【指導参考事項】
完了試駿研究成績(作成 63年 1月)
1.課題の分類  食 品 ハスカップ−加工、流通技術
          北海道
2.研究課題名  ハスカップの利用適性の解明
3.予算区分  補助
5.担当  中央農試園芸部流通加工科
4.研究期間  (昭和61年〜62年)
6.協力・分担関係  中央農試園芸部果樹科・化学部土壌肥料科

7.目  的
 転換畑におけるハスカップの利用適性を明らかにし、生産安定と品質の向上を図る。

8.試験研究方法
(1)熟期別成分変化 3期に分けて果実を採取  成分変化
(2)貯蔵試嚢    貯蔵温度 0℃、5℃、10℃
            容器 ポリエチレン、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)、発泡スチロール箱、無包装
(3)転換畑ハスカップの加工適性 転換畑およぴ普通畑ハスカップの成分分析

9.結果の概要・要約
(1)熟期と加工適性
 果実が熟するにつれ糖、色素含量が増加し、酸含量が減少する。熟した果実ほど加工適性が高い。
・直接還元糖熟度の進行とともに増加する
・アスコルビン酸熟度の進行とともに全体としては斬減するが、内容的には還元型が徐々
に酸化型に移行する
・滴定酸度熟度の進行とともに減少する
・アミノ態N熟度により変化が見られない
・果実pH熟度によりほとんど差がない
・屈折計示度熟度の進行とともに増加する
・全ペクチン熟度により変化が見られない
・A I S(アルコール不溶性固形物)熟度の進行に伴い減少する
(2)貯蔵試験
・貯蔵期間 貯蔵温度5℃〜10℃では身くずれ、腐敗がおこり、貯蔵期間は長くて2週間程度である。0℃では1ヵ月程度の貯蔵は可能であるが、40〜50日が限度である。
・貯蔵容器 ポリエチレン、2軸延伸ポリプロピレンは醸酵、身くずれがおこる。また無包装では水分が著しく減少する。発泡スチロール箱(蓋付)は多少の水分減少はあるが、外観・成分の変化が少なく、貯蔵容器としては適切である。
(3)転換畑果実の加工適性
 転換畑果実は普通畑果実に比ペアミノ態窒素、カルシウム含量が高かったが、全体として両者間で加工適性に差がない。

10.成果の具体的数字
 熟度と成分
熟度
(果実色)
色素
(OD 535nm)
直接還元
糖(%)
アスコルビン酸
(mg%)
滴定酸度(0.1N
NaOH mL/100mL)
アミノ態
N(mg%)
果汁
(pH)
屈折計
示度
全ペクチ
ン(%)
AIS
(%)
1.淡い 0.005 3.3 70.4 還元型 709.0 11.2 2.8 9.6 0.50 4.91
57.6
酸化型
12.8
2.やや淡い 0.187 5.0 68.5 50.4 658.0 11.2 2.9 10.2 0.48 4.17
18.1
3.濃い 0.586 5.9 64.0 43.9 658.0 11.2 2.9 10.2 0.48 4.17
20.1

 収穫直後分析結果
系統 色素
(OD 510nm)
直接還元糖
(%)
アスコルビン酸
(%)
滴定酸度(0.1N
NaOHmL/100mL)
アミノ態
N(mg%)
果汁
(pH)
屈折計
示度
9 0.924 5.3 83.6 還元64.4 646.0 10.6 2.95 11.4
酸化19.2

 貯蔵1カ月後分析結果  0℃  湿度65%
容器 重量減少
率(%)
色素
(OD 510nm)
アスコルビン酸
(%)
滴定酸度 (0.1N
NaOGHmL/100mL)
アミノ酸N
(mL/%)
果汁pH 直接還元
糖糖(%)
屈折計示度 その他
ポリエチレン 1.4 0.810 83.8 還元 9.0 549 10.1 3.01 4.9 10.1 酸酵臭水滴付着
で汁液侵出、身
くずれ
酸化 74.8
OPP 0.8 0.840 88.3 15.3 558 11.9 3.02 4.1 10.1 酸酵臭強水滴付
着で汁液侵出、
身くずれ
73.0
発砲箱 12.5 0.923 101.1 27.4 631 11.1 3.01 5.2 12.0  
73.7
無包装 22.4 0.210 113.7 25.2 757 13.8 3.00 6.0 13.7 水分蒸散でしな
88.5

 普通畑および転換畑の成分分析結果
  直接還元
糖(%)
屈折計示度 ペクチン
(%)
滴定酸度(0.1N
NaOGHmL/100mL)
果汁pH アミノ態
N(mg%)
アスコルビン
酸(mg/%)
普通畑HC-1 8.0 11.6 0.54 499 2.81 10.1 38.9
転換畑HC-1 8.7 11.4 0.58 481 2.90 26.6 35.8
  灰分
(%)
カルシウム
(mg%)

(mg%)
アルコール不溶
性固形物(%)
50粒重
(g)
   
普通畑HC-1 0.51 26.5 0.45 2.6 34.9    
転換畑HC-1 0.48 39.0 0.49 2.1 39.6    

11.成果の活用面と留意点
 過熟期の果実は成分的には優れているが、果肉が軟化しており、収穫・貯蔵時には身くずれをおこしやすいので取扱いに注意を要する。
 苦味は利用上好ましくないので、苦味のない果実を選ぶこと。

12.残された問題とその対応
 ハスカップは一般的に糖含量が低く、酸含量が高いため加工コストが高くなる。成分は系統間で、また栽培土壌条件でかなり変動すると思われるので今後、優良系統の還抜、育種およぴ栽培条件の改良等を通じて果実の糖含量を高めていく必要がある。