【指導参考事項】
1.課題の分類  野菜 野菜 栽培−ハクサイ、キャベツ、ダイコン 作付体系
2.研究課題名  施設野菜の生産改善と安定に関する試験
          無加温ハウス利用による夏秋播冬どり栽培に関する試験
          (無加温ハウス利用による主要葉根菜の冬期生産技術試験)
3.予算区分  道 単
4.研究期間  昭和59〜61年
5.担  当  道南農試園芸科
6.協力・分担関係

7.目的
 無加温ハウスを利用し、主要な葉根菜の冬期生産技術を検討し、ハウスの高度利用ばかりでなく、冬期の自給率向上の一助とする。

8.試験研究万法
 1)試験区別
 (1)品種、は種期および栽植密度について
   a)キャベツ:品種(北ひかり、晩抽理想、他)×は種期(北ひ:8.1〜9.1、晩抽:7.15〜8.15)×栽植密度(3,333〜5,000株/10a)
   b)ハクサイ:品種(無双、玉杯、他)×は種期(8.9〜9.10)×栽植密度(3.333〜5,000株/10a)
   c)ダイコン:品種(天春、耐病総太)×は種期(8.27〜10.5)×栽植密度(8,333〜13,333株/10a)
 (2)保温方法について
   a)被覆資材の保温性調査(.10ビニール、.05サンリッチ、ホカホカマット、各トンネル、ラブシートベたがけ)
   b)作物の生育におよぽすラプシートベたがけ効果(べたがけ有・無)
 2)供試ハウス・その他
   5.5×37m、ピニール(.15)ハウス、ビニール展張時期:10月下旬、カーテン資材:サソホット(.05)(59年)、ホカホカマット(60,61年)、カーテン設置時期:11月下旬、ラブシートベたがけ時期:11月下旬(60,61年)

9.結果の概要・要約
 1.無加温ハウスを利用した主要葉根菜の夏秋播越冬栽培法について、キャベツ、ハクサイ、ダイコンの3作物を供試し、品種、は種期、栽植密度、および保温方法について検討を行った。
 2.は種期については、は種期が早い程生育量は大きかった。遅いは種期では、収穫期の腐敗の程度は早いは種期に比べ軽かったが、結球または根部の肥大が不十分となることが多かった。試験の結果、キャベツの"北ひかり"、で8.5前後、"晩抽理想"、で7.15前後、ハクサイで8.15前後ヘダイコソで8.29前後がは種適期と考えられた。
 3.栽植密度については、結球重または根重は、低密度で大きかったが、収量の点から、可能な限り密植が必要で、キャベツ、ハクサイで5,000株/10a、ダイコソで10,000株が適当と思われた。
 4.品種については、キャベツでは、食味の点から"北ひかり"が良いと考えられた。しかし"北ひかり"は凍害による腐敗が、2月以降ひどく収穫は1月末が限度で、それ以降は"晩抽理想"が適当と考えられた。ハクサイでは品種によらず2月以降、抽苔や芯高の増加、腐敗がひどくなり、1月末が収穫限度と考えられた。ダイコソでは、抽苔は"耐病総太り"で2月末に5㎝以下であるが抽苔が認められる場合があった。このため、2月末までの収穫では"耐病総太り"を用いることが可能で、それ以降の収穫では、"天春"などの晩抽系品種を用いる必要があると考えられた。
 5.保温方法については、被覆資材の保温性、ラプシートベたがけの効果について検討を行った。夜間の保温性はホカホカマットが最も良く、日較差も小さく、冬期間のカーテソ資材として適当と考えられた。ラブシートのべたがけについては、作物の生育に対する効果は判然としなかったが、夜間の保温性が高く、日較差も少なく、厳冬期の保温に効果があると考えられた。
  以上、無加温ハウスを利用して、1〜2月に緑葉の付いたキャベツ、ハクサイ、ダイコソを収穫することが可能である。

10.主要成果の具体的数字
  (1)-1 品種とは種期について
キャベツ 1月下旬 2月末ないし3月処
品種 年次 は種期 結球重 結球重  
北ひかり 59 8.1 1.30kg 1.24kg 外葉フハイ大
59 8.15 0.70 0.49
59 9.1 0.11 0.03  
60 8.10 1.24 1.50 外葉フハイ大
60 8.20 0.54 1.00  
晩抽理想 59 7.16 1.70 1.67  
59 8.1 1.01 1.22  
59 8.15 0.25 0.32  
60 7.15 1.61 2.10  
60 8.1 0.90 1.80  
ダイコン 1月30日 2月27日
品種 年次 は種期 根重 根重
耐病総太 60 9.1 0.89kg 1.29kg
60 9.10 0.49 0.70
天春 60 9.1 0.71 0.87
60 9.10 0.56 0.79
ハクサイ 1月下旬 2月下旬
品種 年次 は種期 結球重 結球重 芯高
玉杯 59 8.9 2.89kg フハイで
収穫不能
 
59 8.24 1.89  
59 9.10 不結球 不結球  
61 8.15 2.14 2.94kg フハ
イ大
cm
13.9
無双 61 8.15 2.34 2.36kg 16.9

 (1)-2 栽植密度について
キャベツ 1月30日
栽植密度 結球重
株/10a kg
4,000(50×50cm) 0.65
5,000(50×40cm) 0.54
(北ひかり、60.8.20は種)
ハクサイ 1月22日
栽植密度 結球重
株/10a kg
3,333(60×50cm) 2.10
5,000(50×40cm) 1.89
(玉杯、59.8.24は種)
ハクサイ 2月27日
栽植密度 結球重
株/10a kg
8,333(60×20cm) 1.03
10000(50×20cm) 0.70
(耐病総太、60.9.10は種)

 

(2)保温方法について


  半旬別最低気温の推移(61年)


  各種被覆内の気温の日変化

11.成果の活用面と留意点
 夏秋播冬どり栽培法(道南)(案)
項目 キャベツ ハクサイ ダイコン 共通
品種 北ひかり 晩抽理想 無双・玉砕 耐病総太り・天春 ハウスビニール展張
 10月25〜31日
カーテン(ホカホカマット)
設置 11月20〜25日
 ラブシートべたがけ
 11月20〜25日
は種期 北ひ:8.1〜10 晩抽:7.10〜20 8.10〜8.20 8.25〜9.5
定植期 北ひ:8.25〜9.5 晩抽:8.5〜15 9.5〜9.15
収穫期 北ひ:12〜1月末 晩抽:12〜3月 12月〜1月 耐病12月〜2月、天春12月〜3月
栽植密度 5,000株(50×40cm)/10a 5,000株(50×40cm)/10a 10,000株(50×20cm)/10a
・道南地方で、ラブシートベたがけ内の最低気温が−1℃以上の地域で適用可能と考えられる。
・育苗ハウスのような夏〜冬未利用の簡易ハウス等に導入できる。
・あらかじめ、露地栽培を行い、ハウスを移動して保温を行う方法も越冬栽培法として可能であろう。

12.残された問題点とその対応