【指導参考事項】(昭和58〜60年)
高級菜豆に対する窒素施肥改善

道立中央農試 化学部 土壌改良第二科  
道立北見農試 土壌肥料科  

目的
 高級菜豆の安定多収技術確立の一環として,高級菜豆に対する施肥法改善について窒素を主体に検討する。

試験方法
A 中央農試
 1.高級菜豆の生育及び窒素集積特性調査(59年,壮瞥町及び農試場内)
   供試作物:大福,虎豆,花豆
 2.窒素施肥改善試験
   供試作物:大福,虎豆
  1)窒素基肥用量試験(59〜60年,壮瞥町及び洞爺村)
     窒素基肥量:0,4,8,12,16(kg/10a)
  2)窒素追肥試験(59〜60年,壮瞥町,洞爺村及び現地圃場)
     窒素追肥量:4,8(㎏/10a)
     追肥時期:A期(手竹期,6月下旬〜7月上旬), B期(開花始,7月中〜下旬)
           C期(開花後1週間,7月末)
B 北見農試
 1.窒素追肥試験(58〜60年,農試場内及び現地圃場)
     供試作物:花豆(大白花),虎豆   窒素追肥量:4,8(㎏/10a)
     追肥時期:A期(は種期,5月下旬),B期(手竹期,6月下旬〜7月上旬)
           C期(開花期,7月下旬〜8月上旬)

試験成果の概要
A 中央農試
 ①高級菜豆の初期生育は緩慢で,開花始における窒素集積量は最大期の20〜30%程度にすぎず,開花後急増し最大窒素集積量は11〜14(㎏/10a)に達した。(図1,図2)
  したがって,高級菜豆においてはこの開花始以降の窒素供給が,個体の維持増大,子実生産の上で重要と思われた。
 ②窒素基肥用量試験の結果窒素基肥量の増加に伴い,莢数が増加し,全般に増収傾向を示したが,出芽率は低下し,N12(㎏/10a)以上では初期生育も劣った。また,大福では虎豆に較べて窒素施肥反応は鈍い傾向がみられた。(表1)
 ③窒素追肥試験の結果,窒素追肥により主として葵数が増加し,増収を示したが,大福では虎豆に比べて増収傾向は低かった。追肥量ではN4(㎏/10a)よりN8(kg/10a)の増収効果が大きかった。追肥時期については,年次により差がみられたが,全般に開花始以前の追肥効果が高く,手竹期と開花始では追肥効果に明確な差はみられなかった。(表2,表3)
B 北見農試
 ①花豆(大白花),虎豆とも窒素追肥による増収効果のあることが認められた。その要因としては窒素追肥により粒重および着莢数の増加が考えられた。(表4,表5)
 ②両品種とも窒素の追肥時期はは種期(5月下旬)および手竹期(6月下旬〜7月上旬)で高い効果がみられ追肥量としては10a当りN4㎏と8kgでほとんど差はみられなかった。
C 総括
 西胆振・北見地域とも高級菜豆に対する窒素追肥効果は認められたが、大福についてはその程度が低かった。追肥量は花豆N4kg/10a程度、虎豆はN4〜8kg/10aとする。追肥時期は手竹期までとする。基肥量はN4kg/10aとする。

主要成果の具体的数字

図1.乾物重推移(59年度、壮瞥町)


図2.窒素集積量の推移(59年度、壮瞥町)

表1 窒素基肥用量試験収量比

N用量
(kg/10a)
60年度
出芽率
(%)
収量比(%)
59年 60年

0 100 92 85
4 95 100
(238)
100
(241)
8 86 98 105
12 77 91 102
16 - 106 -

0 81 73 86
4 81 100
(257)
100
(265)
8 71 110 100
12 54 119 111
16 - 126 -

表2 窒素追肥試験収量比
追肥
時期
追肥量
(kg/10a)
大福 虎豆
59年 60年 59年 60年
対照 - 100
(238)
100
(241)
100
(257)
100
(265)
A 4 103 101 113 102
8 108 96 115 117
B 4 96 104 103 121
8 95 113 115 123
C 4 95 - 103 -
8 99 - 99 -

表3 現地実証試験収量比
    (59〜60年度)
処理 大福 虎豆
無追肥 100
(266)
100
(279)
追肥 106 106
追肥
時期
A 104 111
B 107 103
追肥量
(kg/10a)
4 106 105
8 106 108

B 北見農試
表4 花豆(大白花)に対する窒素
   追肥試験収量比(59〜60年)
追肥
時期
追肥量
(kg/10a)
子実重 粒重 着莢数
対照 - 100
(203)
100
(1264)
100
(33.3)
A 4 114 102 109
8 105 103 107
B 4 112 103 107
8 113 105 108
C 4 105 100 108

表5 虎豆に対する窒素追肥試験
   収量比(58〜60年)
追肥
時期
追肥量
(kg/10a)
子実重 粒重 着莢数
対照 - 100
(196)
100
(602)
100
(438)
A 4 116 108 104
8 110 108 105
B 4 116 109 105
C 4 112 105 101

普及上の注意事項
 燐酸、加里の施肥量は矮性菜豆の施肥標準量に準ずる。