【指導参考事項】
1.課題の分類　　稲　作
2.研究課題名　　低コスト米生産総合機械化栽培に関する研究
　　　　　　　　　　　　　−粗選機(水稲・小麦)−
3.期　　間　　昭和59年〜
4.担　　当　　道立中央農試農業機械部
5.予算区分　　道　　単
6.協力分担　　な　　し

7.目　　的
　適期収獲は品質維持上望ましく、コンバイン収穫を行う場合、気象条件、作務状況により共乾施設に夾雑物の多い高水分穀物が多量に持ち込まれることになる。特にワラ・穂切れ、未熟・不稔粒等は水分が高く、このような夾雑物の多い穀物の乾燥では、仕上がり穀物に過乾・未熟乾燥穀粒が混入し品質低下の原因となる。又、高水分夾雑物は穀物の流動性を悪くし、乾燥機への投入・排出トラブルの原因となる他、乾燥目減りによる乾燥機の低効率稼働、乾燥時間の遅延による収穫・乾繰ローテションの乱れなどを誘引する。適期収穫、乾操作業を行い総体的低コスト化を図るには乾燥機への原料張込み時点での夾雑物除去が一つの手段となる。米・麦竪型選別機の性能を明らかにし、施設導入・利用上の参考に供する。

8.試験方法
　1)供試機　　型式:SIGMA　TS-752　[販売会社:ヤンマー農機株式会社]
　2)試験期日　1985.7/30,9/26
　3)試験場所　美唄市中村農場　穀物乾燥施設内
　4)供試材料　普通コンバイン収穫　秋小麦　品種「ホヨシリコムギ」
　　　　　　　　　普通コンバイン収穫　籾品種「キタヒカリ」
　5)調査項目及び要領
　(1)機体調査　　各部仕様、構造機能、風量、電力使用量
　(2)作業精度　　夾雑物混入率を人為的に調製した材料と、小麦、籾の荷受け原料を使用し、
　　　　　　　　　　　流量・風量と夾雑物除去率との関係を調査
　(3)結成分析　　一般組成、水分、粒度

9.結果の概要
　1)構造と特徴
　　内筒(丸目スクリーン　325mm φ)と外筒(長穴目アウタースクリーン465mm φ)の2本の縦軸回転スクリーンドラム部が1対で構成される遠心力利用の穀物選別援である。内筒の内側に流入した穀物は丸目スクリーンで長ワラ、穂切れ等の大夾雑物を分離し、遠心分離される。
　外筒の長穴目スクリーンで穀粒中の土砂、雑草種子などの小夾雑物が遠心分離される。アスピレータ部に送られた穀粒は不稔粒、ふ、塵あい等が風選され、サイクロンで分離回収される。公転、自転の相互作用により、内筒スクリーン面への大夾雑物の張り付き、目詰りはなく外筒スクリーン面には、ブラシが作用し微細な土砂、雑草種子の目詰りを防いでいるのが特徴である。
　2)作業精度
　(1)籾の粗選性能
　　水分30wb%前後の普通コンバイン収穫・荷受け材料を用い処理流量13〜20ton/hで試験を実施した、夾雑物の混入率は0.5〜1.5%程度で未熟粒、不稔粒が比較的多い材料であった。夾雑物除去率は50%前後で枝梗付粒と不稔粒の除去率を含め流量13ton/hで高精度を示した。アスピレー夕風量も夾雑物除去性能と密接な関係にあるが、0.67m3/sで枝梗付、未熟粒の分離性能が高い。
　(2)小麦の粗選性能
　　15wb%前後の低水分材料から35wb%の高水分封料を用い、選別性能を調査した。流量、10〜23ton/h、シーブ目径9、11㎜、風量0.68,0.90m3/sで試験を実施した結果、夾雑物除去率80%以上、穀粒回収率98%以上を得る使用条件が明らかになった。流量10〜18ton/hではシーブ目9㎜が適し、18〜21ton/hではシーブ目11㎜が適当であった。
　3)使用量力
　　試験は本体11kw、アスピレータ5.5kwのモータで実施したが、起動及ぴ粗選時の振動、電流変動が極めて少なく、210vで本体MAX32A、アスピレータ14Aを示した。従って、モータとしてはそれぞれ7.5kw、3.5kwに代替の可能性がある。

