【普及奨励事項】
1.課題の分類  分類番号  整理番号
2.場 所 名   北海道立北見農業試験場 北海道立中央農業試験場
3.新品種候補名  「せきほく」−栽培適応地域の拡大

4.適応地域を拡大する理由
 「せきほく」は、乾腐病に対して強く、高貯蔵性であるとともに安定した収量性を示すことから、昭和59年に網走、十勝地方の道東地方に適した奨励品種になった。
 本品種は、道東地方においてはやや晩生に属したことから、同地方でほ栽培上の注意事項として根切り処理を行うことを前提とした。しかし、石狩、空知地方などの道央地方では、根切り処理が普及されていないことから本品種を同地方において普及する事は困難であると考えられていた。しかし、昭和58年からの中央農試などの試験から、本品種が同地方で栽培されている「そらち黄」より早生であるため、根切り処理が不必要である事から普及しうる事が明らかとなった。
 「せきほく」の道央地方における普及によって同地方における高貯蔵性Fl品種の多様化が促進されるものと期待される。

5.特性の概要
(1)種子特性:千粒重は「フラヌイ」と差はなく、発芽勢、率とも差はない。苗床での発芽適温、苗の生育状況も「フラヌイ」と差異はない。
(2)葉部形質:移植後の初期生育は旺盛で、草姿は直立し、6月以降の葉部の生育最盛期においても葉折れしにくい。葉色、葉鞘径は「フラヌイ」と同程度である。「そらち黄」で認められる葉のねじれ、波うちは皆無に近い。
(3)早晩性:生育初期の肥大性が旺盛なため、地表への球上がりが早く、育成地では「フラヌイ」より5日程度早い肥大期を示すが、倒伏期、枯葉期は「フラヌイ」より7日程度遅くやや晩生に属する。道央地方では、「そらち黄」より倒伏期が3日程度早く「フラヌイ」と同様に中生に属する。
(4)収量性:球肥大が旺盛で、肥大期間が長いこともあり、平均一球重は「フラヌイ」より重いが、「そらち黄」より軽くなる。一方、規格内収量は平均して「フラヌイ」より15%程度多収となるが、「そらち黄」とは同程度である。
(5)球品質:規格内率は「そらち黄」より高く「フラヌイ」程度である。球の形状は「そらち黄」よりやや扁平で、「フラヌイ」程度の球形指数を示す。外皮の厚さは「そらち黄」より厚く、皮むけしにくい。球の揃いは「そらち黄」より良好で、「フラヌイ」程度である。皮色は「フラヌイ」より濃い黄銅色を示す。
(6)貯蔵性:貯蔵中の萌芽は遅く、発根、茎盤突出も「フラヌイ」より少なく、高貯蔵性を示す。
(7)耐病性:乾腐病に対しては、「そらち黄」より強く、抵抗性品種「フラヌイ」程度である。生育中の白斑葉枯れ病や貯蔵中の灰色腐敗病に対する抵抗性は、「フラヌイ」と同程度である。

6.試験成績
「フラヌイ」との比較
試験場所 年次 早晩性の比較 耐病性比較 *
規格
内球

(kg/a)
収量性の比較 貯蔵性の比較
肥大
期(日)
倒伏
期(日)
枯葉
期(日)
乾腐
病(%)
その
他(%)
同左
総収
量比
平均
一球
重(g)
健全*
率(%)
比較
(%)
北見農試
(育成地)
56 -2 +12 +8 +2.5 +4.7 531 102 108 +39 87.8 -1.0
57 -6 +6 +2 +0.7 -0.8 673 115 117 +34 82.0 +33.9
58 -8 +8 +11 -1.7 -2.3 755 122 124 +43 79.8 +3.8
59 -5 +5 +6 +0.9 0 539 126 124 +41 71.8 13.6
60 -7 +4 +7 +1.2 0 557 111 111 +21    
_
-6 +7 +7 +0.7 +0.3 611 115 117 +36 80.4 12.6
中央農試 58   +2 0 0 -0.8 591 131 119 +35 99.0 +20.0
59   +2 -2 -2.7 -1.5 369 108 105 0 90.9 -7.1
60   -1 -4 -0.2 +0.5 370 103 99 +3    
_
  +1 -2 -1.0 -0.6 443 115 108 +13 95.0 +6.5
岩見沢市 58       0 -0.4 693 127 118 +31    
59   +10   +3.6 +0.4 405 103 98 +14 60.0 -16.0
60       -0.5 +0.4 554 135 142 +54    
_
      +1.1 +0.2 551 122 118 +33    
札幌市 60 -7 +6 -1 +3.3 +0.7 580 98 100 +29    
富良野市 60       -2.6 +0.7 751 98 104 +3    
−参考−
北見市** -2 +6   -0.2 -0.1 603 108 108 +13 90.4 +5.7
留辺蘂町** -2 +3   -0.3 -1.5 587 118 115 +23 95.9 +0.8
常呂町***   +7   +0.3 -1.0 457 108 107 +5    
芽室町** 0 +3 0 +0.5 -0.2 562 127 131 +12    
*規格内球重および貯蔵後健全率は「せきほく」の実測値
**昭和57〜60年の4ヵ年平均
***昭和57,58,60年の3ヵ年平均

7.普及対象地域(地域・拡大)および普及見込面積
  道央地方のタマネギ栽培地帯1000ha

8.保有種子量
  F1種子 20Kg

9.栽培上の注意
  「フラヌイ」の栽培法に準ずる。