【指導参考事項】
1.課題の分類 キュウリ・トマト・レタス・セルリー 作型・栽培一般 道南農試 2.研究課題名 地熱エネルギー利用による寒地施設園芸試験 冬期生鮮野菜の生産技術試験 3.期 間 昭和54〜57年 4.担 当 道南農試 園芸科 5.予算区分 道 単 6.協力分担 な し |
7.目 的
地熱エネルギー環境調節に利用して、冬期間の生鮮野菜栽培技術の検討を行う。
8.試験研究方法
ハウス内一層カーテン固定張り(保温性の向上)の光条件で、ハウス内気温を4段変温制御方式[日中加温(6〜7時より16〜17時24℃成行)、転流加温(16〜17時より21〜22時15℃)夜間呼吸抑制加温(21〜22時より4時処理温度)、早朝加温(4時から6〜7時10℃〜13℃)で制御し、夜間の最低気温を高温区(13〜15℃)低温区(10〜13℃)の2室にして栽培を行う。
年次 | 54年 | 55年 | 56年 | ||||||||
作物名 | キュウリ | トマト | レタス | キュウリ | トマト | レタス | セルリー | キュウリ | トマト | レタス | セルリー |
は種期 | 9.20 | 9.1 | 10.1 | 9.20 | 9.20 | 10.1 | 11.13 | 10.1 | 9.18 | 10.2 | 10.2 |
定植期 | 10.26 | 11.6 | 11.6 | 11.22 | 10.29 | 11.14 | 1.20 | 11.2 | 11.18 | 11.24 | 12.29 |
収穫期 | 12月〜 | 2月〜 | 1月〜 | 12月〜 | 2月〜 | 1月〜 | 4月〜 | 1月〜 | 2月〜 | 2月〜 | 4月〜 |
畦幅株間 | 120/40 | 120/30 | 40/33 | 120/40 | 120/30 | 40/33 | 40/40 | 120/40 | 120/30 | 40/33 | 40/40 |
施肥量kg/a | 2 2 2 | 2 2 2 | 1.5 1.5 1.5 | 2 2 2 | 2 2 2 | 1.5 1.5 1.5 | 3 3 3 | 2 2 2 | 2 2 2 | 1.5 1.5 1.5 | 3 3 3 |
かん水 | 慣行 | 同左 | 同左 | 同左 | 同左 | 同左 | 同左 | 同左 | 同左 | 同左 | 同左 |
使用ハウス | FEA板 東西線 | 塩ビ東西棟 | FEA板 東西線 | 塩ビ東西棟 | 塩ビ南北棟 |
9.試験結果及び考察
A キュウリ冬期主産技術試験
1)目的
寒地において、冬期生産できる果実として、温度要求はトマトより高いが、寡照に耐えられるキュウリを、より耐寒性の品種を選択しながら生産技術の確立を図る。
2)試験結果及び考察
54、55年1月中旬暖房機の故障で冷害をうけ調査中止のやむなきにいたった。それまでの生育から以下のことが得られた。温度による影響は、両年ともに13℃以下の低温では12月中旬より「かんざし状態」となって座止するか、中には黄化棄を生じ枯死にいたるものも生じた。高温室でもやはり狭長な棄を生ずるかんざしにはいたらず品種の中では、ときわ光3号P型が低温伸長性がすぐれ実用性があると考えられた。
55年には新土佐かほちゃを台木として接木栽培を試みたが、低温室ではやはりかんざしとなった。高温室では光3号Pの生育はほとんど変わらないが光促成、夏秋節成2号では明らかに生育が良好になった、しかしこの2品種は低温室で黄化棄を生じ枯死するものがあった。
56年 台木2品種を使い接木栽培で比較した。低温室ではやはり生育抑制が著るしいが北極1号 省エネH4号はほぼ正状に近い生育を示し、明らかに低温伸長性がすぐれていた
。台木間では薄皮黒だねかほちゃがまさった。 以上3個年の結果から、キュウリの越冬栽培では、夜間最低気温が10〜13℃ではかんざしとなって座止するか、枯死を生じた。この条件下では接木栽培であっても、また比較的生育のよい北極1号 省エネH4号であっても果実伸長が抑えられてクズ果となり低温室栽培の実用性はないと判断された。
結局高温室で夜間最低13〜15℃に保温し、薄皮黒だねかほちゃを台木とする接木栽培で北極1号、省エネH4号を使うと実用性があると判断された。
57年 2層カーテンを新らたに加えて、高温室のみで株間も40、60㎝で比校した。生育外観では2層カーテンが強勢でまさり、初期収量では多収で、有意の収 差であったが、全期間の収量では、2層カーテン、株間40cmの環境として不良環境となるものが有意な低収となった。初期生育の優勢が後期には逆作用を及ぼしたものと されるが、更に検討を要する。
品種の結果習性を調査すると、主枝節成性が高く、退化側枝の発生が多い女神2号、北極1号が多収であった。
