【指導参考事項】(昭和53〜59年)
天北地域における採草利用チモシーの栽培に関する試験
道立天北農試 作物科
目的
天北地域のチモシー採草地の、刈取り、施肥反応の品種間差を検討し、良質な粗飼料の、安定生産の資とする。
試験方法
(1)チモシーの収量構成分げつの推移(昭和53〜55年)
品種「センポク」の分げつの季節的消長と収量の関係を調査した。
(2)2番草の刈取り、施肥が越冬前の生育や翌春1番草の生育に及ぼす影響
1)1番草収量に前年2番刈時期と施肥が及ぼす影響(昭和53〜55年)
前年2番刈時期(5)、前年2番刈後と早春施肥の組合せ(3)
2)1番草収量に早春と前年2番刈後の施肥が及ぼす影響(昭和53〜57年)
前年2番刈後と早春施肥の組合せ(4)
(3)収量に及ぼす1、2番草の刈取時期と早春施肥の影響(昭和56〜59年)
1番刈時期(3)、2番刈時期(2)、早春窒素施肥量(2)
試験成果の概要
1.チモシーの収量構成分げつの推移
1)チモシーの収量構成分げっの推移から、1番草の出穂茎の生育が年間収量に対し重要であった。それらは、越冬前の主茎に由来していた。
2)1番刈後の再生は、新たに発生する分げつが大部分であった。それらは、2番草を経て越冬前の主茎となった。
3)このことから、1番草の生育にとって、前年2番刈後の主茎数の確保と充実が重要であった。
2.2番草の刈取り、施肥が越冬前の生育や翌春1番草の生育に及ぼす影響
1)2番刈時期は翌春収量に影響を及ぼした。「センポク」、「ホクシュウ」両品種とも、10月上旬刈が低収傾向を示した。
2)2番刈後の施肥が翌春収量に及ぼす影響は品種で異なった。「センホク」は秋、春分施と早春全量施肥の場合と同様の収量であったが、「ホクシュウ」では早春全量施肥の方が多収であった。このことは、「センポク」、「ホクシュウ」とも低収となった10月上旬刈区でも顕著に認められ、10月上旬刈の低収を「センポク」が前年2番刈後か早春の増肥で、「ホクシュウ」が早春の増肥で回復の可能性が示された。
3)「センポク」の前年2番刈後の施肥の効果は、1番草茎数の増加によるものであった。
3.収量に及ぼす1、2番草の刈取時期と早春施肥の影響
1)年2回刈による乾物収量パターンを明らかにした。1番草の穂ばらみ期と出穂期の収量差は、「センポク」より「ホクシュウ」が少なかった。
2)高栄養を目的とした早刈利用(1番草穂ばらみ期刈、2番草「センポク」8月下旬、「ホクシュウ」9月上旬、早春N
7kg/10a)の年間合計収量は、慣行の刈取り(1番草出穂期刈、2番草「センポク」9月下旬、「ホクシュウ」10月上旬、早春N
7kg/10a)に比較し、乾物収量、可消化乾物収量はそれぞれ、「センポク」が71%、80%、「ホクシュウ」が92%、100%であった。
3)1番草の穂ばらみ期刈取りは、出穂期刈取りに比較し、経年的な収量及び茎数密度に差がなく、永続性に影響がなかった。
主要成果の具体的数字
表1 各番草の構成分げつが年間合計収量に占める割合
分類 | 年間 比率 % |
番草内 比率 % |
乾物 収量 (kg/10a) |
||
1 番 草 |
主茎 | 出穂茎 | 53.5 | 75.6 | 608 |
〃 | その他 | 12.0 | 16.9 | 136 | |
1次分げつ | 出穂茎 | 1.2 | 1.7 | 14 | |
〃 | その他 | 4.1 | 5.7 | 46 | |
(100.0) | |||||
2 番 草 |
1次分げつ | 出穂茎 | 6.0 | 20.5 | 68 |
〃 | 無穂節間 伸長茎 |
16.8 | 57.5 | 191 | |
〃 | 栄養茎 | 5.5 | 18.7 | 62 | |
2次分げつ | 〃 | 1.0 | 3.3 | 11 | |
計 | 100.0 | (100.0) | 1,136 |
図1 1番草乾物収量に前年2番刈時期と施肥が及ぼす影響(2か年平均値)
(9月中旬刈、NO-5区を100とする指数)
図2 1番草の収量及び構成要素に及ぼす施肥の影響(4か年平均)
(NO-6区を100とする指数)
表2 穂ばらみ期刈と出穂期刈の収量比較(4,5年次平均値)
品 種 |
処 理 番 号 |
1番刈 時期 |
2番刈 時期 |
早春 窒素 施肥量 |
乾物収量比(%) | 可消化乾物収量比(%) | ||||
1番草 | 2番草 | 合計 | 1番草 | 2番草 | 合計 | |||||
セ ン ポ ク |
(1) | 穂ばらみ期 | 8下 | N4 | 51 | 96 | 64 | 56 | 123 | 71 |
(2) | 〃 | 〃 | N7 | 61 | 98 | 71 | 67 | 125 | 80 | |
(3) | 〃 | 9下 | N4 | 50 | 102 | 65 | 55 | 103 | 66 | |
(4) | 〃 | 〃 | N7 | 62 | 115 | 77 | 68 | 116 | 79 | |
(5) | 出穂期 | 8下 | N4 | 83 | 59 | 76 | 83 | 79 | 82 | |
(6) | 〃 | 〃 | N7 | 101 | 64 | 90 | 101 | 86 | 98 | |
(7) | 〃 | 9下 | N4 | 97 | 85 | 93 | 97 | 85 | 94 | |
(8) | 〃 | 〃 | N7 | (794) | (311) | (1,105) | (527) | (154) | (681) | |
ホ ク シ ュ ウ |
(1) | 穂ばらみ期 | 9上 | N4 | 71 | 85 | 74 | 78 | 89 | 81 |
(2) | 〃 | 〃 | N7 | 89 | 100 | 92 | 99 | 106 | 100 | |
(3) | 〃 | 10上 | N4 | 73 | 113 | 82 | 80 | 102 | 85 | |
(4) | 〃 | 〃 | N7 | 78 | 107 | 84 | 86 | 97 | 89 | |
(5) | 出穂期 | 9上 | N4 | 82 | 56 | 76 | 82 | 63 | 78 | |
(6) | 〃 | 〃 | N7 | 92 | 73 | 88 | 92 | 82 | 90 | |
(7) | 〃 | 10上 | N4 | 76 | 71 | 75 | 76 | 71 | 75 | |
(8) | 〃 | 〃 | N7 | (788) | (222) | (1,010) | (486) | (141) | (627) |
普及指導上の注意事項
1)1番草の生育ステージは、天候によって変動するため、刈取日の決定にあたっては留意する。
2)1番草穂ばらみ期刈の場合、2番草は刈遅れないこと。
3)本試験の結果は、チモシー単播の、年2回刈利用の草地に適用する。