完了試験研究成績
【指導参考事項】
(作成 昭和63年1月)

1.課題の分類 総合農業 生産環境 土壌肥料 3-3-2
         北海道 土肥・環 合同・物理

2.研究課題名 泥炭草地の不等沈下の実態解析とその対策指針
          (泥炭草地の開発利用に関する試験:地盤変動に伴う草地利用性の経年変化)

3.予算区分 道単

4.研究期間 (昭和58〜62年)

5.担  当 天北農試 泥炭草地科

6.協力・分担関係 なし

7.試験目的
 泥炭草地の植生悪化の大きな要因と言われている不等沈下について、発生の実態と原因を明らかにし、不等沈下の発生防止および沈下発生部分の修復のための指針の設定により泥炭草地の生産性向上を図る。

8.試験研究方法
 1)不等沈下の数量的表現方法の検討および発生実態解明
 2)不等沈下の発生原因解明
 3)不等沈下と地下水位および土壌理化学性解明

9.結果の概要・要約
1)不等沈下の数量的表現方法の検討および発生実態解明
 ① 測量に基ずく草地の地形断面図で、凹部分を"滞水可能な範囲"という条件で仕切ることによって、不等沈下の規模を数量的に表現できた。
 ②泥炭草地の不等沈下の発生頻度は、100mの直線上に約11ケ所みられ、1ケ所の大きさは約5mであった、
2) 不等沈下の発生原因解明(表-1)
 ① 泥炭草地で発生のみられる不等沈下の主要な原因は、客十層厚の不斉一化、埋根の除去(抜根)、暗渠施工後の分解・収縮の3つが確認された。 (客土層厚の不斉:図-1)
 ②客土層厚の不斉一化による沈下は、客土層厚が25cm程度以上およぴ5cm程度以下で発生がみられ、沈下の原因は、25cm以上では荷重による沈下、5cm以下では泥炭の分解・圧密・収縮による沈下であった。また、客土層厚が5〜25cm程度の場合は客土層厚によるカサ上げがあった。
 ③抜根による沈下は、抜根地の土層容積が、当初粗であったものがその後の圧密と収縮で組織が密となり、沈下を招いた。
 ④ 暗渠施工上部での沈下は、排水による泥炭上の分解・収縮が主因であった。
 ⑤ 客土不斉一による不等沈下は高位泥炭と中間泥炭に多く、抜根による不等沈下は低位泥炭に多く発生する傾向にあった。
3)不等沈下と地下水位および上壌理化学性
 ① 不等沈下と地下水位との関係は、沈下量が大きくなった分だけ相対的に地下水位が高くなり、高くなる程度は早春(高水位時期)ほど大きくなる傾向であった。
4)以上の解析に基づき工事改良により防止するが、改善は次のとおり考えられる。
 ① 埋根除去による沈下は、排水可能な場所のみ圧密を行う。
 ② 客土因子については、作土層の容積重の均一化をはかる。

10.主要成果の具体的数字


図-1 客土層厚不斉によって発生した不当沈下部及びその周辺部分の土壌断面図

表-1 泥炭草地における不等沈下の発生原因別概要
      不等沈下発生原因
障害等の項目
客土層厚不斉一 抜 根 暗 渠
薄い場合
(5㎝以下)
厚い場合
(25㎝以上)
不等沈下の
発生要因
作土層の密度 粗〜ヤヤ粗 過密
心土層への荷重
作土層の
収 縮
(排水)
(厚密)
不等沈下の発生速度 △〜○
不等沈下
の発生量
種類比較 低位
中間
高位
対圃場面積比較 少〜中 中〜多
不等沈部の地下水位 極高(滞水) 高〜極高
植生悪化の 原 因 養分不足≧過湿 過湿 過湿 乾燥:N過剰
内 容
(優占する草種)
低級イネ科牧草
イグサ・イワノガリヤス
スゲ・ガマ・イグサ
ハリイ・ヌマガヤ
ヨシ・イグサ 広葉雑草
低級イネ科牧草
程 度
速 さ △又は◎
注) 記号は、各項目のもつ意味(概念)について強(◎)、中(○)、弱(△)および比較対象外(−)によって相対的比較をしてあてはめた。

11.成果の活用面と留意点
 1)埋根の多い低位泥炭地を草地開発する場合は、河川との比高差をとくに考慮する。比差が小さい場合は、抜根を行なわず排水強度を弱めて、沈下の緩和を図ること。
 2)客土層厚の不斉一による不等沈下の発生を防ぐため、客上搬入前に原地形の均平度の確認・修正を行い、仮堆積後は直ちに散布すること。

12.今後の問題点
 1)不等沈下発生防止指針の実証
 2)不等沈下の修復技術指針の実証