【指導参考事項】
1.課題の分類  豆類収穫
2.研究課題名  大豆子実の乾燥方法(循環式乾燥機の改良)
3.予算区分  別枠(転換畑)
4.担  当  北海道農試畑作部機械化栽培研究室
5.研究期間  54年〜60年
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 高水分大豆の乾燥に循環式乾燥機を用いた場合の損傷粒の発生箇所が判明し,その対策を検討したので参考に供する。

8.試験研究方法
 循環式乾燥機(山本NCD-217A,容量3t,熱風圧送吸引方式,通風・休止時間が1:4)を供試し,低水分(13%W.B.)及び高水分(24%W.B.)の大豆整粒約30㎏づつを機械の部位別に各6回通過させた後,裂傷粒,破砕粒,圧変粒及ぴ整粒に分類した。損傷軽減対策を施した後に,同様の調査及ぴ乾燥実験を行った。

9.成果の概要
 1)損傷粒の発生は,パケットエレベータで多発し,その原因は,エレベータの底部滞留大豆をパケットがすくい上げる際の衝撃と,それによる内壁面への衝突,更に上部での放出時における衝突,再落下して下部プーリとベルトの間へのかみ込みで,これはパケットの周速度が速いほど多く,低水分大豆では,2〜5%に達した。下部横送りねじコンベアは,高水分で破砕粒,低水分で裂傷粒の発生を見たが,割合は0.3%以下であった。タンク内落下と繰り出しでは,低水分で,裂傷粒O.2%, 破砕粒0.3%であった。
 2)損傷軽減対策として,横送りねじコンベアとパケットを強化プラスチック製に交換,エレベータの下部及ぴ上部両内面と上面内側にウレタンゴム(厚さ3㎜)を接着,エレベータの下部プーリをかご形に交換,及び各部回転数の減速をした。
 3)以上の対策の結果,パケット周速が2.4m/sでの,破砕粒の発生は対策前の0.9〜1.2%から0.1〜0.3%に著しく減少し,乾燥実験での損傷粒の増加は,対策前の7.7%から対策後の2.0%に低減された。
 4)しわ粒の発生条件について,基礎的実験により調査した結果,子実含水率23%以下で乾燥することが望ましく,なお子実含水率が18%に達するまでは,急激な乾燥を避ける必要があった。

10.主要成果の具体的数字
表1 循環式乾燥機における部位別の損傷粒の発生
調査個所 ねじ
コンベア
回転数
バケット
コンベア
周速度
水分24.4% 水分12.6%
裂傷粒 圧砕粒 破砕粒 裂傷粒 圧砕粒 破砕粒
下部横送り
ねじコンベア
rpm
180
m/s
-
%
0
%
0
%
0
%
0.2
%
0
%
0
380 - 0 0 0 0.2 0 0
570 - 0 0 0.1 0.3 0 0
タンク内落下と
繰出し
380 - 0 0 0 0.2 0 0.3
バケット
エレベータ
- 0.95 0.6 0.2 0.4 - - -
- 1.50 - - - 1.0 0 0.5
- 2.00 1.0 0.2 0.7 - - -
- 2.92 - - - - - -
- 3.17 1.4 0.2 0.9 1.6 0 0.9
- 4.75 1.5 0.2 1.2 1.6 0 1.1
バケット
エレベータの
底部停留
- 1.50 - - - 0.4 0 1.4
- 2.00 0.8 1.0 0.5 - - -
- 2.92 - - - - - -
- 3.17 1.2 1.7 0.8 0.9 0 1.9
- 4.75 1.1 0.9 0.4 0.8 0 4.2
注 いずれも大豆約30kgを6回通過後の発生値、稲用標準は570rpm,4.75m/s

表2 損傷軽減対策を施した循環式乾燥機による
    コンバイン収穫大豆の乾燥結果
試験No. 1 2 3
施した軽減対策 a ab a・b・c・d
循環流量(t/h) 3.7 1.6 1.3
バケットコンベア周速度(m/s) 4.7 2.4 2.4
熱風温度(℃) 38 47〜53 37〜45
乾燥穀温(℃) 31 31 29
乾燥時間(h) 3.5 14 7.5
乾燥前含水率(%) 15.7 23.3 19.0
乾燥後含水率(%) 13.1 13.3 13.7
乾減率(%/h) 0.74 0.71 0.71
除去水分量(kg/h) 12.4 23.4 14.0
乾燥前 裂傷粒f(%) 6.4 0.6 2.9
破砕粒(%) 1.9 2.0 4.3
整粒歩合(%) 86.6 97.4 92.8
乾燥後 裂傷粒f(%) 8.0 2.7 3.4
破砕粒(%) 6.3 8.9 5.8
整粒歩合(%) 76.8 88.4 90.8
注a:プラスチック製品に交換
 b:各部回転数の減速
 c:ゴム板の接着
 d:カゴ形プーリへの変換

表3 各区の毎時乾減率

11.成果の活用面と留意点
 循環式乾燥機で大豆子実を乾燥する場合の損傷対策としては,子実が衝突する壁面へのゴム板の接着、揚穀部の減速,かご形プーリヘの交換が効果的である。

12.残された問題とその対応
 大型乾燥施設での乾燥方法と品質への影響が未検討である。