【指導参考事項】
1.分  類  めん羊 繁殖
2.課題名
    フィニッシュランドレースを用いたサフォークの交雑利用
       (めん羊の繁殖性向上に関する試験)
3.試験期間  昭52〜59
4.担  当  道立滝川畜試めん羊科
5.予算区分  道費
6.協力分担  なし

7.目  的
 めん羊の生産性を高めるため、品種面から雌の繁殖性向上を図る。年当りの産子数を増加させるために、現在、世界的に注目されているフィニッシュランドレースを用いて純粋種の繁殖特性を調査するとともに、わが国で主流を占めるサフォークの交雑利用について検討する。

8.試験研究方法
1) フィニッシュランドレースの特性
2) サフォークとの交雑利用について検討する。

9.結果の概要・要約
1) フィニッシュランドレースの特性
 (1)子羊生産率は明2才で270%、および明3才で300%以上を示した。
 (2)妊娠期間は140.3±1.9日で、サフォークよりも短かい。
 (3)発情開始日齢は227±12.8日齢と、サフォークよりも早い。
 (4)生時体重は軽く、また、母羊年齢2歳の子羊は3〜4歳の子羊より軽い。
 (5)育成率は71.3%と低いが、双子および三子についてはサフォークのそれよりも低くはない。
 (6)離乳時体重は軽く、4ヵ月齢でのラム利用はできない。
 (7)体格面では晩熟で、3歳以降も発育する。
 (8)フィンはサフォークに比較し、産肉性および産毛性は劣るが、繁殖性では多産で発情開始日齢が早い。したがって、純粋種としての利用には難点があるが、肉用種との交雑利用には大きな期待ができる。
2) サフォークとの交雑種の特性
 (1)子羊生産率は、一代雑種280%、二回雑種230%とサフォークよりもかなり高くなったが、三回雑種ではサフォーク並となった。
 (2)育成率は一代雑種ではサフォークより著しく高くなり、雑種の効果が認められた。
 (3)離乳時体重は、双子についてみると、一代雑種ではサフォークより大きく、二回雑種では一代雑種よりさらに大きく、三回雑種では二回雑種より小さくなる傾向があった。
 (4)離乳後発育は、一代雑種および二回雑種の明3歳以降の増体量が著しく、明4歳の体重はサフォークよりかなり大きい。
 (5)交雑種の4ヵ月齢ラムの枝肉形体はサフォークとほとんど変らない。
 (6)一代雑種の産毛量はサフォークより多くなった。

10.主要成果の具体的成果
表1 繁殖成績(フィン)
年齢
(歳)
交配
頭数
受胎
子羊
生産率
産子数割合
単子 双子 三子 四子 五子
A 1 7 85.7 183.3 333 50.0 16.7    
2 7 100.0 271.4   28.6 71.4    
3 7 85.7 316.4   16.7 50.0 33.3  
4 7 100.0 285.7   42.8 28.6 28.6  
B 1 10 100.0 270.0   50.0 30.0 20.0  
2 10 100.0 380.0   10.0 30.0 30.0 30.0
3 10 100.0 320.0   10.0 60.0 30.0  
 A:輸入羊で1〜2歳ハピー牧場3〜4歳は滝川畜試における成績
 B:A群3歳の子を滝川畜試で育成繁殖したもの

表2 平均発情開始日・発情開始日齢および体重
調査年 品種 頭数 平均発情開始日 生後日齢 体重(kg)
1978 フィン 10 10.23(9.30〜11.12) 227±12.8 34.9±2.1
サフォーク 10 10.11(9.21〜11.10) 235±16.0 50.8±4.2
1972.73 サフォーク 20 10.19(9.14〜11.17) 246±12 46.8±3.7
コリデール 20 11.16(10.15〜12.12) 271±17 39.5±3.3

