【指導参考事項】(昭和53〜58年)
天北地域における飼料用麦類の有効性

道立天北農試 作物科・草地科

目  的
 飼料用麦類について、天北地域の草地跡における適応性と栽培特性を検討し、ならびに栄養価を査定して、草地更新時導入栽培上の資とする。

試験方法
(1)天北地域における飼料用麦類導入に関する試験(昭和53〜58年)
 ア、麦類および品種選定試験          麦4作物の品種比較
 イ、えん麦、大麦の草地跡導入栽培法試験  播種量、播種法、施肥量
 ウ、現地適応試験                 麦4作物の比較試験
(2)サイレージ用飼料作物の飼料価値の査定とその調製利用に関する試験
 ア、えん麦と大麦の熟期別栄養価の査定
 イ、えん麦と大麦のホールクロップサイレージの調製利用

試験成果の概要
 成果の概要
(1)えん麦は子実重が400kg/10a、乳熟〜糊熟期の乾総重が850〜950Kg/10a。2条大麦は子実重が380kg/10a、乳熟〜糊熟期乾総重が800〜900kg/10aであった。
両麦の子実重は畑地帯に比べて同程度で、多収であることから、えん麦と2条大麦を選定し、天北地域一円に適応するものと判断した。
(2)播種量は畑作地帯の標準と同様で、多条播でえん麦が255粒/㎡、2条大麦が340粒。散播の場合は25%程度増量する。
(3)麦類の施肥量については、えん麦、2条大麦ともに10a当り3要素が7-13-7で、堆肥2t/10a前後が適量と思われた。
(4)可消化乾物(DDM)収量はえん麦で乳熟〜糊熟期、2条大麦で糊熟〜黄熟初期が高い値を示した。しかし稈部のDDM含有率の低下が著しいので全体のDDM含有率は漸減傾向を示した。
(5)ホールクロップサイレージの仕上がり品質はえん麦が乳熟〜糊熟初期、2条大麦では糊熟〜黄熟初期が良好であった。このサイレージをホル去勢牛を用い、乾草の制限給与下で採食量を調査した結果、えん麦が約5Kg/日、大麦では45〜4.9Kg/日の乾物摂取量を示した。
(6)仕上りの安定性や2次発酵の危険性等を考慮すると、麦類のホールクロップサイレージ調製時期は糊熟期が適当と考えられた。
 以上の結果から、えん麦と2条大麦は天北地域における草地更新時の導入作物として適応性が高いものと判断された。

主要成果の具体的データー
表1 麦類比較(場内55、58年4ケ年平均)
項目
/麦類
子実
+稈
子実重 病害 倒伏
秋小 844 269 冬枯サビ 20
春小 672 262 赤カビ 36
えん麦 978 412 黒穂 45
大麦 907 419 - 27

表2 麦類と牧草、とうもろこしの収量比較(54〜58年5ケ年平均)
  乾物総重(kg/10a) 子実又は雌穂重
チモシー コーン 大麦A 大麦B えん麦A えん麦B コーン 大麦 えん麦
平均収量 783 742 872 902 864 993 299 398 417
SD 247 257 128 186 121 107 186 103 105
注;Aは乳熟期、Bは成熟期総量、麦類は品種、栽培の平均
  チモシー、とうもろこしは作況値

表3 えん麦の栽培試験成績
  品種 N用量 P用量 播種量
オホーツク モイワ 10 7 25.2 12.6 340 255
乳熟期乾総重 769 803 814 759 797 775 831 742
糊熟期乾総重 956 1029 996 989 980 1005 983 1002
子実重 423 374 405 393 413 385 394 404
倒伏率 7.6 40.2 26.8 20.9 25.1 22.7 24.5 23.3

表4 大麦「ほしまさり」の施肥量・播種量試験
   (53〜55年、57年4ヶ月平均)
  播種量(粒/㎡) 施肥量(kg/10a)
255 340 425 少肥 中肥 多肥
乳熟期乾総重 732 780 762 659 785 830
子実年 408 400 411 368 415 438
倒伏年 5.7 9.2 10.5 0.4 4.3 20.5


図1 熟期別N用量およびP用量の反応(58年)
   P1 12.6kg-10a
   P2 18.9kg-10a
   P3 25.2kg-10a

表5 麦類の飼料成分と採食性
麦類 熟期 DM
(%)
原料草の乾物中組成(%) サイレージのDM
摂取量(kg/日)
サイレージ
評点
粗蛋白 NFE 粗せんい DDM
えん麦 乳熟 28.6 8.5 56.3 26.5 55.9 5.2(55.7) 89
糊熟 36.4 8.1 55.7 26.5 55.4 5.0(49.8) 89
大麦 糊熟 35.1 7.6 59.7 25.5 56.2 4.5(55.6) 99
黄初 40.1 7.3 58.0 25.8 55.7 4.9(53.7) 100
注)摂取量の( )内数値は全摂取量に対する麦類の割合

普及指導上の注意事項
 (1)栽培適応地帯は天北鉱質土壌であるが当面はとうもろこし栽培不安定地帯を中心とする。
 (2)草地跡導入栽培の耕起時期や土改資材量等はとうもろこし、てん菜に準拠する。
 (3)施肥は北海道施肥標準に準拠する。