10.主要成果の具体的数字
表1　供試機仕様
各部寸法 A　1615mm　　D　2260mm
B　2190mm　　E　2115mm
C 　800mm　　F　1000mm
機体重量 本体　　　　　1530kg
アスピレータ　200kg
駆動モータ 本体　　11kw　　3相220v　　970rpm
アスピレータ　　5.5kw　　3相220v　　1450rpm
スクリーン サイズ 穴ピッチ 開孔率 備考
内　　　筒 9mm丸目 12.0mm 44.2% 小麦
11mm丸目 14.3mm 46.6% 籾
外　　　筒 1.5mm×20mm長穴 3.6×25.5mm 32.5% 共用


図1　SIGMA TS752概略図

表2　籾粗選別結果
品種 籾(キタヒカリ) キタヒカリ
Test　No. 3 5 4 8
原料重量kg 2670.0 3477.1 3092.0 3227.0
水分
wb%		 穀粒wb% 31.1 30.7 31.4 31.8
わらwb% 76.3 74.6 76.3 58.5
半われ・くずwb% 45.9 40.6 44.0 45.3
不稔wb% 40.4 36.7 44.9 -
アスピレータ風量(m3/s) 0.57 0.57 0.57 -
処理時間(分・秒) 11′36″ 12′53″ 9′26″ 15′01″
流量(ton/h) 13.4 15.9 19.5 12.9
組成割合(W%) 原料 整粒口 原料 整粒口 原料 整粒口 原料 整粒口
①単粒% 85.3 87.6 80.2 81.5 87.0 87.6 85.0 85.5
②穂切% 2.5 1.7 2.5 2.1 5.9 5.8 2.6 1.7
③枝梗付粒% 3.9 3.5 10.9 10.6 1.0 1.0 7.3 6.8
④脱ふ粒% 1.2 1.2 1.4 1.4 1.1 1.1 0.2 0.1
⑤未熟粒% 5.8 5.7 3.5 3.5 4.1 4.1 4.8 5.8
⑥切わら・くず% 0.7 0.2 0.7 0.3 0.5 0.2 0.2 0.1
⑦小石・土・割れ% 0.2 0.2 0.5 0.5 0.3 0.3 0.0 0.0
⑧不稔% 0.3 - 0.2 - 0.2 - - -
穂切れ除去率% 33.9 18.2 1.9 30.0
枝梗付除去率% 12.9 4.4 5.2 0.3
⑥＋⑦＋⑧除去率% 54.5 46.5 48.7 46.1
未熟粒除去率% 4.8 0.1 0.7 0.0
精籾回収率% 99.6 99.7 99.9 -
電流値 本体A 31.4 29.4 29.3 揺動型粗選機
アスピレータA 13.3 12.7 12.7

表3　試験結果の集約(小麦)
テスト　No. 1 2 3 4
供試原料kg 3975 3067 3637 3685
平均水分wb% 25.0 15.6 35.2 15.0
アスピレータ風量(m3/s) 0.90 0.90 0.90 0.68
処理時期(分・秒) 13′10″ 12′10″ 9′45″ 10′25″
流量ton/h 18.1 15.1 22.4 21.2
組成割合W% 投 排 投 排 投 排 投 排
①単粒% 96.8 97.2 94.9 96.1 92.0 92.5 97.4 97.8
②穂切れ% 0.8 0.1 2.4 0.1 4.8 0.5 1.2 0.0
③ふ付粒% 0.9 0.9 0.2 0.2 0.9 0.9 - 0.0
④未熟粒% 1.0 0.8 2.0 2.0 1.3 4.8 1.0 1.2
⑤ふ% 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.2 0.0
⑥圧変、破砕% 0.1 1.0 0.3 1.6 0.1 1.3 0.1 1.0
⑦小石、土砂 0.4 0.0 0.2 0.0 0.9 0.0 0.1 0.0
大夾雑除去率% 83.7 38.6 43.5 70.7
ふ、小石、土砂除去率% 83.7 100.0 74.7 100.0
総夾雑物除去率% 83.7 78.1 46.1 91.5
未熟粒除去率% 3.6 19.7 1.4 0.0
穀粒回収率% 100.0 99.4 99.5 100.0
インナーシーブmmφ 11 11 11 11

11.普及上の留意点
　　荷受け、計量ラインの能力に合わせたシーブの選定(18ton以下:9mmφ、18〜22ton/h:11mmφ(小麦))