【普及奨励事項】
1.課   題  優良品種候補
2.場 所 名
 北海道立十勝農業試験場,天北農業試験場,根釧農業試験場,
 北見農業試験場,農林水産省 北海道農業試験場
3.優良品種候補名
 サイレージ用とうもろこし「PH1201」(エマ)

4.来   歴
 組合せ:変形単交配(フリント×ゲント 構成系統名は不明)
 育成者:パイオニア社(フランス)
 導入者:ホクレン
 登 録:OECD(1982年)

5.特性の概要
 1)絹糸抽出期および刈取時熟度
 「ワセホマレ」に比較して絹糸抽出期は約2日間早く、刈取時熟度も若干進む。乾物率はほぼ同程度。従って熟期は「ワセホマレ」よりやや早い早生の早に属する。
 2)耐倒伏性
   「ワセホマレ」、「ワセミノリ」よりまさる。
 3)発芽および初期生育
  発芽は「ワセホマレ」並に良好である。初期生育は「ワセホマレ」よりやや劣るが「ワセミノリ」よりすぐれる。
 4)収量性およひ乾物特性
  TDN収量は「ワセホマレ」と同程度かやや高いが十勝ではやや劣り,「ワセミノリ」と同程度である。乾物中のTDNは「ワセホマレ」よりやや高く、「ワセミノリ」と同程度である。
 5)形態的特性
  稈長は「ワセホマレ」より低く、「ワセミノリ」並であるが,着雌穂高は「ワセホマレ」よりやや高い。雌穂は短く円鍾型。
 6)耐病性
  すす紋病抵抗性は「ワセホマレ」より弱く,ごま葉枯病抵抗性は同程度である。

6.試験成績



年次
(昭)
形質/
品種
発芽

(月日)
初期
生育
(1良〜
5否)
絹糸
抽出

(月日)
収穫時熟度 倒伏
(含折損)
(%)
収量(kg/10a) 乾物

(%)
乾雌
穂重
割合
(%)
乾物

TDN
(%)
乾総重 TDN
(%)
天北
農試
58

60
PH1201 5.31 - 8.18 糊後 15.5 918 658 104 24.9 42.6 69.6
ワセホマレ 31 - 21 糊中〜後 19.8 891 633 100 25.1 39.9 68.9
ワセミノリ 6.1 - 15 糊中〜後 44.8 934 673 106 24.8 44.5 70.1
根釧
農試
58

60
PH1201 6.6 2.7 8.22 糊後 10.3 835 593 108 24.0 35.3 67.7
ワセホマレ 6 3.0 23 糊中〜後 26.8 790 549 100 22.0 31.7 66.7
ワセミノリ 8 3.1 22 糊中〜後 41.5 862 615 112 23.7 37.4 68.2
十勝
農試
58

60
PH1201 5.23 1.7 8.3 黄中〜後 0.1 853 623 94 26.6 56.0 73.2
ワセホマレ 22 1.1 5 黄中 37.7 905 662 100 27.4 55.4 73.0
ワセミノリ 24 2.7 4 黄中 18.4 834 610 92 25.8 55.4 73.1
北見
農試
58 PH1201 6.6 2.0 8.25 黄初 0 902 619 99 23.5 38.8 68.6
ワセホマレ 6 1.0 30 糊中 0 934 627 100 19.8 33.2 67.1
ワセミノリ 8 2.5 27 糊後 0 786 535 85 21.9 37.0 68.1


59

60
PH1201 6.13 - 8.5 黄中〜後 35 1,246 891 101 30.5 49.5 71.5
ワセホマレ 14 - 10 黄初〜中 40 1,236 880 100 28.0 48.0 71.1
ワセミノリ 13 - 9 黄中 43 1,258 905 103 29.2 51.5 72.0


59

60
PH1201 (6.6) 2.5 8.10 黄中〜後 0.0 1,219 874 112 28.4 50.2 71.7
ワセホマレ ( 6) 3.0 11 黄中 14.7 1,114 777 100 27.0 42.5 69.6
ワセミノリ ( 7) 3.0 12 黄中 4.4 1,208 870 112 27.0 51.6 72.0


59

60
PH1201 (6.3) 1.4 (8.8) 黄中〜後 0.0 1,106 805 100 27.0 54.9 72.9
ワセホマレ ( 2) 1.4 ( 11) 黄中 8.1 1,099 807 100 28.9 56.7 73.4
ワセミノリ ( 4) 2.4 ( 10) 黄中 3.2 1,133 831 103 27.4 56.9 73.5
注)別海町の( )は59年、のみ忠類村の( )は60年のみの成績

特性検定試験成績(昭58.北農試)
品種名 すす紋病 ごま葉枯病
PH1201 3.5 3.5
ワセホマレ 1.5 3.5
ワセミノリ 3.5 3.0
注 Elliott&Jenkinsの指数(0無〜5甚)による。

7.普及対象地域
 道北および根釧地域。

8.栽培利用上の注意
 早生品種一般に準じて栽培する。ただし,すす紋病の発生軽減のために適正な肥培管理を行なう。また,初期生育は「ワセホマレ」よりやや劣るので,肥料やけや初期雑草の対策を十分に行なう。

9.種子供給が可能となる時期および普及見込面積
  種子供給が可能となる時期:昭和61年 普及見込面積:1200〜1600ha
  配布し得る種子量:30〜40t