんそう等であったが、生食アスパラガスやほうれんそうは、作付面積が制限されるから所得を増加させる機能も少ない。長いもとたまねぎは、土地当りの収益性の高さと機械化の進展のよって、畑作経営においても基幹作目となり得る作物である。ごぼうも機械利用が可能であり、畑作物との労働競合も少ないから、比較的容易に導入できる作物であるが、収益性の水準から、畑作経営においては補完作目として位置づけられる。
 2)帯広市A農協管内における長いも作経営の収益性を試算した結果から、長いもの導入によって農業所得を増加させることが可能であり、耕地面積10〜15haの規模で長いもを約1ha作付する経営は、20〜25ha規模の畑作専業経営の農業所得を上廻り得る事が知られた。
 3)A地区における長いも作の定着には、生産組織の果たした役割が大きい。特に種子の一元供給と厳重な生産管理は、過剰生産傾向にある市場条件の下で、有利な価格を形成し、個別経営の収益性を高めていることが認められた。

10. 主要成果の具体的数字
  表1 長いも作経営の収益性試算     (単位、千円)
区分 長いも作付農家 長いも不作付農家
耕地 項目 戸数 粗収益 経営費 差引利益 戸数 粗収益 経営費 差引利益
5ha〜10ha 2 9949 3459 6490 2 5763 2838 2925
10ha〜15ha 3 15783 6363 9420 3 8448 3064 5384
15ha〜20ha 2 15268 8651 6617 9 13771 5248 8523
20ha〜25ha 2 18504 8593 9911 7 17491 9253 8239
25ha〜30ha         3 21172 11320 9853
注1.粗収益は、地区の平均収量と単位を乗じて算出した。
 2.経営費は56年の実績を用いた。但し、減価償却費は購入と共有の状態から耐用年8年として一律に算出した。


注1.大阪中央市場平均価格は大阪本場における10月〜次年9月の平均価格
 2.価格差
    =市場販売価格−市場平均価格

11. 今後の問題点
 20ha以上の畑作経営における長いも作の導入有利性について、その条件の検討が残されている。

12. 普及指導上の注意事項