【普及奨励事項】
Ⅰ摘録
1.「たんねもち」の特性概要

品  種  名 た ん ね も ち   組  合  せ   道北22号×道北糯18号
特    性 長所  1.良質  4.糯として千粒重が重い
     2.強稈性 5.割籾の発生が少ない
     3.多収性
短所 1.登熟日数が長い
    2.穂数確保がむずかしい
採用県および
普及見込面積
 北 海 道   500ha
   品種名・苗別
形質および項目   
た ん ね も ち 標 準 ・ お ん ね も ち
成  苗 中  苗 成  苗 中  苗
出 穂 早 晩 性 早 生 の 晩 早 生 の 晩
草        型 偏 穂 数 型 偏 穂 数 型
出   穂   期 8月5日 8月7日 8月5日 8月7日
成   熟   期 10月7日 10月5日 10月3日 10月5日
稈        長 65cm 64cm 63cm 61cm
穂        長 17.3cm 16.1cm 15.9cm 15.0cm
穂        数 437本/m2 518本/m2 607本/m2 653本/m2
芒        性 少 ・ 極 短 中 ・ や や 短
ふ   先   色 黄   白 黄   白
脱   粒   性
耐  倒  伏  性 やや強〜強 や や 強
耐 冷 性 (障害) や や 強 や や 強
葉いもち耐病性 や や 強
穂いもち耐病性 やや弱〜中
玄 米 重 (kg/a) 56.6 53.7 49.1 44.0
〔 同 上 比 率 〕 [129] [122] [112] [100]
玄米重(kg/)%と比率 (59.2、125) (63.3、134) (51.7、109) (47.3、100)
玄 米 千 粒 重 20.7g 20.2g 20.2g 20.8g
玄 米 品 質 上下上 上下上 上下中 上下上
玄 米 等 級 3上 2下 3中 2下
食      味 中下 中上 中上 中上
食  味  特  性 779 764 750 693
調   査   地 北海道立上川農業試験場(旭川市永山)
調 査 年 次 1981〜1983年の3カ年(標肥区、但し中苗多肥区は1982〜1983の2カ年)
注)1.玄米重の( )内は、多肥区。
  2.食味特性:アミログラムの最高粘度(標肥、1981〜1983年、但し、中苗は1982〜1983年)
  3.道北22号:北海222号(マツマエ)×上育323号。道北糯18号:かむいもち×ささほなみ。

2.「たんねもち」の特記すべき特徴
 糯種として良質多収である。すなわち、玄米品質と食味および加工適性は「おんねもち」並で良好である。千粒重および粒大は「おんねもち」より重く、大きい。収量は「おんねもち」を上廻る。耐倒伏性は「おんねもち」並かやや良い。割籾の発生は「おんねもち」より少ない。苗草丈の伸長程度は「おんねもち」より小さく、育苗しやすい。欠点としては、登熟日数が長いことで、熟期は「おんねもち」より遅くなる。また、穂数が「おんねもち」に比べて少ない。

3.栽培適地を拡大する理由
 現在「おんねもち」は、北海道の糯作付面積の75.4%を占め、そのうち77.5%が、主に道北および道東地帯で栽培されている。当該地帯では、糯集団栽培上、「おんねもち」が単一品種として作付けされている所が多いので、刈取り適期巾が狭く、刈遅れによる品質低下に加えて、「おんねもち」がやや割れ籾の発生が多いこと、苗草丈が伸びやすく育苗しずらい上に、感温性がやや大きく、穂数が多いので、穂揃性が良くないことなどから、近年着色粒による品質低下が問題となっている。
 「たんねもち」は「おんねもち」に比べて、苗草丈の伸長程度が低く育苗しやすく、割籾の発生が少なく、感温性はやや小さく、穂数は少ないので、穂揃性が良く、着色粒の発生が少ない傾向にある。また、「おんねもち」より大粒なので、品質上有利である。しかし、成熟期は「おんねもち」より遅く、不安定要因が残されていた。遅延型冷被害年の1983年における成苗を供試した継続試験結果では、「おんねもち」の中苗栽培に比べて、成熟期は「おんねもち」並かやや早まり、安全性が確認された。
 したがって、上川北部、留萌北部および十勝全域の「おんねもち」に配合して作付し、危険分散および刈取り適期巾の拡大などにより、良質糯米の安定生産をはかりたい。普及予定面積は、当該地帯の糯作付面積2,087haの約25%、500haである。

          
注)1.縦線は栽培適地の拡大による普及見込地帯を示す。
  2.現在(1983年)の栽培適地:上川中南部、留萌中南部、空知、石狩、後志、胆振、日高、桧山北部、渡島北部およびこれに準ずる地帯。

4.栽培上の注意
(1)「たんねもち」の栽培に当っては、成苗を用い、熟期を早めることを前提とする。