【普及奨励事項】
1 課題の分類  分類番号 整理番号
2 場 所 名  北海道立中央農業試験場 園芸部花きそ菜科
3 新品種候補系統名  花ユリ「5226」

4 育成経過
(1)育種目標  本道の特徴を生かすべく、切花用としての特性を持ち、晩生(7月下旬〜8月に開花する)であること。
(2)来  歴  昭和48年に「仁王」×「デスチニー」よりの「4737」を母とし「664」(栗山町藤島氏育成系統)を父として交配し、181の実生個体より、昭和51年に選抜したものである。
(3)試験経過  昭和52年に系統番号「5226」を付し、増殖し、昭和54年より中央農試において、また、昭和59年より道南農業試験場、旭川市園芸センターの2場所を加えて、生育、開花特性等の検討をおこなってきた。

5 特性の概要
(1)早晩性  萌芽は「岩内黄金」、「金扇」と同程度で、その後の生育は旺盛である。出蕾期は「金扇」より6日程度遅く、蕾着色期、開花期は「金扇」より12〜13日遅く、極晩生種に属する。
(2)花特性  開花の向きは上方からやや斜上方(受咲き)である。花弁色は「金扇」に似た鮮明な黄色で外花被がやや反転する。花径は「金扇」よりやや小さいが、一花茎あたり花蕾数は「岩内黄金」より明らかに多く、「金扇」に比べてもやや多い。
(3)草 姿  草丈は80〜90㎝で「金扇」より高性で葉数も多い。葉幅、葉長も「金扇」より大でややテリ葉である。また、止め葉下節間長が「金扇」より短かく、草姿のバランスがよい。
(4)増殖効率  1株当り木子数および木子平均重とも明らかに「岩内黄金」、「金扇」より大きく、これらの品種より増殖効率は高いと考えられる。
(5)病 害  一般栽培において葉枯れ症状は「岩内黄金」より明らかに少なく、「金扇」と同程度で実用上問題ないものと考えられる。

6 試験成績概要
(1)育成地における試験成績(54〜60年7カ年平均値)
 ア 生育季節および球重調査
品種または
系統名
萌芽期
(月・日)
出蕾期
(月・日)
蕾着色希
(月・日)
開花期
(月・日)
開花終
(月・日)
りん茎重
(g)
分球数
(個)
1株当
木子数
(個)
同左
平均重
(g)
5226 4.26 6.17 7.19 7.24 7.30 66 2.2 5.5 1.8
岩内黄金 4.26 5.30 6.23 6.28 7.4 50 2.5 2.1 1.0
金扇 4.25 6.11 7.6 7.12 7.18 73 1.8 1.8 0.3

 イ 開花期における生育調査
品種または
系統名
草丈(全長)
(cm)
茎長
(cm)
茎径
(mm)
節間長*(cm) 葉数
(枚)
葉の大きさ(cm) 葉枯れの
程度
中間部 止め葉下 長さ
5226 87 69 7.1 0.6 4.0 98 1.7 10.1 無〜微
岩内黄金 48 38 6.4 0.6 2.3 64 1.4 6.7 ヤ多〜多
金扇 68 51 7.3 0.5 9.5 77 1.2 8.8 無〜微
*:58〜60年 3カ年平均値

 ウ 花の特性調査
品種または
系統名
花の向き 花色
(花弁の地色)
花径
(cm)
内花被の大きさ*(cm) 外花被の大きさ*(cm) 花梗長
(cm)
花蕾数
(個)
長さ 長さ
5226 上〜ヤ斜 黄〜淡黄 15.9 3.8 10.5 2.6 10.6 7.3 5.9
岩内黄金 ヤ斜〜横 黄〜濃黄 14.9 4.2 8.9 3.0 8.9 6.3 1.7
金扇 上〜ヤ斜 黄〜淡黄 16.6 4.3 10.4 2.9 10.8 7.8 4.6
*:58〜60年 3カ年平均値

(2)育成地以外における試験成績(59、60年2カ年平均値)
試験場所 品種または
系統名
植付期*
(月・日)
開花期
(月・日)
草丈(全長)
(cm)
節間長(cm) 花径
(cm)
花蕾数
(個)
葉枯れ
の程度
中間部 止め葉下
道南農試 5226 5.1 7.26 62 0.7 4.9 16.2 4.2
金扇 5.1 7.12 58 0.7 6.3 16.9 4.6
旭川市
園芸センター
5226 5.18 7.30 66 0.5 5.1 16.2 6.2 微〜少
金扇 5.18 7.21 58 0.5 7.6 17.1 5.5
*:中央農試で秋植した球を堀上げ、再度植込をした月、日

7 普及対象地域
 露地切花用として全道一円

8 保有種苗
 1年球180球(2〜20g)ほ場で増殖中

9 栽培上の注意
 暑い時期の開花となるので、浅植えとならないよう注意する他、敷わらなどを行い、土壌水分の保持に努める。