【指導参考事項】
完了試験研究成績(作成 昭和 年 月)
1.課題の分類  総合農業 生産環境 土壌肥料 2-1-2-a
          北海道
2.研究課題名  大豆有効根粒菌(A1017)の利活用(根粒の形成および発育規制要因の解明)
3.予算区分  受 託(国 費)
4.研究期間  (昭和60〜62)
5.担  当  道立十勝農試土壌肥料
6.協力・分担関係  グリーンエナシー計画Ⅱ-2系
            担当場所

7.目  的
 大豆有効根粒菌と土着根粒菌のN固定力・競合力の検討を行い,大豆生産性向上を目的とした有効根粒菌活用法についての指針を得る。

8.試験研究方法
 〔圃場での窒素固定量〕根粒非着生大豆系統を用いて,根粒の固定した窒素量を測定。
 〔土着菌の窒素固定力〕殺菌バームキュライトポット使用。土着菌を接腫。大豆(トヨスズ)を
生育させ,吸収した窒素量を土着菌の窒素固定力とする。
 〔有効菌の生存能力〕有効菌の土壌中での消長を蛍光抗体法,希釈平板法で追跡。
←←  〔菌株間の競合力〕ポット試験。土着菌とA1017の接種量比を変化。A1017株の着生率を抗体の凝集反応で測定。
 〔圃場での接腫効巣〕現地計19ケ所。接腫量1010-1012/株。A1017株使用。

9 結果の概要・要約
(1)平常年における大豆根粒菌のN固定量は土壌窒素供給の少ない圃場で18kg/10a,多い圃 場で10kg/10a程度であった。
(2)十勝管内の農家圃場で、根粒非着生大豆系統を用いて,土壌供給窒素・根粒固定窒素を広く調査した結果、土壌供給窒素が多くても根粒固定窒素がある程度のレベルに達している圃場がある反面,土壌供給窒素が少なくても根粒固定窒素が少ない圃場があるなど,土着根粒菌自体の窒素固定力も根粒固定窒素量に関与している可能性がある。
(3)土着菌を接種した大豆の生育量で,土着根粒窒素固定力を比較した。供試した十勝管内の土着菌の70%以上は,有効根粒菌A1017株より能力が低かった。
(4)接種した根粒菌は,土壌中で急激に減少した。大豆の根粒着生が起こる播種後2週間までに数%程度にまで,減少すると考えられた。
(5)土着根粒菌の根粒着生上の競合力は接種用有効根粒菌を上回っている場合が多く、接種根物菌の根粒着生率を50%以上に高めるためには、根圏域での密度を土着菌の5〜10倍にする必要があった。これからA1017株の場合、必要な接種密度は1株当り1010程度であると考えられた。1g当り1010の有効菌を保持する接種剤を用いる場合、10a当りの株数を約8,000本とすると、8kg/10aの接種剤を施肥することになる。
(6)実際の圃場条件で有効根粒菌の高密度接種を行ったところ、大豆生育の初期には50%以上の接種菌による根粒着生率が得られた。着生率は大豆の生育とともに低下したが、土着根粒菌の能力が低い場合は10%を超える子実収量増となった。
(7)接種菌の着生率が低い圃場は、礫質や泥炭で乾燥条件になり易い条件を有しているか、土着根粒菌の競合力が強い場合であった。

10.成果の具体的数字


図1 十勝管内の土着菌窒素固定力の実態


図2 接種菌数の土壌中での変化


接種菌密度比,1og(接種菌数/土着菌数)
図3 接種菌密度比とA1017着生率の関係


図4 土着根粒菌の競合力と接種菌着生率の関係


図5 圃場での接種菌着生率と子実収量(昭和62年)


図6 A1017着生割合と大豆N吸収量の増加率

11.成果の活用面と留意点
 ①本菌の接種は土壌栽培管理条件に問題がないに拘らず、大豆収量の低い土壌に適応する。
 ②砂礫質等、極端な乾燥条件に陥りやすい圃場では、接種効果が低い可能性がある。
 ③本試験はA1017株を用いて行っており、本菌より生存能力・競合力の強い菌を利用する場合、また、根粒菌の接種保持剤等を改良した場合は、接種量を減ずることができる。

12.残された問題とその対応
 ①土着根粒菌の窒素固定力,診断法の開発
 ②十勝地方の土壌により適合した有効菌の選抜