【普及奨励事項】
1 課題の分類  分類番号 整理番号
2 場 所 名  北海道農業試験場 北海道立中央農業試験場 農業改良課
3 新品種名  リンゴ「つがる」

4 来   歴
(1)昭和5年に青森県りんご試験場が、「ゴールデン・デリシャス」の交配実生4個体より選抜したが、花粉親は不明である。昭和16年に初結実し、昭和18年に選抜された。昭和45年に「青り2号」の仮名がつけられ、昭和50年に農産種苗法により正式に「つがる」として名称登録がなされた。
(2)育成者 青森県りんご試験場

5 特性の概要
(1)樹性 樹勢は中位で、樹姿は若木では直立性であるが、樹齢が進むにしたがって開張性となる。結果枝は下垂しやすく、側枝の発生が少ない。枝梢の太さは中位、葉の形状は長楕円形で先端は尖っており、鈍きょ歯である。花色は蕾が風船状までは濃桃色で、満開時には淡桃色である。
(2)生育性 発芽期〜落花期までの生育相はほぼ「ゴールデン・デリシャス」並に推移する。また「祝」に比べ、発芽期〜展葉期までは同様であるが、開花期以降は2〜3日遅い。
(3)結果性 結実樹齢に達するのが早く、花芽の看生は「ゴールデン・デリシャス」よりも幾分劣るが、「祝」より良い。花芽は長果枝に多く着生し、また、えき花芽の着生が多い。
(4)果実 大きさは250g前後で大きく、果形は長円形で玉揃いは良好である。果皮色は黄緑地に濃赤色の太い縞が入る。果肉の色は黄白で、硬さ・肉質は中位である。果汁は多く、糖度が14%前後、酸度が0.4g/100mLと甘味が多く微酸で、甘酸適和であり、この時期の品種ではきわめて食味が良好である。完熟すると僅かに蜜が入る。
(5)熟期 9月下旬〜10月上旬で、「祝」より遅く、「旭」より10日早い。
(6)生産力 この時期に本道で収穫される品種としては生産力は最も高く、「祝」、「旭」に比べかなり収量が多い。
(7)貯蔵性及ぴ適食期 収穫直後から適食期であり、貯蔵性は普通貯蔵で約1ケ月間ある。貯蔵中、果皮面に脂質の発生がある。
(8)生理落果 早期落果は少なく栽培上特に問題はないが、後期落果は収穫期が近くなるにつれて多くなるため、落果防止剤散布が必要である。
(9)耐病虫性 斑点落葉病に対して強い方であり、他の病害虫に対しても一般栽培で特に問題はない。
(10)その他 花粉稔性率が高く、受粉樹として利用価値が高い。

6 試験成績概要
第1表 生育相、収量及び樹体生育

品種名
(60年度樹令)
台木 年次 生育相(月・日) 採収日
(月・日)
1樹当
積算収量
(kg)
樹体生育(60年度)
発芽
展葉
開花
満開
落花
幹周
(cm)
樹高
(cm)
樹幅
(cm)


つがる(12) ミツバ 55〜60 4.28 5.8 5.26 5.31 6.6 10.2 58.5
(9年生)
55.4 478 665
祝(16) ミツバ 55〜60 4.28 5.6 5.25 5.29 6.3 9.17 56.0
(11年生)
66.2 380 619




つがる(9) M26 55〜60 4.29 5.11 5.28 6.4 6.7 10.3 47.1 20.6 395 320
つがる(11) M7 55〜60 4.28 5.10 5.26 6.1 6.6 10.3 106.7 33.0 470 385
祝(11) M26 55〜60 4.28 5.10 5.26 6.1 6.5 9.16 15.4 20.7 250 168

つがる(6) M26 平年 4.24 4.27 5.19 5.25 5.31 10.3 50.5 27.5 418 385
旭(18) マルバ 平年 4.24 5.3 5.20 5.24 5.29 9.25 216.0 96.0 500 720

つがる(10) MM106 平年 5.3 5.12 5.29 6.4 6.9 10.3
(60年)
47.1 33.8 460 395
旭(8) MM106 平年 4.29 5.7 5.26 5.31 6.5 10.11 28.4 22.4 370 285


つがる(6) M7 60 4.25 - 5.22 5.27 6.7 10.3 13.0 18.4 334 280
旭(7) M7 60 4.25 5.3 5.18 5.23 6.3 10.5 2.7 20.2 322 310

第2表 果実形質

品種名 台木 年度 調査果
一果重
(g)
着色
(0〜10)
硬度
(ポンド)
糖度
(%)
酸度
(g/100mL)


つがる ミツバ 55〜60 234 7.3 14.0 13.9 0.38
ミツバ 55〜60 187 2.8 14.5 12.3 0.53
中央
農試
つがる M26 55〜60 243 8.9 15.4 14.2 0.41
つがる M7 55〜60 244 8.0 14.6 13.3 0.35
M26 55〜60 200 5.4 15.0 13.7 0.55
M26 58〜60 214 8.8 13.1 13.1 0.93

つがる M26 60 290 - 10.4 12.5 0.34
マルバ 60 213 - 8.9 11.8 0.84

つがる MM106 60 203 - 14.4 12.6 0.35
MM106 60 227 - 8.8 11.7 0.81


つがる M7 60 242 - 12.7 14.2 0.51
M26 60 253 - 10.8 13.4 0.95

7 普及対象地域及ぴ普及見込み面積
 北海道一円、全栽培面積の20%、400ha

8 保有種苗
 道内の栽培面積の約7%(154ha)が栽植されており、増殖用種苗は十分ある。

9 栽培上の注意
(1)無袋栽培を基本とする。
(2)結果母枝は側枝が出にくく裸枝になりやすいので、整枝せん定に留意する。
(3)後期落果が多いので、落果防止剤の散布を行なう(指導参考事項として普及済み)。
(4)その他はリンゴ一般栽培に準ずる。