しかし長期安定多収をはかるためには、退化側枝の他に、展開棄をつUた正常側枝が混在することが必要と考いられ、このような品種、あるいは発生促進の環境または整枝方法等が今後と課題である。
以上から越冬栽培は10月下旬に定植し、夜間最低気濃13〜15℃の保温条件であれは、薄皮黒だねかほちゃ台木に北極1号、女神2号を接木し、12月下旬〜4月中旬までの収穫で収量は800〜900kg/aを得られることが実証された。
3)主要な試験データ
図1 茎長の推移(S54)
図2 キュリ品種×台木×室温のちがいのよる草丈伸長推移と収量
(S56年 H=高温 L=低温 土=新土佐 黒=薄皮黒だね)
図3 接木台木品種によるつる別収量構成(S56年)
(S57年1月10日〜4月15日間)
図4 各節に発生する子づるの型態とひん度(1層カーテン)
北海道における越冬キュウリ栽培の要領
1.栽培ハウス利用期間 lO月下旬〜5月
2.ハウス内カーテン装置 塩ピフイルム1層固定張り、2層とする時は昼間開放とする。
3.定植条件 40日育苗苗を地温15℃以上(日中地温18〜20℃)のハウスに定植する。
4.ハウス内気温 夜間最低気温13〜15℃とする。
5.畦巾×株間 110〜120cm×40㎝以上
6.適応品種 北極1号、女神2号
7.予想収量 12月下旬〜4月15日までとして換算収量(株間50cm)826〜929kg/a
表1 収量調査(株当り)
カ ー テ ン |
初期収穫(g) (12月下〜2月2日) |
全期間収穫(12月下〜4月25日) | 1個 平均重量 品種 _ X |
a当り換算収量 | ||||||||
重 量 (g) | 個 数 (本) | 重 量 | ||||||||||
40 | 60 | 品種 _ X |
40 | 60 | 品種 _ X |
40 | 60 | 品種 _ X |
品種×166.7 | |||
1 層 カ ー テ ン |
女神2号 | 890 | 1,230 | 1,115 | 4,980 | 6,890 | 5,570 | 55.7 | 76.2 | 64.0 | 87.0g | 928.5 |
光3号P | 930 | 1,060 | 965 | 4,850 | 5,740 | 4,690 | 55.4 | 65.6 | 54.8 | 85.5 | 781.8 | |
省エネH4 | 900 | 1,150 | 1,153 | 4,540 | 5,940 | 4,465 | 49.6 | 69.2 | 51.3 | 87.0 | 744.3 | |
北極1号 | 1,080 | 1,340 | 1,230 | 4,780 | 6,180 | 4,953 | 53.9 | 68.6 | 55.5 | 90.1 | 825.7 | |
北極ミラー | 1,080 | 1,250 | 1,198 | 4,900 | 5,890 | 4,,473 | 57.4 | 66.2 | 50.8 | 88.0 | 745.6 | |
_ X |
976 | 1,206 | (1,090) | 4,810 | 6,128 | (5,469) | 54.4 | 69.2 | (61.8) | (株間50cmとして) | ||
2 層 カ ー テ ン |
女神2号 | 1,050 | 1,290 | 4,920 | 5,490 | 59.4 | 64.6 | (1,160) | ||||
光3号P | 770 | 1,100 | 3,240 | 4,940 | 38.2 | 59.9 | (977) | |||||
省エネH4 | 1,070 | 1,490 | 3,160 | 4,220 | 37.3 | 49.0 | (930) | |||||
北極1号 | 1,110 | 1,390 | 3,630 | 5,220 | 40.9 | 58.6 | (1032) | |||||
北極ミラー | 1,040 | 1,420 | 3,180 | 3,920 | 36.6 | 43.0 | (932) | |||||
_ X |
1,008 | 1,338 | (1,173)** | 3,626 | 4,758 | (4,192)** | 42.5 | 55.0 | (48.8) | (株間40cmとして) | ||
株間 | 992 | 1,272** | 4,218 | 5,443 | 48.4 | 62.1 | ||||||
品種間 差 LSD 133* |
4)今後の問題点
期間中平均的に収量を持続させ多収を図る越冬性適品種の選択、環境管理方法、整枝方法、省エネ的保温。
5)次年度の計画
代替エネルギー利用による寒地施設園芸試験へひきつぐ。