【指導参考事項】
北海道におけるイチゴの高収益栽培技術
イチゴ  作型・栽培一般
道南農試
Ⅲ 二季目加温半促成指向における保加温方法と燃料費節減効果
期   間  昭和54年〜56年
予算区分  道単、
協力分担関係 なし
1.担  当  管理科 今野 寛・園芸科 沢田一夫

2.目 的
 夏秋どり収穫終了後の株について、休眠生理を応用し連続花成長期どりによる多収化と半休眠充足期遅延による燃料費の節減効果を検討する。

3.試験方法
  短日処理時期 加 温 開 始 時 期 お よ び 方 法
54年度 6月20日 露地外気温5℃以下積算600時間遭遇時               (A)
ハウス+カーテン保温内5℃以下積算600時間遭遇時        (B)
ハウス+カーテン+トンネル保温内5℃以下積算600時間遭遇時  (C)
55〜56年度 5月20日
6月20日
(ハ・力・ト保温内5℃以下積算600時間遭遇を前提として)
無加温で低温量充足時加温    (A)
加温中断、2月1日再加温      (B)
加温中断、3月1日再加温      (C)

4.結果および考察
 (1)休眠生理利用による長期どりは、半休眠的生育を維持させるために本道においては宝交早生は、5℃以下の低温遭遇を600時間程度経過時から5℃以下にならないよう加温する必要がある。この低温量充足期は平年外気温で12月2半旬にあたり、この時期から加温を開始すると、16万円/aの燃料費を要する。(ディグリーアワー理論計算)。

 (2)ハウス+カーテン+トンネル保温で充足期を22日遅らせ、燃料費を78%に節減することが可能であるが、さらに節減をはかるために中断加温法(5℃以下にならないよう秋期から加温を開始し、寒期〜厳寒期に加温中断して、この時期に低温量充足をはかり再加温する)を検討した。

 (3)2月1日再加温目標は低温量充足のために12月17日からの寒期45日間中断、また3月1日再加温目標は1月17日からの厳寒期42日間を中断することができ、その燃料費はそれぞれ63%、51%に節減できる。

 (4)休眠度合の目安となる棄柄長・ランナー発生数は、再加温時期の遅い3月区がそれぞれ長く、多くなっており休眠覚醒が進行している生態を示した。5℃以下にならないよう加温したが、6〜7℃などの遭遇温度も弱いながらも休眠覚醒に関与しており、中断期の600時間に加算されている結果と考えられる。

 (5)収量は、前期加温により株充実の促進された2月再加温区が、花房数増加による上物果数増でもっとも多収となり、低温量充足時加温区の127%を示した。3月再加温区は同じく前期加温で株充実されているにもかかわらず2月区より劣っており、中断期の厳寒遭遇影響や休眠覚醒がより進行しているための花房数減に起因していると考えられる。しかし充足時加温区よりl13%の多収性を示した。

 (6)以上、中断加温法は、燃料費節減効果のほかに、赤熱期はやや遅れるが収量構成要素を高める効果もあり、その収益性は2月再加温で172%、3月再加温で164%の収益増があるなど高収益性の加温法といえる。

5.主要成果の具体的データー

中断加温法による収益性(千円/a)
  加 温 法 [( )内は燃料費(ア)]
A (136) B (111) C (89)
短日処理時期 5月 6月 一季 平均 対比
(%)
5月 6月 一季 平均 対比
(%)
5月 6月 一季 平均 対比
(%)
55年度 (イ)粗収入 251 311 312     304 387 492     231 374 442    
(ウ)イーア 115 175 176 155 100 193 276 381 283 183 142 285 353 260 168
56年度 (イ)粗収入 232 252 252     270 296 -     279 245 -    
(ウ)イーア 96 116 116 109 100 159 185 - 172 158 190 156 - 173 159
2ヶ年平均 (ウ)イーア       132 100       227 172       216 164

6.今後の問題点
 (1)さらに燃料費節減のための夜間保温施設重装備および加温体積縮小における労力・経済性。

7.成果の取扱い(普及指導上の注意事項)
 (1)加温前期は不時出蕾防止のため、高温管理はしない。
 (2)再加温後10日程度で出蕾するので花粉稔性低下防止のために「むしこみ」はしない。