1.分    類   共   通
2.研究課題名   風力−熱変換技術
3.予算区分    大型別枠
4.研究実施年度  昭和58年
    ・研究期間  55年〜59年
5.担    当   北海道農試 農業気象研究室
6.協力・分担関係 な   し

7.目  的
  石油代替技術として北海道の豊富な風力を利用し、効率のよい風力から直接発熱する
  システムを開発し、その熱量を効率よく農業生産場に供給する。

8.試験研究方法
 (1)世界的にも風力発熱の成功と成果報告がないので、プロペラ−油圧−オリフィス発熱
    システムを考案。1号機でテストする。
 (2)発熱システム成功の段階で、長期安定発熱法、熱利用法の開発を実施。
 (3)長期安全運転のための風力制御法を単独制御と集中制御法に分け開発する。

9.結果の概要・要約
 (1)研究経過
  ①昭和54年から風力発熱の構想と実験方法について検討され、昭和55年度からGEP
  Ⅳ系で1号機を建設(プロペラ4mφ、出力1kw)構造、発熱を主体に試験を実施した。結
  果は効率0.3と云う高い発熱に成功したが、その他、構造、制御等ほとんど失敗した。
  ②56年度は出力アップ(プロペラ10mφ、出力20kw)を図り全面的に構造、制御(姿勢制
  御)を改造して試験した。結果は、効率0.4以上の発熱が得られ、発熱システムは安定、
  長期運転が可能となった。姿勢制御法はやや不安定でプロペラ10mφ以上では風の乱流
  に対応して強化策が必要であることが判明した。しかし、その他には問題が解消したので
  姿勢制御法を強化して一部実用化(営業用)が実現した。
  ③風力発熱の将来は海岸、山岳に単独あるいは多数が無人運転されるため、57、58年度
  は新しい制御法(単独の自己制御法)の開発をすすめ、3号機で試験し成果を収めた。その
  結果、現在、単独での無人風力発熱が可能で、実用化しても問題はない。
 (2)無人風力発熱装置(3号機)の試験結果
  図1は、姿勢制御右の2号機を改造し、再びダウンウィンド型のプロペラとして風の乱流に対
  し、回転の安定化を行った。これに遠心クラッチ方式の緊急ブレーキを搭載して運転領域(風
  速5〜10m/s)の制御方式と組み合わせ、風速全領域で安全性が確立した。3号機の発熱効
  率は図2の高い値(0.4以上)と示した。

10.主要成果の具体的数字


図1 風力熱変換装置3号機の構造


図2 2,3号機における風速と出力の関係

11.今後の問題
 (1)遠心クラッチ方式による緊急時の風力単独制御法が完成したので、数十台以上を対象とす
    る集中制御法の開発をすすめる必要がある。
 (2)貯熱方法に多少の問題(放熱が大きい)点があるが、改善は用意である。

12.次年度の具体的計画
 (1)数十台以上の風力発熱を対象とする制御方式(電磁ブレーキ方式)の開発を実施し、本研究
   を完了する。
 (2)風力発熱に対応する効率のよい熱利用法の研究成果をとりまとめ総合検討を実施する。

1.風の特性

 
図1 札幌と千歳の寒候期の風配置図

表1 月並びに年平均風速
  月
地名
10 11 12 全年 統計
年数
札 幌 2.3 2.5 3.0 3.7 3.8 3.1 3.0 2.8 2.7 2.4 2.6 2.3 2.8 10
千 歳 3.0 3.3 4.0 4.9 5.1 4.5 4.3 4.0 3.7 3.3 3.3 2.9 3.9 10
岩見沢 3.3 3.5 3.6 3.8 3.9 3.1 2.9 2.8 2.8 2.8 3.3 3.1 3.2 10
室 蘭 6.5 6.1 5.4 4.9 4.7 4.2 3.8 3.6 4.3 4.6 6.0 6.5 5.0 10
寿 都 7.1 7.1 6.6 6.6 6.6 5.8 5.7 5.6 5.4 5.3 6.2 6.5 6.2 10


図2 羊ヶ丘における風向別の風速の高度分布


図3 羊ヶ丘における風向、高度別乱流強度


図4 羊ヶ丘における平均風速のフェービックファクター
 :10分平均の3乗
 :10分間の瞬時の3乗の平均

2.発熱の原理

3.出力と発熱効率の計算


北海道、浜頓別町営の国民宿舎の風呂に給湯している実用化第1号機
(白鳥1号機、1982,12)