【指導参考事項】(昭和58年〜61年)
  十勝地方における耕盤層の判定基準と改善対策
                         十勝農試 土壌肥料科

目的
 十勝地方の畑地において,昭和30年頃より耕盤層が知られ,黒ボク土(乾性火山性土)に生成するが多湿黒ボク土(湿性火山性土)には生成し難いとされていたが,心土耕・心土破砕などで増収効果が認められていた。一方現在は機械も大型化し,その踏圧で耕盤層が形成され,湿害の大きな要因となって減収や品質の低下を招いている。しかし,耕盤層については未だ不明の点が多いため,実態を調査し,その改善対策を明らかにする。

試験方法
  1.実態調査
   対象土壌 ①黒ボク土 ②多湿黒ボク土 ③褐色低地土
   調査項目 断面調査,物理工学性
  2.耕盤層対策試験
   対象土壌 ①黒ボク土 ②多湿黒ボク土 ③褐色低地土
   処理区別 ①無処理 ②心土破砕 ③畦間サプソイラー ④心土破砕・畦間サプソイラー
   処理条件 ①心土破砕:深さ60㎝,間隔75㎝,59年5月施工
          ②畦間サプソイラー:深さ40㎝,間隔60㎝,59年及び61年5月施工
   調査項目 収量調査、断面調査、物理性
  3.多湿黒ポク土の新盤層基準策定実験
   供試土壌:黒ボク土(十勝農試圃場),多湿黒ボク土(帯広市別府町),褐色低地土(幕別町)
   水分条件:3段階(pF1.8,2.3,2.7)
   荷重:6段階`0,0.25,0.5,1.0,1.5,2.0kg/c㎡)
   調査項目:実容積,通気係数,土壌硬度

試験結果の概要
 実態調査
 ①対象3土壌に作土下の不良土層が21〜32%の割合で確認された。
 ②黒ボク土,褐色低地土の不良土層は容積重,固相率,硬度が明らかに高く,硬度指数は20をこえていた。このことより硬度20以上の堅密層を耕盤層と規定した。
 ③多湿黒ボク土の不良土層は硬度20に満たないが透水係数,通気係数が明らかに低く,通気性、透水性が不良と思われた。そのため,これらの係数より不良土層の基準を策定する必要があると認められた。
 ④農家の実感も40%弱が自分の畑がしまり,堅くなっていろということであった。
 耕盤層対策試験
 ①黒ボク土に対する畦間サプソイラーは逆効果を示し,心破のみ増収効果がわずかに認められた。
 硬度20以上の堅密層が明確に認められなかったこともあり,破砕効果が出現しにくかったものと考えられる。畦間サブソイラー処理は毛管水の連動を切断したため土壌水分が乾燥傾向に推移し,特に59・60年の早ばつ年には生育抑制を招き,減収した。一方心破処理は毛管水の連動を切ることなく,作物生産にプラスに作用した。
 ②多湿黒ボク土に対して心破・畦間サプソイラーの処理効果が明らかに認められ、とりわけ心破の残効が安定的であった。その残効は本試験の範囲内で,3年目まで認められた。
 ③褐色低地土は硬度20以上の耕盤層が存在し,心破,畦間サプソイラーの処理により増収を示したが,処理効果は2年程度であった。
 多湿黒ポク土の耕盤層策定実験
 ①荷重の増加に伴ない気相率の低下が著しく,硬度20に達する前に他土壌とは異なり通気性,透水性の不良な状態となり,作物生育の阻害要因となるものと考えられた。
 ②そこで気相率(10%以下)および通気係数10μ22=10-8c㎡以下)より多湿黒ボク土の不良土層を規定し,他土壌と共通的に指標として硬度を用い,硬度16〜18をもって耕盤層とみなすことにした。
 総  括
 以上の結果より
 ①褐色低地土においては作土直下(深さ30㎝前後)に出現する硬度20以上の堅密層を耕盤層とみなし,心土破砕畦間サブソイラーで対応する。
 ②黒ボク土においては作土直下(深さ30㎝前後)に出現する硬度20以上の堅密層を耕盤層とみなし,心土破砕で対応する。特に根菜類に対して有効である。
 ③多湿黒ボク土においては作土直下(深さ30㎝前後)に出現する硬度16〜18の土層を耕盤層とみなして,心土破砕・畦間サブソイラーで対応する。

主要成果の具体的数字
第1表 3ヶ年の収量調査(収量比)

年度 59年 60年 61年 3ヶ年平均
作物/
処理
えん麦
子実重
とうもろこし
DM穂重
えん麦
子実重
とうもろこし
DM雌穂重
 



①無処理 100 100 100 100 100
②心土破砕 100 106 104 - 103(2年)
③畦間サブソイラー 85 91 80 83 85
④心破+畦間サブ 93 90 79 - 87(2年)

湿



作物 大豆子実重 小豆子実重 てん菜根重 3ヶ年平均
①無処理 100 100 100 100
②心土破砕 116 113 116 115
③畦間サブソイラー 137 137 110 128
④心破+畦間サブ 126 141 115 127




作物 小豆子実重 てん菜根重 糖分 馬鈴しょ 2ヶ年平均 3ヶ年平均
①無処理 100 100 100 100 100 100
②心土破砕 109 111 111 94 110 105
③畦間サブソイラー 106 114 128 99 110 106
④心破+畦間サブ 104 105 118 100 105 103


第1図 荷重による気相率の変化


第2図 硬度指数と気相の変化


第3図 硬度と通気係数の関係

普及指導上の注意事項
 1.耕盤層の認定にあたっては,土壌断面調査を前提とする。
 2.灰色低地土は褐色低地土に準拠して対応する。