【指導参考事項】
1.課題の分類  野 菜 流通利用技術
2.研究課題名  冬野菜安定供給のための貯蔵法の改善
          (1)キャベツの半凍結貯蔵法
3.期   間  (昭和57〜59年)
4.担   当  中央農試園芸部加工科
5.予算区分  道単
6.協力分担  園芸部花きそ菜科

7.目   的
 キャベツの長期貯蔵条件を明らかにし、氷温、半凍結貯蔵法を検討する。

8.試験研究方法
(1)貯蔵適性に関する試験 ①栽植密度 3333株、2777株/10a ②収穫時期 10月21日、10月28日 ③品種 晩抽理想
(2)長期無包装貯蔵条件に関する試験 ①温度 5℃、1℃ ②湿度 高湿度(95%)、低湿度(85%) ③風速 3m、5m/秒 ④品種 冬風、深みどり、晩抽理想、アーリーポール
(3)氷温貯蔵ならびに半凍結貯蔵に関する試験 ①温度 -3℃以下、-1℃、-0.3℃、1℃ ②包装 0.05mmポリエチレン袋、0.035㎜エバ袋、0.025mmポリプロピレン袋、18㎜厚発泡スチロール箱 ③品種 冬風、晩抽理想、アーリーポール

9.結果の概要・要約
① 不良球の割合は、2777株区のほうが3333株区よりも高く、また、10月21日収穫区よりも10月28日収穫区のほうが高かった。粗植で生育日数を長くすると過熟になり貯蔵性が低下するものと考えられる。
② 5℃では腐敗の進行が早く、長期貯蔵は不可能であった。
③ 無包装貯蔵においては、しおれは相対湿度85%−風速5m区で最も進み、95%−3m区で最も少なかった。腐敗は85%−5m区が最も少なく、95%−3m区が最も進んだ。調整後の歩留まりと結球の緑色程度など品質からみて、無包装での長期貯蔵条件は冬風、晩抽理想とも相対湿度95%、冷却器吹き出しロ風速5mが最適だった。無包装貯蔵ではしおれを防ぐために高湿度に保つ必要があるが、腐敗が進みやすくなるので庫内冷気の循環をよくしなければならないものと考えられる。
④ 無包装貯蔵での貯蔵期間は晩抽理想は2月末まで、冬風は1月末までである。
⑤ -3℃以下では完全に凍結し解凍すると商品性は無くなった。-1℃では半凍結状態になり解凍すると結球は完全にもどった。-0.3℃では凍結は全くみられなかった。冬風は-1℃または-0.3℃では調整後も緑色葉が残り、1℃よりも明らかに鮮度良好であった。アーリーポールは-1℃では緑が濃く品質良好だったが、-0.3℃では白玉化し、1℃では著しく腐敗した。-0.3℃での氷温貯蔵、-1℃での半凍結貯蔵により冬風、深みどり、アーリーボールなどは2月末まで、晩抽理想は3月末まで貯蔵可能である。
⑤ -1℃貯蔵した場合は5℃前後で解凍すれぱよく、4〜7℃の室温でもよい。
⑦ 氷温貯蔵または半凍結貯蔵においてはしおれ防止のため包装が不可欠であり、ポリプロピレン袋またはポリエチレン袋づめが有効であった。

10.主要成果の具体的数字
 温度・包装と解凍後の品質(冬風)  1985年4月4日調査
温度 -1℃
項目
/包装
ポリ
エチ
レン
エバ ポリプ

ピレン
無包
調

しおれ 4.9 4.8 4.9 4.8
腐敗 結球 4.8 4.9 4.8 5
 〃 切口 5 4.6 4.5 5
調

葉色 3.0 3.7 4.0 3.8
病斑 2.7 2.5 3.1 3.1
茎の伸長 3.8 3.8 3.5 3.8
内部変質 4.8 4.8 4.9 4.8
茎の空洞 4.2 3.2 2.7 1.5
総合 2.0 2.3 3.1 3.0
重量減少率(%) 調整前 3.5 4.8 1.7 15.0
調整後 33.7 27.1 22.5 31.4
外葉割合 (開始時) 9.8 9.8 9.8 9.8
項目
/温度
-0.3℃
調

しおれ 5 4.5 5 3.0
腐敗 結球 4.0 4.3 4.4 5
 〃 切口 5 5 5 5
調

葉色 4.3 4.0 4.0 2.7
病斑 3.7 3.4 4.0 2.3
茎の伸長 3.5 3.3 3.5 3.3
内部変質 4.7 4.5 4.0 4.3
茎の空洞 5 5 5 5
総合 3.6 3.3 4.0 1.1
重量減少率(%) 調整前 2.5 7.2 2.8 37.5
調整後 23.2 28.7 21.1 52.1
外葉割合 (開始時) 9.8 9.8 9.8 9.8
温度
/項目
1℃
調

しおれ 4.4 4.6 5 2.9
腐敗 結球 4.2 3.1 3.7 4.3
 〃 切口 5 5 4.9 5
調

葉色 3.3 2.3 3.0 2.4
病斑 4.2 4.0 4.0 3.8
茎の伸長 3.4 3.1 3.4 3.2
内部変質 5 5 5 4.9
茎の空洞 5 5 5 5
総合 3.5 3.5 3.0 2.2
重量減少率(%) 調整前 2.8 6.2 8.0 25.4
調整後 18.7 32.5 22.2 38.4
外葉割合 (開始時) 9.8 9.8 9.8 9.8

貯蔵温度・包装と葉色(アーリーボール)
温度 -1℃ -0.3℃ 1℃
包装
/項目
ポリエ
チレン
エバ ポリエ
チレン
エバ ポリエ
チレン
エバ
L 54.3 59.1 67.0 69.8 70.1 69.8
a -12.2 -11.4 -7.5 -5.5 -2.3 -3.3
b 20.1 20.8 20.1 18.7 15.7 17.1
L×b/|a| 90.0 111.4 201.5 251.5 561.3 401.5
|a|/b 0.608 0.548 0.372 0.296 0.145 0.192
黄化度 167.5 172.9 188.1 196.6 208.2 202.8
√(a2+b2) 23.6 23.7 21.6 19.5 15.9 17.4
測色色差計による測定値
1985年3月14日調査

11.今後の問題点
① 氷温貯蔵、半凍結貯蔵に適した品種の選定
② 大量貯蔵に適した包装方法の確立

12.普及指導上の注意事項
① 温度制御に注意し、過度に凍結させない。
② -1℃または-0.3℃では黒点が発生しやすいので、貯蔵中の品質変化に注意し、出荷時期を適正に決める。