1.課題の分類 牛 育種
2.研究課題名 育成期の外貌表型値による乳用後継
        雌牛の予備選抜に関する試験
3.期   間 昭和50〜57
4.担   当 新得畜試 乳牛科
5.予算区分  道  単
6.協力分担

7.目  的
  泌乳能力と育成牛の発育及び外貌表型との遺伝的な相関々係を把握し後継雌牛の
 早期選抜を検討する。

8.試験研究方法
 Ⅰ.北海道における乳用後継牛選抜の実態とその背景(50〜52)
  −アンケート調査成績−(昭和53年度北海道農業試験成績検討会議指導参考事項)
 Ⅱ.育成時の外貌表型値による予備選抜の効果(53〜57)
  1)乳牛の体格に対する主成分々析
  2)乳牛の体格の遺伝パラメータの推定
  3)乳牛の体格による泌乳能力の推定

9.主要成果の概要
 1)乳牛の体格に対する主成分々析
  従来の12部位の計測値による牛体格の説明度合は、更に14部位を加えた26部位に
 よっても上昇しなかった。各主成分と初産泌乳能力とのかかわりは、分娩前後でわ
 ずかに鋭角さとの関連が認められた。
 2)乳牛の体格の遺伝パラメータの推定
  初産牛の場合・分娩前後での遺伝パラメータの様相は変化する。特に、早期予備
 選抜指標としては、腹深、腰深、腰角巾、尻長、管囲、胸囲、腰角巾・腹深の体長
 比、腰深の体長比、腹深・腰深の胸深比、腰角巾の尻長比及び寛巾の腰角巾比に着
 目する必要が認められた。
 3)乳牛の体格による泌乳能力の推定
  乳牛を育成期の体格で、その泌乳能力に関して予備選抜することは、いかに客観
 的に体格を把握することができるかにかかっている。しかし、体格による泌乳能力
 推定は、最大信頼度62.56%であった。
 なお、推定された予測式を用いて推定される305日実乳量は、12か月齢時で危険率
 37.44%、部分記録を用いた推定乳量は18か月齢時で危険率38.78%、補正乳量では18
 か月齢時で危険率、39.21%であった。

10.主要成果の具体的数字
 ・305日乳量の予測式(12か月齢時の体格による)
  Y305D:12mo=59.79X4+67.95X19+313.81X5+50.06X7+165.42X15+177.89X2
          192.87X11+116.62X13−33.79X20−19393.10
 ・補正乳量の予測式(18か月齢時体格による)
  YAD:18mo=−94.05X8+61.11X10+5863.90X3+41.53X22−7528.22X12−1825.88Xl
         -67.59Xl4+34.68X18+242659.00
 ・部分記録による推定乳量の予測式(120日間記録は6か月齢時、240日間記録は18
 か月齢時体格による)
  Y120D:6mo=157.62X2-56.46Xl7+141.90X9-75.69X22−8.44X21−47.04X10
          14.26X6+140.36X3+1303.82
  Y240D:18mo=7.56X6-82.07X8+250.71X3+20.01X22−86.37X17−130.32X11+
          112.89X16+8214.53
ただし
 X1:体   高    X2:腰 角 巾     X3:寛   巾     X4:胸    囲
 X5:管   囲    X6:体    重     X7:トップライン長   X8:腰    長
 X9:腰   深    X10:頭   深     X11:十字部高/体高 X12:寛巾/体高
 X13:腰深/体 高  X14:十字部高/体長 X15:胸 深/体 長  X16:腰深/体長
 X17:膣高/体長   X18:腰角巾/尻長  X19:瞳巾/尻長    X20:尻深/尻長
 X21:肩巾/坐骨巾 X22:仙 長/トップライン長

11.今後の問題点
  試験期間が5か年間と限られた中で、各年次内生産頭数が、30頭前後と少なく、
 種雄牛別娘牛の頭数及び分娩季節の偏りも極めて大きかった。
 したがって、さらに多量で、偏りの要因解析の可能な記録により信頼度を高める
 必要がある。

12.成果の取扱い(普及指導上の注意事項)
 1)牛体の評価には,各月齢における全体的把握が必要である。特に泌乳能力とかか
 わりで見る場合、牛群内での相対的比較が必要である。すなわち、断片的推測を
 さけることが望ましい。
 2)特に、栄養状態等の環境に影響され易い部位の測定には、牛群の状況を適切に
 把握する必要があり、月齢による極端な変化に注意を要する。
 3)本試験の泌乳能力予測式推定には、初受胎年齢、次産次受胎の有無又は年齢、
 牛群特有の環境要因等の非遺伝的解析は行っていない。
 したがって、予測式の信頼度も最大で62.56%にとどまったことも考慮し、若齢時
 体格による予備的選抜指標として、牛群内での、ある月齢での順位付けを目的と
 して用いることが望ましい。