【指導参考事項】
1.課題の分類
2.研究課題名  多雨多湿期における乾草のアンモニヤ処理調製貯蔵法
3.期  間  昭54〜60(別枠)
4.担  当  北農試、草開発一部、畜産部
        滝川畜試
        道農業改良課
5.予  算  別枠(北農試)
6.協力分担

7.目  的
 多雨多湿で時には異常な低温に見舞われる北海道の気象条件下で、良質乾草を調製することはきわめて困難である。最近、アンモニヤの殺菌力を利用して乾草を調製する方法がアメリカで発表されたが、実際の方法についてはほとんど明らかでないので実施した。

8.試験研究方法
 高水分乾草をスタック状に堆積してビニール被覆し、太陽熱を利用して水分を蒸散させるという物理的現象が含まれるので、牧草の種類やスタックの大きさならびに水分含量などによって結果が異なる。従って、試験例を重ねて方法を策定することが重要であり、場内試験と現地試験を並行して実施した。

9.試験結果の概要
 1.処理期間の効果(北農試、草開発一部):アソモニヤ処理後短期間で夏期高温時に密封を開封すると、高水分の場合は発熱することがある。
 2.実用規模での予備試験(北農試、草開発一部):ビッグベールの場合は積み上げずにラインに並べた方が良い。ビッグベールの中心まではアンモニアが侵入しない。コンパクトベールの場合も含めて、水分は35%ぐらいまでとし、下敷きビニールを敷かずに、蒸発した水分を地中に浸透させ、密閉を完全にして秋まで開封しないことである。
 3.添加量の効果(北農試、草開発一部):水分含量等に応じて添加量は1〜2%とする。2%の場合はアルカリ処理の効果も顕著に起る。
 4.乳牛に対する給与効果(北農試、畜産部):アンモニヤ処理乾草の嗜好性が高かった。
 5.微生物の殺菌効果と窒素出納(滝川畜試):好気性細菌、カビ、蛋白分解菌、大腸菌群の生育が著しく抑制され、消化率と窒素の蓄積量が顕著に高くなった。
 6.現地試験結果(道農業改良課):特別な過誤や過信その他の事故がなければ、失敗する懸念はない。
  結論:乾燥した場所に火山灰などを敷いて地平の水分の蒸散をしゃ断し、丸太などを用いたスノコの上に水分35%前後にまで予乾した半乾草をベールして、コンパクトベールの場合はストックとし、ビックベールの場合はラインとしてビニールをかぶせてすそを完全に密閉し、水分含量に応じてアンモニヤを1〜2%添加し、秋遅くまで気密を保つようにする。

10.主要成果の具体的図表
 スタック内の乾燥の温度とアンモニヤガス濃度(試験3のExp2)
項目 期日 2%添加 1%添加 0.5%添加 外気温
備考
表層 中心部 表層 中心部 表層 中心部


9/22 68 40 42 28 41 30   アルファルファとオーチ
ャードグラスの2番草で
水分32.5%のコンパクト
ベールそれぞれ108個の
堆積
/24 27 20 24 20 24 21 21
/26 44 21 32 24 27 24 24
10/8 60 16 40 13 20 15 23
/14 30 15 26 13 15 12 15
11/21 11 7 9 7 5 4 8
NH3

9/21 12% - -   9月21日注入
9/22 3% 0.21% 660ppm  
11/21 270ppm 10ppm 0 8

 飼料成分、消化率、可消化養分含有率(試験3のExp2)
処理 飼料成分(乾物中%) 消化率 可消化養分
水分 蛋白 脂肪 NFE 繊維 灰分 乾物 蛋白 脂肪 NFE 繊維 DCP TDN
無処理 16.7 14.6 2.2 39.2 33.0 10.0 50.8 62.6 36.0 50.6 49.5 9.2 47.7
NH30.5% 17.2 17.1 2.5 38.3 34.0 8.1 56.8 64.6 55.4 56.2 57.0 11.0 55.1
NH31.0% 15.5 18.2 2.2 38.0 33.8 7.8 59.0 59.8 56.2 59.3 55.5 12.7 56.8
NH32.0% 17.8 20.4 2.4 37.1 30.9 9.2 62.1 68.5 47.7 61.6 64.1 14.0 59.2

 窒素出納(試験5)
  摂取量 排泄量 蓄積量 蓄積率
尿
(mg/Kg・日) (%)
対照乾草給与 236A 168A 105A 273A -36.5A -15.3A
処理乾草給与 614B 285B 272 557B 56.5B 9.2B

11.今後の問題点
 草種・水分・規模などが異なる現地試験を今後も継続する必要がある。
 気象条件の変化に応じて、臨機応変に対処できるアンモニアの供給体制をつくることが重要である。

12.指導上の注意事項
(1)材料は30〜35%程度まで低下させる必要がある。
(2)アンモニアボンベの取扱いは、取扱資格者の指導を受け、必ず屋外で行い、逆にしての注入はしないこと。