【指導参考事項】
1.課題の分類  野菜 野菜 栽培 キュウリ セルリー 栽培一般
          北海道
2.研究課題名  施設野菜の生産改善と安定に関する試験
          温水利用による冬期野菜生産に関する試験
3.予算区分  道 単
4.研究期間  昭和59〜61年
5.担  当  道南農試園芸科
6.協力分担関係

7.目的
  石油エネルギーに代り安価に供給される地熱水、都市廃熱、あるいは太陽熱等のエネルギーを利用して、冬期間生鮮野菜を生産する基礎技術について、昭和54年から種々の検討を行い、先に「北海道における施設野菜の冬期栽培試験」(昭和59年指導参考)として数種野菜の冬期間の栽培法について報告した。本試験では、冬期栽培法の暖房方法として、温水暖房と温風暖房の比較を行うとともに、保温方法として一層カーテンと二層カーテンを比較し、保温条件と光条件の影響について検討を行った。

8.試験研究方法
 試験区別59.60年:暖房方法{温風ダクト、温水チューブ}×光・保温条件{1.2層カーテン(固定)}
 61年:暖房方法{温水チューブ}×光条件{2層カーテン固定・2層カーテン日中開閉}

  作物および栽培法
作物 キュウリ トマト レタス セルリー ダイコン
品種 王金女神2号
北極2号(60年のみ)
ときめき シャープリー
サクラメント
トップセラー
コーネル619
天春
耐病総太
は種期 59年 9月20日 9月20日 9月20日 9月20日 1月10日
60年 9月20日 9月5日 10月18日 9月10日 12月20日
61年 9月22日 9月20日
定植期 59年 10月30日 11月15日 11月12日 12月20日
60年 11月1日 11月1日 11月19日 12月19日
61年 11月1日 12月19日
栽植密度
(株/a)
139
(120×60cm)
278
(120×30cm)
500
(50×40cm)
500
(50×40cm)
667
(50×30cm)
施肥量
(N2,P2O5,K2O)
2,2,2kg/a 2,2,2kg/a 1.5,1.5,1.5kg/a 4,4,4kg/a 1,1,1kg/a
キュウリ:主枝25節摘芯+側枝2節摘芯、台木はクロダネカボチャ
トマト:5段摘芯、59年は振動授粉、60年はトマトトーン処理
温度条件:最低気温 13℃以上、最高気温 30℃以下を目標に加温、換気を行なった。
他に、現地(森町濁川)の地熱水利用ハウスで温度測定を行った。

9.結果の概要、要約
 冬期野菜栽培の暖房法として、温水暖房と温風暖房との比較およぴ保温法として、一層カーテンと二層カーテンとの比較を行った。
暖房方法について
 温水暖房では温風暖房に比べ
  1)日中気温は温水チューブからの余熱により高く推移する
  2)湿度は夜高く昼低いという、無加温ハウス栽培と同じような変化を示す
  3)加温中の温度変化が滑らかである。
  という特徴を示し、これらの差が作物の生育に影響し、トマト、キュウリでは温水暖房で良好な生育を示したと考えられた。
  以上から冬期栽培の暖房法としてトマト、キュウリでは、温水暖房は、温風暖房に比ぺ作物の生育に対し有利であると考えられる。
 保温方法について
  二層カーテンは一層カーテンに比ぺ保温性が高く、最低気温では、月平均で2℃前後、極値で5℃の温度差があり、厳冬期の温度確保に有効であると考えられた。しかし、光線透過率は二層カーテンで55%で一層カーテンの67%より12%低かった。作物の生育は前半は二層で、後半は一層で良好な場合が多かった。
  二層カーテンを日中開閉した場合、固定したままの場合に比ぺ、作物の生育は良好であり、光条件の影響と考えられた。
  従って、二層カーテンを用いる場合は、日中晴天時には光線を有効利用するために開閉を行った方が良いと考えられる。

10.主要成果の具体的数字


   温風区と温水区の気温変化(一層カーテン)


   温風区と温水区の温度変化(一層カーテン)


   カーテン区別による気温と地質の変化(温水区)


 温水と温風の気温変化の差


 外気温とカーテン内気温の相関
 (温水暖房加温時)

各作物の生育・収量(昭59年)
区別 キュウリ(王金女神2号 トマト(ときめき)
No. 暖房 カーテン 収穫始 株当り収量 収穫始 株当り収量
12〜1月 2〜3月 外品 統計 2.1〜3.10 〜3.31 〜4.22
1 温水 1層 月日
12.3

20

35

55

20

75
月日
2.25
g
199
g
809
g
814
g
1,822
g
66
2 2層 11.30 19 18 37 19 56 14 576 775 680 2,031 60
3 温風 1層 12.3 11 18 29 13 42 27 252 559 878 1,689 109
4 2層 12.2 12 17 29 17 46 25 307 440 587 1,334 125
区別 レタス(シャープリー) セルリー(トップセラー) ダイコン(天春)
1月8日 4月12日 4月4日
No. 暖房 カーテン 結球重
g
球数割合(%) 調整重
g
草丈
cm
葉柄長
cm
葉数
根重
g
根長
cm
根径
cm
T/R
正常 不整 抽苔 フハイ
1 温水 1層 274 50 20 10 20 1,590 72.7 28.2 21.5 1,024 41.6 5.7 0.77
2 2層 296 65 10 0 25 1,440 74.9 30.6 21.5 762 41.4 4.9 0.94
3 温風 1層 337 75 25 0 0 1,870 65.2 31.8 25.6 1,196 41.3 5.5 0.64
4 2層 367 60 25 0 15 1,870 76.8 33.0 24.4 918 41.5 5.2 0.86

セルリーの生育に及ぼすカーテン日中開閉の影響(61年)
区別 セルリー
1月12日
トップセラー コーネル619
カーテン 葉数 最大葉 葉数 最大葉
固定
10.7
cm
34.5
cm
18.2

11.6
cm
33.7
cm
18.7
開閉 13.2 45.6 23.9 13.2 37.4 20.3

11.成果の活用面と留意点
  大型ハウスで温水暖房を用いる場合、ハウスの周辺部や、温水取入口から遠い場所では、室温が低くなり易いので、ハウス内の温度差をできるだけ小さくするように、ハウス周辺部や温水取入口から遠い場所では、配管数を増す、などの対策が必要である。

12.残された問題点とその対応