【指導参考事項】
1.課題の分類  野菜一般 作型・栽培一般・環境調節  道南農試
2.研究課題名  地熱エネルギー利用による寒地施設園芸試験
           冬期生鮮野菜の生産技術試験
 B トマト冬期生産技術試験

1)試験目的
 寒地において冬期生産する果菜として、温度要求度はキュウリより低く有利であるが、光要求度が高いトマトについて、寡日照の冬期間にハウス内1〜2層カーテン(保温性向上)被覆の悪条件下で、より省エネルギー的栽培の可能性を品種との関連で検討する。

2)試験結果及び考察
 54・55年、 両年とも1月中旬暖房機の故障で調査中止のやむなきにいたったが、それまでの生育から、以下のことが得られた。低温室の生育遅延は1月中旬で2〜4葉で、開花は第2花房で6〜7日おそく、未熟果収量は高温室の35〜70%に過ぎなかった。この状況で強力秀光、あづさ、改良秀光、強力旭光、ゆうやけAが比較的良好でファーストは最も劣った。55年の高温室における凍害軽微株の着色が2月21日みられ開花から80日を要したが、食味、着色は良好で越冬栽培の一応の可能性を推定できた。
 56年、前2ヶ年同様低温室の生育遅延は著るしく、第2花房で2〜4日、第3花房では6〜10日間もの遅れで上段花房になるにしたがい遅れは増大した。しかしその草状はキュウリのように座止せず、草丈の短かい正常草姿で露地栽培の草姿と以たものであった。
 一方高温室では草丈の伸長が大きく、茎葉の重なりが、徒長過繁茂の草状を作り出し、後半より栄養生長型の生育を示し、低段位果実の肥大、熟期の遅れを生じた。
 したがって収穫は高温室、低温室が3月2日同時に始まった。赤熟所要日数は100内外でファーストは106〜113日と最も遅かった。
 総収益は登竜、ゆうはえ、旭光が多収で、ゆうやけA、あづさ、改良秀光がついだ。ファーストは2週間以上も遅く最も少ない。時期別では改良秀光、旭光、ゆうやけA、ゆうはえが早期多収であった。
 低温期の栽培で、乱形果の発生が懸念されたが、ファースト、あづさに低温度で27% 高慢室では15%の発年個数で旭光、ゆうやけA、ゆうばえの低温室で10%をこえた。やはり低温室では発生が多く今後の課題である。
 57年は2層カーテン区を設け、高温室のみとし、株間30、40cmで比較した。 2層カーテンは草状では旺盛な生育を示したが、過繁茂となり、低段位の果実肥大、着果に悪影響を与え、全期間収量は1層カーテンの88%の低収、品種間、株間に有意差がなく、3月3日〜5月15日までの収量は880〜1000kg/aであった。
 果実品質は着色が草勢と関連して不足分となり易い(改良秀光、端秀)多心室のものは巨大果となり易い。など、更に徒長化しないような栽培管理、果実肥大、着色に及ぼす摘棄などが課題である。
 以上、北海道でもハウス越冬作(11月下旬〜5月中旬)が可能で、夜間最低気温13〜15℃、1層カーテン被覆として2層の時は昼間開放する。適応品種はゆうばえ、改良秀光、強力旭光、ゆうやけAで、3月上旬〜5月中旬までの収穫で的900kg/aの収量を得られることが明らかとなった。

北海道における越冬トマト栽培の要領
1.栽培ハウス利用期間  11月下旬〜5月
2.定 植 条 件      60日育苗苗で第一開花初めの苗を、地音13℃以上(日中地音18〜20)のハウスに定植する。畦幅120、床官30cm
3.ハ ウ ス 施 設    ハウスの内カーテン装置1層固定張り、2層の時は昼間開放とする。
4.ハ ウ ス 内気温    夜間最低気温13〜15℃とする。
5.適 応 品 種      ゆうばえ、改良秀光、強力旭光、ゆうやけA
6.予 想 収 量      3月上旬〜5月中旬まで約75日収量で900kg内外

3)主要な試験データ

図1 トマト 室温による草丈伸長の差異(S54年)


図2 越冬トマト 室温による茎長伸長の推移(S56年)


図3 越冬トマト 室温による規格別収穫重量の差(S56年)


図4 株当り収量(重量)及び1個重量(S57年)

表1 越冬トマトの収量(S57年)
株 間 株当り全期収量重量 a当り換算収量
(a当り277.8株)
品 種 名 40 30 品種
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1層カーテン フローラ 2,765g 2,745g 2,614g 78% 726.1kg
端  秀 4,658 3,179 3,624 109 1,006.6
端秀ミラー 3,701 4,722 3,686 110 1,023.9
ゆうやけA 3,310 3,083 3,083 92 856.4
ファーストパワー 3,169 2,388 2,948 88 818.9
改良秀光 3,702 4,399 3,557 107 988.0
ゆうばえ 3,017 3,518 3,285 98 912.5
強力旭光 3,822 2,762 3,181 95 883.6
豊  竜 3,400 2,901 2,741 82 761.4
あ づ さ 3,335 4,009 3,339 100 927.5
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3,488 3,371 (3,430)    
2層カーテン フローラ 2,866 2,081      
端  秀 3,544 3,114      
端秀ミラー 3,032 3,287      
ゆうやけA 3,374 3,122      
ファーストパワー 3,039 3,196      
改良秀光 3,172 2,955      
ゆうばえ 3,905 2,701      
強力旭光 3,465 2,675      
豊  竜 2,309 2,354      
あ づ さ 3,195 2,817      
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3,190 2,830 (3,010)    
株間 3,339 3,101      

4)今後の問題点
 更に細かい昼間気温の制御、並びに水分管理による適性な草状の向上、摘棄方法と損失。

5)次年度の計画
 代替エネルギー利用による寒地施設園芸試験にひきつぐ。