【指導参考事項】
1.課題の分類  乳牛 生理
2.研究課題名  環境、生理条件および体細胞数が乳成分に及ぼす影響
3.期   間  (昭和56〜60)
4.担   当  根釧農試 酪農第二科
5.予算区分  道 単
6.協力分担  なし

7.目的
  乳成分率の変動要因とその影響を明らかにするため、地域環境、生理条件及ぴ体細胞数が乳成分率等に与える影響について検討した。

8.試験方法
 1)北海道における農家バルク乳成分率の季節変動様式に関する試験
  地域別のバルク乳成分検査成績により、各地域の乳成分率の平均及び分散値の季節変動様式から、その類似性について検討した。
 2)産次、生産月、泌乳期及ぴ個体の各要因が乳量及ぴ乳成分率の日成績に及ぼす影響に関する試験
  日成績を産次、生産月及ぴ泌乳期の各要因で分類し、交互作用を無視した最小二乗法による解析を行ない、要因別の水準効果値を求めるとともに分散成分の推定を行なった。
 3)体細胞数が乳量及ぴ乳成分に及ぼす影響に関する試験
  左右分房乳の比較により体細胞数と乳量、乳成分率および生産量の関係を検討した。また、農家バルク乳における体細胞数と乳成分率の関係を検討した。

9.主要成果の概要
 1)乳成分率の季節変動様式は、乳脂率では地域間に差がみられなかったが、無脂固形分では差違が見られた。乳成分率の季節変動様式から道内は、無脂固形分率の春の低下が顕著で夏に両成分の分散値が著しく小さくなる第1地区、両成分の相関が高く夏の分散値の低下が顕著でない第2地区、両成分の相関が高く通年的に乳脂率の分散値の大きい第3地区、夏季の無脂固形分率の低下の著しい第4地区の4つの地区に大別でき、これらの変動特性とそれぞれの地区の飼料構成、経営形態および気象条件との間には関連が示唆された。
 2)産次、生産月及ぴ泌乳期の要因は、いずれも乳脂率及ぴ無脂固形分率の日成績に対して有意な影響を与えていた。しかし、これらの乳成分率に対する産次、生産月および泌乳期の影響は小さく、個体の要因の影響が大きかった。また、これら以外の要因による誤差も大きかった。
 3)分房乳における体細胞数が20万/mL以下では乳成分生産に対する影響は見られなかったが、20万/mLを越えるとその増加に伴い乳蛋白率は上昇し乳糖率は低下し、乳量および乳成分生産量はいずれも低下した。農家バルク乳においては、体細胞数と無脂固形分率及ぴ全固形分率の間に弱い負の相関がみられた。
  以上の結果から、牛群における成分的乳質の改善にあたっては乳成分の変動に影響を及ぼす乳牛の生理的要因とともに、大きなバラツキをもつ個体の要因、さらには環境要因等を考慮した検討が必要なこと、また、体細胞数の増加は乳成分率よりも乳量ならびに乳成分生産量の低下をもたらすことで大きな経済的損失を与えるので、乳房炎の防除が必要なことが明らかとなった。

10.成果の具体的内容


図 乳成分率の季節変動様式による地域区分


図 乳成分率の日成績に関する分散成分推定値割合


図 分房における体細胞と乳生産の関係

11.今後の問題点
 1)試料構成及ぴ気象条件が乳成分率及びその生産量に与える影響の解明
 2)乳房炎が体細胞数及び乳成分生産に与える影響の解明

12.普及指導上の注意事項
 1)無脂固形分率の比較検討では、年次による変動を考慮する必要がある。