【指導参考事項】(昭和58年〜60年)
  心土破砕の雪上施工

道立中央農試化学部土壌改良第一科  

目  的
 心土破砕は堅密な下層土を破砕して根圏域を拡大する効果を期待することの外に、透水性改善を目的として施工される。特に、水田や転換畑では後者の目的で行われることが多い。
しかし、施工を行うほ場には充分な地耐力が要求されるが、降雨の多い秋期や融雪が遅れた春期には地耐力不足のため施工が不能となることが多い。最近、これら地耐力からの制約をかわして、春季に雪上から心土破砕を施工する工法が開発されたので、この雪上から心土破砕を施工する際に注意すべき事項、期待できる効果の範囲等を明らかにする。

試験研究方法
 試験ほ場:水田(グライ土、8ほ場)……………南幌町
       転換畑(グライ土、泥炭土計2ほ場……………南幌町
 施工の概要:けん引トラクター、湿地型プルクローラトラクター(湿地ブル)重量16t,140馬力 接地圧0.28kg/c㎡
        心土破砕機(農業開発公社製);チゼルウィング幅 50㎝
                           り柱の長さ 80㎝、100cm
                           3連装(り柱間隔 80㎝)
      目標とした心破深;50〜60cm
      施工の時期;58年3月25日、59年4月4〜6日、60年3月23日

試験結果の概要
 1)雪上から心土破砕を行う工法により、表面排水が不良で地体力の小さい軟弱ほ場においても、ほ場表面を傷めずに施工でき、また施工時期の幅も広がった。
 2)3月中旬、4月上旬の雪質(表層30㎝の平均密度が0.4g/cm3前後)で雪上施行を行う場合、圧雪率は50〜60%となり、圧雪状態の密度は0.5〜0.6g/cm3となった。
 3)作業能率は1ha当り1.7〜2.1時間であった。
 4)目標とする心土破砕の深さを60cm、り柱の長さを100㎝とすると、圧雪率から逆算して施工時の積雪深は50〜60㎝の範囲にあることが適当となる。
 5)施工時の土壌硬度とけん引抵抗との関係では、深さ30〜45㎝におけるコーンペネトロメーター支持力が8Kg/c㎡程度以上になるとトラクターの走行停止が生じる場合があることから、本試験に使用した機材(3連装、心破深60㎝目標)ではコーン支持力8Kg/c㎡がけん引可能の限界と考えられる。
 6)作業による雪上面のかく乱は触雪を促進するものの、その効果は無処理に比較して1〜2日融雪日が早まる程度である。
 7)水田において心土破砕による排水効果が期待できるのは、本暗渠が充分に機能している場合であって、暗渠機能が低下している場合にはその効果はあまり期待できない。
 8)転換畑や転換予定水田に対しては畦畔を切って明渠排水路に継いだ心土破砕施工が排水促進に効果的である。

主要成果の具体的データー
①心土破砕施工時の積雪および圧雪の状況
  地点 施工年月日 積雪深 0〜30cm
平均密度
圧雪深 圧雪率 心破深 土壌型

A2 59.4.5 57cm 0.45g/cm3 25cm 44% 68cm グライ土
B2 〃.4.6  65   25 51 51 グライ土
C 〃.4.5 52   22 42 55 グライ土
D 〃.4.6 60   27 45 60 グライ土
H 60.3.22 60 0.41 40 67 50 グライ土


F 59.4.6 37   12 32 68 グライ土
G 60.3.23 56 0.44 35 63 55 泥炭土

②融雪日と表土の含水比の推移、水田
地点 処理 融雪日 表土(0〜10cm)の含水比(%) 暗渠機能*1
4月20日 4.24 4.29 5.7 5.11
A2 対照 4月18日 68 57 47 51  
心破 17 60 50 40 41 44
B2 対照 4.17 54 48 43 (4月29日耕起)
心破 15 55 43 39
C 対照 4.19 - 61 55 57 57 不良
心破 18 - 64 54 56 60
D 対照 4.18 70 60 58 57 58 不良
心破 17 69 60 54 56 56
注1)融雪後の本暗渠排出口からの流量が、毎分50〜100L程度を良、
  ほとんど流出がないものを不良とした。


③施工後のほ場乾燥(地点G,泥炭土転換畑)
 表土(0〜10cm,10〜20cm)

④施工時の土壌硬度(コーンベネトロメーター)
  平均コーン支持力kg/c㎡ 備考
0〜15cm 15〜30 30〜45 45〜60
A 3.1 6.3 5.2 5.1 グライ土
(下層泥炭)
B2 4.0 5.4 8.3 6.0 グライ土(強
粘質)けん引
抵抗大
C 2.0 6.1 4.3 3.6 グライ土
H 1.0 2.8 3.4 4.1 グライ土

指導上の注意事項
 1)積雪深が浅い場合や融雪剤が散布されている状態では、圧雪深が浅くなり、ほ場表面の損傷が考えられるので注意する。
 2)埋木のあるほ場では心土破砕機に引っかかるので、ほ場面を乱す恐れがある。
 3)土壌凍結のない水田、転換畑(秋播小麦作付中の転換畑を除く)に適用する。