【普及奨励事項】
「ゆきひかり」の栽培適地拡大に関する参考成績書(道南南部地域)

摘録
1.ゆきひかりの特性概要
品種名 ゆきひかり 組合せ (北海230号×巴まさり)×空育99号
特性 長所
1.良質、良食味
2.障害型耐冷性が強い
短所
1.耐倒伏性が劣る
2.登熟性がやや劣る
採用地帯と
普及見込面積
渡島・桧山南部   1,500ha
品種名
/形質
育成地 道南農業試験場
ゆきひかり 対象マツマエ ゆきひかり 対象マツマエ
早晩生 中の早 晩の中 中の早 晩の中
草型 偏穂数 偏穂数 偏穂数 偏穂数
出穂期 8月8日 8月15日 8月7日 8月12日
成熟期 9月19日 9月28日 9月16日 9月22日
登熟日数 46日 48日 43日 46日
稈長 65cm 68cm 71cm 67cm
穂長 18.4cm 16.9cm 17.4cm 16.4cm
芒性 559本/㎡ 520本/㎡ 537本/㎡ 498本/㎡
ふ先色 黄白 淡褐 黄白 淡褐
脱粒性
耐倒伏性
耐冷性(障害) や強 中〜や強
葉いもち耐病性 や弱
穂いもち耐病性 中〜や強 中〜や強 中〜や強
玄米重(a当) 47.0kg 46.8kg 48.2kg 48.8kg
玄米千粒重20.7g22.2g20.6g22.8g
玄米品質 上中下 上下上 上下上 上下
玄米等級 2中上 2下 2中下 2中
食味 上中 中上 上中 中上
食味特性(1) 20.7 22.8 18.2 21.2
   〃  (2) 501 390 627 579
調査地 北海道立中央農試稲作部(岩見沢市) 北海道立道南農試(大野町)
調査年次 1982〜1985年の4ヶ年 中菌・標肥 1982〜1985年の4ヶ年 稚菌(中苗)標肥
注1)食味特性(1)アミロース含量(2)アミノグラムの最高粘度 稲作部の値は1982〜1985年の平均値。道南農試の値は1984年、1985年の平均値
 2)成熟期、登熟日数は1982〜1985年中、1983年を除いた3ヶ年の平均値
 3)道南農試の耐冷性並びに耐病性の成績は1984、1985年の2ヶ年の平均値

2.ゆきひかりの特記すべき特徴
 中生・良質・良食味である。「キタヒカリ」と比較すると、出穂期は2〜3日早くまた、「マツマエ」より5日早く道南南部地域では、もっとも熟期が早い群に属する。玄米品質は「キタヒカリ」並であるが、食味は上回り、「巴まさり」に匹敵する。障害型耐冷性は中生種でもっとも強く「みちこがね」を上回る。しかし耐倒伏性がやや劣り、登熟性がやや劣る欠点がある。

3.栽培地域を拡大する理由
 現在渡島・桧山南部における水稲作付面積は、7,001haである。このうち晩生種の「マツマエ」、「巴まさり」の2品種が、約90%を占めているが、「マツマエ」は倒伏に強く、多肥栽培の傾向にあり、かつ収量性が高いので、一品種で約70%に達している。良質・良食味品種の作付を目指す産米改良の立場から、食味に劣る「マツマエ」の高率な作付は望ましくなく、さらに収穫作業が長期化して刈り遅れによる品質低下をまねいている。また、晩生の早で良食味の「しまひかり」は耐冷性が劣り、年次間の安定性が低く、栽培面積の拡大はあまり期待できない。
 「ゆきひかり」は出穂期および成熟期ともに「マツマエ」より早い中生種であり、収量性は「マツマエ」よりやや劣るが、耐冷性が強いので、冷害年における安定性が高いと考えられる。食味は現在の北海道の基幹品種でもっともすぐれており、2類の「巴まさり」に匹敵する。
 渡島・桧山南部における産米改良および冷害年における安全確収の立場から「ゆきひかり」を「マツマエ」の一部に置き代えて栽培したい。現在「ゆきひかり」は1984年から道央部の優良品種に認定されている。

注1.渡島・桧山南部の作付面積7,001haのうち4,965haが「マツマエ」でこの30%に当たる面積に普及予定。
 2.1985年の栽培適地は、空知、石狩、後志、日高、胆振、上川・留萌中南部渡島・桧山北部