【指導参考事項】
1.課題の分類 畜産 豚 管理 2.研究課題名 寒地における豚舎環境の改善方式に関する試験 3.期 間 (昭57〜60年) 4.担 当 滝川畜試研究部 飼養科 5.予算区分 総 合 助 成 6.協力分担 |
7.目 的
寒地に適した豚舎環境の改善方式を確立するため、最低限維持すべき豚舎内環境条件を整理し、それらの条件を満たすための制御方式を組み立て、実証する。
8.試験研究方法
(1)豚舎環境基準および標準的環境制御方式の設定
環境基準については、諸外国および当場の既往研究成果を参考にして暫定値を定めた。標準的制御方式は米国中西部諸大学(MWPS)の推奨方式を基本に組み立てた。
(2)標準的環境制御方式による豚舎環境の改善効果
士別市と恵庭市において、改善効果の判定が容易である既存の肥育豚舎を対象に改修工事を行い、標準的方式による豚舎環境の改善効果を検証した。
9.結果の概要・要約
(1)豚舎環境基準(暫定値)
冬季の豚舎で最低限必要とされる環境基準を、当面の暫定値として表1のように設定した。
(2)標準的環境制御方式
標準的方式の断熱・換気・暖房の概略は、以下の通りである。
断熱: | 天井100〜150㎜、側壁50〜75㎜の断熱材を施用する(厚さはグラスウール相当)。 |
換気: | 入排気は、天井からスロットインレットを通じて入気し、側壁の換気扇により排気する方式 とする換気扇は連続換気系統と温度換気系統に分けて設置する。連続換気系統は少風量有 圧換気扇(φ20〜30cm)を使用し、収容頭数に応じて電圧調整器で風量を調節しながら最低 換気量を確保する。温度換気系統は中風量有圧換気扇(φ35〜40cm)を使用し、舎内温に応 じてサーモスタットにより断続運転する。 |
暖房: | 分娩、離乳、肥育の各豚舎にサーモスタット制御の温風暖房機を設置し、必要な舎内温を確 保する。分娩豚舎と離乳子豚舎では、さらに豚房の一部に床暖房などの部分暖房を施す。 |
10.主要成果の具体的数字
表1 寒冷期の豚舎環境基準(暫定値)
舎内温 (℃) |
最低換気量 (m3/分・頭) |
空気中成分 | |
分娩豚舎 | 15 | 0.567(1腹当たり) | CO2 濃度:0.3%以下 NH3 濃度:15PPM以下 |
離乳子豚舎 | 15 | 0.057 | |
肥育豚舎 | |||
平均体重20-40kg | 0.142 | ||
平均体重40-70kg | 10〜15 | 0.199 | |
平均体重70-100kg | 0.284 |
表2 寒冷期の舎内温と灯油消費量(事例1 59年12月〜60年3月)
温度(℃) | 灯油消費量(L) | ||||||||
外気 | 改修豚舎 | 未改修豚舎 | |||||||
最高 | 最低 | 最高 | 最低 | 最高 | 最低 | 改修豚舎 | 未改修豚舎 | ||
12月 | 上旬 | 0.3 | -5.0 | 14.5 | 12.1 | 13.4 | 8.5 | - | - |
中旬 | -3.8 | -10.1 | 14.2 | 11.0 | 10.2 | 6.4 | - | - | |
下旬 | -7.3 | -12.2 | 14.0 | 10.5 | 11.7 | 8.5 | 261 | 331 | |
1月 | 上旬 | -10.0 | -20.6 | 14.3 | 11.3 | 13.1 | 9.1 | 283 | 803 |
中旬 | -6.7 | -18.1 | 13.6 | 10.1 | 10.3 | 8.4 | 249 | 614 | |
下旬 | -12.1 | -26.0 | 13.9 | 11.0 | 10.0 | 7.8 | 621 | 1189 | |
2月 | 上旬 | -4.2 | -12.3 | 13.9 | 10.3 | 11.8 | 9.2 | 149 | 549 |
中旬 | -2.5 | -10.7 | 15.0 | 10.9 | 13.8 | 10.2 | 27 | 152 | |
下旬 | -1.1 | -8.4 | 15.6 | 11.5 | 13.9 | 10.3 | 30 | 130 | |
3月 | 上旬 | -2.2 | -11.1 | 14.1 | 11.4 | 14.2 | 10.4 | 187 | 166 |
中旬 | 0.5 | -8.2 | 14.6 | 11.4 | 15.0 | 10.7 | 83 | 77 | |
下旬 | 3.0 | -4.2 | 14.8 | 11.1 | 16.2 | 11.4 | 64 (計 1954) |
24 (計 4035) |
表3 発育成績の改善効果(事例2)
体重(kg) | 飼料摂取量 (kg/日・頭) |
日増体量 (kg/頭) |
飼料要求率 | ||
開始時 | 終了時 | ||||
改修前 | 26.7 | 94.6 | 2.29±0.22 | 0.68±0.05 | 3.38±0.11 |
改修後 | 21.3 | 97.3 | 2.11±0.07 | 0.72±0.01 | 2.93±0.10 |
11.今後の問題点
(1)比較的寒さに強い妊娠豚、育成豚などを対象にした低コスト豚舎施設の試作と実証。
(2)寒冷に対する豚の適応能力の解明とそれを利用した舎内維持温度の低減。
12.普及指導上の注意事項
(1)分娩、離乳子豚舎の最低維持温度について、豚房内に保温箱、電熱ヒーターなどの部分暖房が設置されていることを前提にしている。
(2)温風暖房を実施している期間中は、連続換気系統の換気扇だけを動かし、温度換気系統の換気扇は使用しないようにする。