1 課題の分類
2 研究課題名 高温用好気発酵槽の反応特性
3 期  間  昭和58年度
4 担  当  機械化第3研究室
5 予算区分  大型別枠
6 協力・分担 北大・農畜産加工機械

7 研究目的
  液状の糞尿を好気発酵処理する高温度用反応槽の運転特性を明らかにし、
  同上技術普及上の参考とする。

8 試験研究方法
  1.装置:断熱された反応槽と槽内水中ポンプによりイジェクタを介して湿気す
    る自動調節反応装置である。 (表1)
  2.期間・所:1983年10月10日〜1983年12月,北農試構内
  3.測定・分析:各部温度(60点),物性および化学成分(水分、PH、BOD、粘度、
    CO2、O2、窒素含量、臭気、他) 

9 結果の概要
  実駕規模のスラリー好気発酵槽を製作し、冬期間にわたる反応試験を行った
  ところ、次の結果を得た。
  1.実用規模における反応槽には、槽内温度の上昇率からみて、Ⅰ,中温菌
    相(10〜40℃)、Ⅱ,高温菌相(40〜70℃)の2相がある。平均槽温は67℃
    に達し、槽温上昇率は、各々、6.1,2.7℃/日であった。 (図1)
  2.投入後処理により・BODは減少し、PHは増加した。 (表2) 酸素消費量は
    Ⅰ相、Ⅱ相各々1,40O,800g-O2/hで、BODはⅠ相の終りで39%減じ・PH
    は8.2とみられる。約7日で不快臭のない黒褐色の液体となった。
  3.粘度は投入後急速に減少し、Ⅰ相で1/5、Ⅱ相で1/20以下に低下した。
  4.総発熱量は、Ⅰ相,Ⅱ相各々、7.3Mcal/m3日,3.6Mcal/m3日で、システ
    ムとしての成績係数は、1.4〜3.8であった。(表3)
  5.以上の結果、本処理法は脱臭、流動性向上によく、また、温水として熱回
    収も可能な技術と判定された。

10 主要成果の具体的数字
表1 投入原料および装置仕様
  項目 仕様 備考

 
投入原料 25m3  
同有機物含量 85%(DM)
同C/N 25

 
 
 
反応槽 31.0m3 断熱100㎜
貯湯槽 3.1m3 断熱100㎜
裂湯槽 0.5m3 断熱100㎜
糞尿ポンプ 3.7kw  
プロア 3.7kw 冷却用
ニセクタ 1000mmAq(max)  
熱交換器 電熱面積2.8m2 排気ガス−水
  〃  0.6m2 槽内循環型
消泡器 0.2kw  
制御器 一式  


図1 スラリー好気発酵試験の経過例

表2 反応槽内スラリーの分析結果
採取日 経過日数
(日)
水分
(%)
DM
(%)
PH BOD5
(ppm)
粘度(cp)
6rpm 12rpm 30rpm 60rpm
58.10.21 0 93.96 6.04 7.40 24,500 830.0 600.0 325.0 217.5
  10.22 1 93.45 6.55 7.95 (20,000) 200.0 136.7 92.0 66.0
  11.1 11 94.71 5.29 8.30 12,300 100.0 70.0 45.0 36.5
  11.4 14 95.39 4.61 8.84 11,900 9.8 8.0 6.6 6.0
  11.12 22 95.76 4.24 9.01 13,000 - - - -
                              *B型粘度計により測定

表3 反応槽の発熱量と成績係数
試験日 経過日数
(日)
平均外気
温(℃)
曝気量
(m3/min)
平均液温
(℃)
電力量
(kwh/日)
総発熱量 成績係数
(Mcal/日) (Mcal/m3日)
58.11.18 3 1.7 0.21 27.1 60.6 182.5 7.30 3.8
11.21 6 0.7 0.17 41.2 71.6 103.3 4.13 2.0
11.25 10 -1.3 0.19 52.1 79.5 115.8 4.63 2.0
11.28 13 0.0 0.20 60.4 87.1 91.4 3.66 1.5
12.2 17 0.8 0.21 64.6 94.1 84.9 3.40 1.4
1) (発生熱量+電力量)/(電力量)    発生熱量=総発生熱量−ポンプ発熱量
2) 槽内液量25m

11 普及上の留意点
   ほ場還元施用技術など既往の技術の活用により、糞尿施用の便がはかられるとともに、
   悪臭対策、温水利用の面でメリットがある。したがって都市近郊の酪農地での利用に適する。

12 残された問題
   供試の装置は37頭規模に適し、必要により反応槽の拡大が必要である。(技術的延長可能)