【指導参考事項】
(作成昭和63年1月)
1.課題の分類  水 稲 収 穫 種 子
2.研究課題名  水稲種子収穫乾燥機械化体系確立試験
          2)水稲種子乾燥法に関する試験
          (1)人工乾燥籾の発芽力試験
3.予算区分  受託
4.研究期間  (昭60〜62年)
5.担  当  植物遺伝資源センター 資源第一科
6.協力・分担関係  中央農試農業機械部 機械科

7.目的
 水稲種子の収穫乾燥方式を合理化するため、種子用自脱型コンバインで収穫し人工乾燥した種籾の発芽力を調査し、水稲種子収穫乾燥機械化体系の実用性を検討する。

8.試験研究方法
1)試験期日及び場所
 収穫:昭和60年9月18日〜9月30日、昭和61年9月27日〜10月3日、栗沢町。乾燥法試験:ホクレン栗沢種子センター。発芽試験:昭和60年12月、昭和61年12月、昭和62年3月、植物遺伝資源センター。育苗試験:昭和62年4月〜5月、植物遺伝資源センター。
2)供試乾燥機:堅形循環型乾燥機 NCD-14X。静置型乾燥機 FB38A。対照として、架掛け+仕上乾燥。
3)供試籾:品種「ともひかり」「キタヒカリ」。栗沢種子センター低温貯蔵庫と当場の種苗庫で貯蔵し発芽試験に供した。
4)発芽試験:塩水比重1.08°シャーレ(ろ紙2枚、蒸溜水12cc)に乾籾100粒置床。2〜6反復。25℃・照光下で発芽。発芽の判定は芽・根共に2mm以上伸長し、正常に生育すると判定されたもの。調査項目…発芽勢、発芽率、平均発芽日数。
5)育苗試験:供試材料は61年産「ともひかり」9月27日刈区、「キタヒカリ」9月29日刈区。
 ビニールハウスで中苗箱マット育苗。人工床土(N、P2O5、K2O各1g/箱)、4月24日催芽籾200mL/箱散播、人工覆土使用、平置き無加温、シルバーポリ被覆。5月18日追肥(N1.0g、P20 0.5g/箱)。1区1箱4反復。苗調査は箱当り10c㎡2ケ所。調査項目…苗立率、良苗率(平均草丈の約2/3以上、葉数2.5枚以上)草丈、葉数、第一鞘高、分けつ数。

9.結果の概要・要約
1)発芽試験
(1)昭和60年産、61年産ともに収穫3ケ月後の12月の発芽試験では総体的に発芽が遅く、充芽率が90%に達しないものがあった(表3、4〜1)。その原因として、両年とも登熟期が高温で種籾の休眠が例年より深くなっていたと考えられたので、昭和61年産について休眠が醒めた翌春3月に再度発芽試験を実施した結果、各地とも発芽率が90%を越え、発芽勢も高く乾燥方法による差、対照区との差、収穫日による差、品種間差などはいずれも認められなかった(表4-1)。また、平均発芽日数も同様に各区間に大きな差は認められなかった(表4-2)。
(2)昭和60年産種籾の12月(収穫後約3ケ月目)の調査では、対照区の架乾籾に比較してNo.1〜No.3区の発芽勢、発芽率が低い場合が多く(表3-1)、また平均発芽日数が長い(表3-2)など、バインダー刈架乾籾とコンバイン収穫籾との間に休眠期間の差異のあることが示唆された。しかし、61年産ではこのような傾向は見られず(表4)、収穫方法と休眠期間の関係については判然としなかった。
2)育苗試験
  各人工乾燥籾は、架乾籾に比べ出芽期、出芽の状況、各苗形質ともに大差がなく、全般的に苗立率が高く、良苗率は、両品種とも区間の有意差が認められず、乾物重は大差がなかった。
 以上のことから種子用自脱型コンバイン収穫一人工乾燥体系籾の発芽力、苗立、苗形質は、慣行のバインダー刈架掛乾燥体系籾と比べて特に問題はなく、実用上支障はないと考えられる。

10.成果の具体的数字
表-1 刈取り期と籾水分
品種
ともひかり キタヒカリ
60 9.18(31.2)
9.20(34.6)
9.27(27.7)
9.19(33.8)
9.30(27.9)
61 9.27(26.8)
10.1(26.5)
9.29(28.3)
10.3(25.5)
注)( )内は籾水分

