【指導参考事項】
1.課題の分類  野菜 流通利用技術
2.研究課題名  グリーンアスパラガスの輸送および貯蔵に関する試験
3.期   間   (昭和58〜60年)
4.担   当   中央農試園芸部加工科
5.予算区分  総合助成
6.協力分担  なし

7.目  的
 グリーンアスパラガスの長距離・長時間輸送における鮮度保持方法を明らかにする。
また、出荷調節のための貯蔵方法を明らかにする。

8.試験研究方法
1)輸送に関する試験
 1.輸送適性に関する試験  〔ア.規格:LL、L、M、S イ.1℃に差圧予冷後5,10,15,20℃に1〜9日〕
 2.輸送性向上に関する試験 〔ア.差圧予冷風温:0.5〜5℃ 風湿:80〜95% 時間:2〜6時間 風量:0.09〜0.19m3 イ.真空予冷 到達圧力:4〜10トール 到着圧力保持時間:10〜35分 排気速度:速、緩プレウエッティング:有、無〕
 3.輸送温度条件に関する試験 〔温度:0、5、10、15、20、30℃および変温  日数:1〜14日〕 
 4.輸送容器・包装・保冷シート・鮮度保持資材に関する試験 〔ア.容器:段ポール箱、発砲スチロール箱、発砲混層段ボール イ.包装:トレー・ラップ、ポリ袋、2軸延伸ポリプロピレン袋(防曇加工品)、ポリスチレンフィルム 保冷資材:畜冷剤、氷 ウ.吸湿紙:有無〕
 5.輸送実験 〔ア.規格:L、M、S イ.頭部開張:無、著〕
2)貯蔵に関する試験
 1.貯蔵適性に関する試験 〔ア.規格:L、M、S イ.頭部開張:無、著〕
 2.貯蔵方法に関する試験 〔ア.温度:1、0、-0.5、-1℃ イ.包装:ポリエチレン袋、エバ袋、2軸延伸ポリプロピレン袋、トレー・ストレッチ、発砲スチロール箱〕

9.結果の概要・要約
(1)輸送に関する試験
 1) LL、LはM、Sよりも萎れにくく先端が傷みにくかった。頭部が開張した若茎は傷みやすかった。
 2) 差圧予冷条件は、風温1〜5℃、風湿95%、風量箱当り毎分O.1〜0.2m3差圧ファン運転時間3〜4時間、が適当と考えられた。
 3) 真空予冷では、切口周辺以外は充分に冷えなかった。プレウエッティングにより冷却がやや早まった。真空予冷は、冷却効率が低く、予冷後の目減りが無予冷よりも大きくなる。5トール・15分処理程度で打ち切り、保冷庫で仕上冷却するとよい。
 4) 無包装・段ポール箱づめの場合の鮮度保持期間は、0℃で7〜14日、5℃で7〜10日、10℃で7日、15℃で4日、20℃で3日であった。予冷終了後の保冷・輸送温度は5℃が最適で、10℃が上限と考えられる。
 5) トレー・ラップ包装および2軸延伸ポリプロピレン袋(防曇加工品)・開封づめは、鮮度保持に有効だった。
 6) 初温7℃のアスパラを発泡スチロール箱につめ、蓄冷剤を入れ、保冷シート内に置くと、周囲温度25℃でも16時間は品温を10℃以下に保つことができた。この場合30時間後の品温は20℃であった。発泡スチロール箱の差圧予冷用通気孔は品温上昇防止のためにはふさぐ必要がある。
 7) 発砲スチロール箱を使用し氷または蓄冷剤を併用すると鮮度保持効果が高まった。
 8) 航空輸送においては、普通のハーフサイズコンテナはしおれが進みやすかった。保冷シートを装着した普通コンテナおよび簡易保冷コンテナは鮮度保持に有効であった。
(2)貯蔵に関する試験
 1)-0.2℃ないし1℃で1ケ月以内の貯蔵ができた。-1℃では凍結し商品性がなくなった。
 2)長期貯蔵においてはしおれ防止のため包装が不可欠である。包装資材はポリプロピレン袋(防曇加工)とエバ袋が適していた。ポリエチレン袋では食味が悪変した。発砲スチロール箱もエバ袋と同等の効果があった。
 3)出庫後常温では品質低下が急速に進むので、長期貯蔵品は低温流通が必要である。

10.主要成果の具体的数字
 保冷条件と品質
 DB:段ボール箱 EPS:発砲スチロール箱
差圧予冷で約7℃まで冷却した後、25℃に2日間放置して品質変化してみた。
保冷条件 項目
シート 容器 畜冷剤 通気孔 しおれ 茎色 先端の
状態
切口の
状態
重量
減少率
DB 4.0 4.8 4.5 4.5 1.0
3.8 4.4 4.6 4.3 1.1
3.3 4.0 4.5 4.3 1.2
3.3 3.9 4.2 4.2 1.5
EPS 3.2 4.5 4.7 4.2 1.0
3.7 5.0 5.0 4.3 0.7
3.3 4.2 4.6 4.1 1.7
4.1 4.9 4.5 4.3 0.5
DB 3.6 4.9 4.7 4.1 4.7
3.4 4.3 4.2 4.0 3.7
3.4 4.3 4.3 4.1 6.7
2.6 3.8 4.3 3.8 5.2
EPS 3.3 4.2 4.1 3.9 3.1
3.7 4.0 4.8 4.6 1.2
2.4 3.6 4.2 3.6 4.4
3.6 4.6 5.0 4.6 0.9
試験開始時の状態を5、最も不良な状態を1として5段階評価
要因 しおれ 茎色 先端の状態 切口の状態 重量減少率 初期品温差
F ρ F ρ F ρ F ρ F ρ F ρ
Aシートの有無 * 9 * 7         * 51 * 55
B容器         * 9     * 11    
C畜冷剤 * 10 * 13         * 4    
D通気孔                 * 22    
A×B     * 10         * 12    
A×C                        
A×D                 * 7    
B×C     * 5             * 9
B×D * 25 * 23 * 23 * 25     * 16
C×D         * 5            
ρ:寄与率

11.今後の問題点
 (1)ドライアイスを利用した低温輸送の実用化
 (2)若茎の輸送性・貯蔵性を高めるための栽培法の確立

12.普及指導上の注意事項
 (1)適期収穫を励し、遠隔地へ輸送するものは最優良品のみにする。
 (2)収穫後はできるだけ低温に保ちただちに予冷する。
 (3)頭部を濡らすと腐敗しやすいので水冷は不適である。