表3 生時体重
品種 母羊
年齢
頭数 分娩型
単子 双子 三子 四子 五子
フィン 2 27     2.3 2.5 2.2 2.0 1.5 1.4    
3〜4 107     3.2 2.7 2.5 2.3 2.2 1.9 1.8 1.6
サフォーク 2 691 5.2 4.9 4.1 3.9 3.1 3.1        
3〜4 1,044 5.7 5.2 4.5 4.3 4.0 3.6        

表4 フィンクロスの繁殖成績
品種 年齢 交配
頭数
受胎率
(%)
子羊
生産率
(%)
産子数割合(%)
単子 双子 三子 四子 五子
サフォーク 2 577 94.1 175.3 30.4 63.9 5.7    
3〜6 1,007 95.4 178.9 29.9 61.7 8.1 0.3  
F・S 2 33 100.0 172.7 30.3 66.7 3.0    
3〜6 60 93.3 164.3 39.3 57.1 3.6    
S・FS 2 62 100.0 274.2 1.6 32.3 56.5 9.7  
3〜5 128 99.2 287.4 2.4 21.4 62.7 11.1 2.4
S・SFS 2 30 96.7 227.6 13.8 48.3 34.5 3.4  
3〜5 33 100.0 236.4 9.1 45.5 45.5    
S・SSFS 2 9 100.0 177.8 22.2 77.8      
フィン 2 17 100.0 270.6   41.6 47.1 11.7  
3〜4 34 97.1 330.0   18.2 42.4 30.3 9.1
注)F・Sはフィン雄×サフォーク雌   S・SFSはサフォーク雄×SFS雌
 S・FSはサフォーク雄×FS雌     S・SSFSはサフォーク雄×SSFS雌

表5 育成率(分娩型)
品種 母羊年齢
(歳)
分娩型別育成率(%)
単子 双子 三子 四子 五子 全体
サフォーク 2 84.2 81.1 66.7     80.3
3〜6 90.9 87.2 73.9 33.3   85.6
FS 2 100.0 90.9 66.7     91.2
3〜6 100.0 95.3 66.7     94.6
SFS 2 100.0 82.5 74.3 66.7   75.3
3〜6 100.0 83.3 81.4 73.2 66.7 80.0
SSFS 2 100.0 85.7 96.7 100.0   92.4
3〜5 66.7 93.3 88.9     89.4
フィン 2   90.0 100.0 37.5   77.8
3〜4   83.3 71.4 67.5 60.0 69.7

表6 離乳時体重(120日齢補正)
母羊
年齢
品種 頭数 分娩型(kg)
単子 双子 三子(双子型) 四子(双子型) 三子
2 サフォーク 630 38.3 34.6 30.5 28.7 30.2 27.8        
FS 48 37.0 37.2 34.0 29.4            
SFS 55     35.8 32.9 31.3 26.8 28.9 31.8 32.8 30.7
SSFS 48     34.9 29.8 33.2 28.7     36.0 30.5
フィン 19     28.2 26.8       23.1 28.8 25.7
3〜6 サフォーク 1,704 38.3 35.9 33.2 29.9 33.2 29.5        
FS 82 44.2 35.8 37.3 32.1            
SFS 119     39.4 36.3 36.6 33.7 35.6 29.7 36.1 34.5
SSFS 58     38.0 31.0 35.7 37.8     38.4 34.1
フィン 37     28.6 26.7 29.4 25.9 28.6 20.8 36.8 24.1
※三子は補給哺育を実施

11.今後の問題点
 1)フィンとサフォークとの交雑種の生産体制の確立
 2)めん羊用代用乳、人工乳の生産
 3)フィン以外の品種との交雑利用の検討

12.指導上の注意事項
 1.本技術を用いるには、かならず子羊の人工哺育技術を習熟させる。
 2.めん羊用代用乳を確保する。現在、市販されていないので、予約して、入手する。
 3.繁殖雌羊は大型になるので、妊娠末期の飼養管理に注意する。
 4.フィンおよびサフォークとの交雑種の地域内外における生産体制を整備する。