表-2 区別 (乾燥試験方法)
区別
乾燥機種
項目
No.1 No.2 No.3
NCD-14X NCD-14X 静置型
張込量 1200〜1300 1200〜1300 350〜450
温度条件 35℃(外気+15℃)* 30℃(外気+10℃)** 25℃(外気+5℃)
風量 少(標準) 多(+25%) 50㎡/min
乾燥速度 0.8%/h 0.3/h
注)1)対照区:「架乾」(バインダー刈架掛+仕上乾燥)。
  2)*:61年ともひかり10月1日収穫籾とキタヒカリ10月3日収穫籾は40℃
   **:同じく35℃

表-3-1 昭和60年産種籾の乾燥方法と発芽勢・発芽率(%)
品種名
刈取期(水分)
区別/発芽
ともひかり キタヒカリ
9/18(高) 9/20(高) 9/27(中) 9/19(高) 9/30(中)
No.1 42 85 44 89 63 94 50 84 66 87
No.2 49 90 57 91 62 93 42 86 52 91
No.3 58 93 (44) (90) 62 88 68 94 59 95
架乾 57 96 56 86 67 92 91 99 86 97
注)1)60.12.6置床。発芽勢は置床5日目、発芽率は7日目。
  2)( )内は9/24刈取り静置型乾燥機(常温)。

表-3-2 昭和60年産種籾の乾燥方法と平均発芽日数(日)
品種名
刈取期
区別
ともひかり キタヒカリ
9/18(高) 9/20(高) 9/27(中) 9/19(高) 9/30(中)
No.1 5.61 5.57 5.14 5.38 5.03
No.2 5.46 5.39 5.22 5.49 5.51
No.3 5.26 (5.59) 5.02 5.12 5.29
架乾 5.21 5.29 5.02 4.42 4.35

表-4-1 昭和61年産種籾の乾燥方法と発芽勢・発芽率(%)



区別 ともひかり キタヒカリ 籾水分
9/27 10/1 9/29 10/3
発芽勢 発芽率 発芽勢 発芽率 発芽勢 発芽率 発芽勢 発芽率
No.1 34 92 38 89 40 85 44 86 13.9

14.3%
No.2 34 88 36 92 37 81 37 81
N0.3 39 92 47 90 45 82 53 90
架乾 18 84 30 85 37 90 50 95
No.1 76 92 77 95 80 95 83 93 14.1

14.5%
No.2 79 95 74 96 79 93 83 93
N0.3 78 95 81 94 84 93 81 93
架乾 73 96 73 97 89 98 93 98
注1)Ⅰ:61.12.5置床、2反復平均。Ⅱ:62.3.20置床、6反復平均。
  2)発芽勢は置床5日目、発芽率は8日目

表-4-2 昭和61年産種籾の乾燥方法と平均発芽日数(日)
区分 ともひかり キタヒカリ
9/27 10/1 9/29 10/3
No.1 5.94 4.81 5.81 4.83 5.62 4.65 5.52 4.38
No.2 5.96 4.82 5.95 4.94 5.85 4.63 5.64 4.47
N0.3 5.85 4.82 5.66 4.63 5.59 4.44 5.43 4.42
架乾 6.26 4.94 6.05 5.00 5.8 4.54 5.54 4.17

表-5 昭和61年産種籾の育苗試験

区別 出芽 草文 葉数 第一
鞘高
(cm)
分けつ
(本/個体)
苗立率
(%)
良苗率
(%)
地上部
乾物重
(g/100本)

(月・日)
良否
整否
平均
(cm)
C.V
(%)
平均
(枚)
C.V
(%)




No.1 5.2 良.整 11.8 13.0 3.2 11.8 2.8 0 99 72 1.70
No.2 5.2 11.5 9.9 3.1 8.6 2.7 0 99 72 1.74
N0.3 5.2 12.6 11.5 3.3 9.5 2.7 0 99 67 1.86
架乾 5.2 12.1 11.0 3.2 7.8 2.8 0 99 68 1.80




No.1 5.2 良.整 11.4 9.9 3.3 8.6 2.7 0 99 78 1.76
No.2 5.2 12.3 12.7 3.5 9.0 2.6 0.1 99 76 1.95
N0.3 5.2 12.2 10.1 3.4 9.8 2.7 0 99 77 1.85
架乾 5.2 12.7 10.5 3.4 10.0 2.7 0 99 83 1.93
注)播種期62.4.24。調査日5月28日(34日苗)

11.成果の活用面と留意点(普及上の留意点)
 採種における種子用白脱型コンバイン収穣−人工乾燥体系の導入は、発芽・苗立・苗形質の面からみて特に問題はない。

12.残された問題点
 種子検査(発芽検査)の時期との関連から、収穫乾燥方法ならびに品種と休眠期間の関係についての詳細な検討が必要である。